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5.襲撃
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檻が乗せられた馬車に詰め込まれる寸前、アイラは父親に最後の懇願をした。
「母に会わせてくれる約束はどうなったのですか?」
「あの男達を助けてやったではないか。帳消しだ」
アイラは唇を噛みしめた。
檻の中には既に捕らえられていた人々がいた。
入ってきたアイラに不安げな視線を向ける。
アイラは大丈夫だというように頷いた。
「大丈夫よ。私たちは助かるわ」
檻にいた人々はほっとしたように顔を見合わせた。
本当にギースは来てくれるのだろうかとアイラは心配だったが、彼らにその不安を見せるわけにはいかない。
しばらくして、アイラだけが前に呼ばれた。
道中のお楽しみが始まるのだと思い、アイラは憂鬱になったが、毅然と前を向いて迎えの男についていった。
先頭から二番目の馬車に押し込められると、その馬車内だけ豪華な内装になっていた。
柔らかな毛が織り込まれた絨毯が敷かれ、クッションがいくつも積まれている。
冷たい外気が入り込まないように分厚い革が内部の壁を覆っていた。
くつろいだ様子の人買いと父親は中央に向かい合って座り、酒盛りの最中だった。
御者席側に武装した兵士が背中を向けて立っている。
そこにも分厚いタペストリーがかけられ外部の様子は見えない。
「さっそくだ。楽しませてもらおう」
人買いの言葉にアイラは進み出て膝をつき頭を下げた。
「まずは純潔の確認からだな」
その言葉にアイラは縮み上がった。
野盗のギースに既に与えてしまっている。
さらに二度も交わったからにはもう血液の付着も望めない。
灯りを掲げ、人買いが言った。
「股を開いてよく中を見せろ」
絶体絶命であった。
アイラは震えながら服をゆっくり脱ぎ始めた。
「父親の前でというのも面白いな」
人買いの言葉にびくりと女は動きを止めた。
娘に手を出さない程度の良識はあるのだと思っていたが、果たしてそうなのか不安がよぎった。
父親が粘っこい目つきでアイラを見ながら口を開いた。
「いや、この女は俺の子ではない」
一瞬、何を言われているのかわからず、アイラは服を脱ごうとしていた手を止め首を傾けた。
「え?お父様ではない?……じゃああなたは誰……?」
幼い頃から父親だと信じてきた男の顔がただの悪人の物にかわる。
怒涛のように疑問が押し寄せる。
自分はどこからきたのか母親は誰の子を産んだのか。
「娘のように大事に育てたのだ。手は一切触れていないぞ。
証拠にこの娘の信じ切っていた目を見ろ。俺はこの時を待っていた。
父親だと思っていた男に裏切られ辱めを受ける女を見るのも一興ではないか?」
人買いは邪悪な笑い声を立てた。
「それは面白い。だが、最初は俺がもらうぞ。料金に含まれている」
「じゃ、じゃあお母様は?私の母は一体……」
人買いは動揺するアイラに構わず襲いかかった。
上から抑え込み、唇に吸い付くとドレスを引き裂きにかかる。
「い、いやっ!いやっ!どういうことなの?!教えてっ!教えてよ!お母様はどこにいるの!お父様は?」
顔を必死に背け、いやらしい薄い唇を逃れると必死に訴える。
アイラの悲鳴など男の力の前では何の役にも立たない。
純潔でないことがばれることを恐れていたが、それどころではなくなっていた。
人買いは暴れるアイラを押さえつけ、うつ伏せにすると狂暴な一物で秘芯を貫いた。
「いやああっ!」
アイラの悲鳴が夜の闇を引き裂いた。
何よりもそれを見ている父親だと思っていた男の目が恐ろしかった。
蛇のように音もなく忍び寄りついに首に噛みつく時がきたのだというように、その表情には残忍な喜びが満ちている。
父親と呼んできた人にこれから犯されるなど耐えられなかった。
人買いに深く貫かれながら、アイラは必死に暴れ悲鳴を上げ続けた。
岩道に入り、馬車が激しく揺れ、車輪が固い物を乗り越える音ががたがたと続く。
その音をかき消すほどの悲鳴を上げてアイラは暴れていた。
人買いに胎内を深く抉られ、アイラは苦痛に体をひねった。
「暴れるな!」
大きく揺れる馬車の中で人買いも上体を低くし、下半身をこすりつける。
父親と呼んできた男がアイラの両手を押さえつけた。
「酷い。酷いわ……」
父親と思ってきた男が、娘が犯されるのを手助けしているなどあまりにも酷い状況だった。
さらにまだ父親ではなかったという事実に心が追い付いていないのだ。
「お父様となんていやぁぁぁっ」
絶望にのたうち暴れるアイラの体が大きく飛んだ。
馬車が傾いたのだ。
浮き上がった体が床に叩きつけられ一瞬息が止まり、アイラの悲鳴が止む。
音が消え、男たちはやっと外の気配に気が付いた。
小さく聞こえる無数の声に車輪がどこかにはまったのかと男達は思った。
「何事だ」
人買いが上体を起こすと同時に、内装を厚くした革張りの馬車内にも獣の咆哮が届いた。
いつの間にか見張りの兵士の姿が消えている。
遠くから悲鳴が聞こえ、地面を震わす馬蹄の音が聞こえてきた。
しかもそれはすぐそばまで迫っている。
金属を打ち鳴らす音で、ようやく外で戦闘が始まっているのだと気がついた。
人買いが幌の入り口を開ける。
僅かな視界しかきかない月明かりの下、大勢の男達が声もなく怒涛の勢いで戦っていた。
国の正規の軍勢ではないのはすぐにわかった。
揃いの隊服ではなかったのだ。
さらに国境を抜ける知る人ぞ知る抜け道で、険しい山中であった。
大きく傾いた馬車が横倒しになり、人々の悲鳴が上がった。
何が起きているのか、その光景を目にしただけでは何もわからない。
人買いが兵たちに怒鳴り始め、父親であった男は逃げようとあたふたしている。
アイラは隙をついて外に飛び出した。
檻が積んである馬車に走ったのだ。
落ちた松明の灯りを拾い上げ辺りを照らす。
馬車の傍で倒れている兵士の腰から鍵束が覗いているのを見つけると拾い上げて檻にかけよった。
乗っていた人々がアイラを見つけて扉に飛びついてきた。
いくつか鍵を試し、鍵穴にしっかり刺さる一本を見つけると錠を外し扉を開けた。
我先にと人々が牢から飛び出し逃げていく。
次の檻に向かおうとして、アイラはぬかるんだ水たまりに足を取られた。
「こっちにこい!」
野太い声がし、転びかけたアイラの体を誰かが引っ張り上げた。
灯りを掲げ、浮かび上がった顔を目にするとアイラは安堵の表情を浮かべた。
「ギース!」
約束を守って来てくれたのだ。
目の前で刃が打ち鳴らされ、さらに襲ってきた剣をギースは跳ね飛ばし、返す刃で相手の首を切り裂いた。
吹き上がる血に腰が抜けそうになりながらも、アイラは叫んだ。
「檻を、檻を開けてあげないと!」
ギースはアイラが握りしめている鍵束に目をやり、やっと腕を離した。
「急げ」
アイラを守りながら檻を全部開けるまで付き合い、ギースはその体を担ぎ上げた。
「ギース、国王軍の騎士が二人訪ねてきたの。ここにも来るかもしれない」
肩に担ぎ上げられながらアイラが叫び、ギースは激しく舌打ちした。
「引き上げだ!金目の物を奪えるだけ奪え!」
「おろして!待っているから。逃げていかないから。とどめを刺す気でしょう?出来るだけ殺さないで。縛り上げれば国の役人が捕まえるわ」
ギースは部下にそんな危ないことはさせられないとアイラを下し、自ら動き始めた。
馬よりも巨大な竜の死骸を見つけると、アイラは目を見張り、手で口を覆い悲鳴を堪えた。
無数の剣が突き刺さり、大量の流れ出た体液が地面をぬかるんだものに変えている。
人買いや父と呼んだ男の姿は見えない。
暗闇の中で男たちの怒号が飛び交い、その中を突き抜けるようなギースの鋭い声が指示を飛ばしていた。
騒ぎは徐々に収まり、ギースが戻って来ると、言葉通り大人しく待っていたアイラを抱き上げた。
自分で歩けると言いかけ、アイラは腰が立たないことにやっと気が付いた。
岩山を獣のように走り出した野盗の男たちはあっという間にその血なまぐさい戦場を後にする。
アイラはギースの首に抱き着いたまま叫んだ。
「お願い、屋敷に戻してちょうだい。お母様が、お母様がまだ囚われているかもしれない」
ギースは無言で男たちの中から離脱し別の道を取った。
「騎士はどうした」
「地下牢に息がある状態で閉じ込めてきたの。だから、生きているはず。私たちを捕まえることは出来ないわ」
「今のところは、といったところだな」
ギースは闇の中を駆け抜けながらその危険性を考えた。
いざとなればアイラを人質に切り抜けるしかない。
ギースは屋敷に到着すると、辺りを警戒しながら裏口に回った。
藪から老婆のマイラが現れた。
「マイラ!お母様がどこにいるか知っている?迎えに来たの」
マイラは案内をすると言って先頭に立って歩きだした。
アイラが続き、鋭い目で辺りを窺いながらギースもついていく。
抜け穴から地下牢に続く細い通路に入るとギースは抜刀し、さらに慎重に進んだ。
やがて明かりが灯されたままの地下牢内に到着した。
驚いたことにそこに閉じ込められていたはずのドイルも、吊るされていたゼインもその姿を消していた。
「国王軍が入ったのかもしれない。急ごう」
ギースが警告した。
先頭を歩いていたマイラが奥の牢の前で足を止めた。
「ここなの?ここにお母様がいるの?!」
マイラの前に飛び出したアイラは牢の中を覗き込んだ。
「ひっ」
その目に飛び込んできたのは無残に打ち捨てられ、完全に白骨化した死体だった。
「母に会わせてくれる約束はどうなったのですか?」
「あの男達を助けてやったではないか。帳消しだ」
アイラは唇を噛みしめた。
檻の中には既に捕らえられていた人々がいた。
入ってきたアイラに不安げな視線を向ける。
アイラは大丈夫だというように頷いた。
「大丈夫よ。私たちは助かるわ」
檻にいた人々はほっとしたように顔を見合わせた。
本当にギースは来てくれるのだろうかとアイラは心配だったが、彼らにその不安を見せるわけにはいかない。
しばらくして、アイラだけが前に呼ばれた。
道中のお楽しみが始まるのだと思い、アイラは憂鬱になったが、毅然と前を向いて迎えの男についていった。
先頭から二番目の馬車に押し込められると、その馬車内だけ豪華な内装になっていた。
柔らかな毛が織り込まれた絨毯が敷かれ、クッションがいくつも積まれている。
冷たい外気が入り込まないように分厚い革が内部の壁を覆っていた。
くつろいだ様子の人買いと父親は中央に向かい合って座り、酒盛りの最中だった。
御者席側に武装した兵士が背中を向けて立っている。
そこにも分厚いタペストリーがかけられ外部の様子は見えない。
「さっそくだ。楽しませてもらおう」
人買いの言葉にアイラは進み出て膝をつき頭を下げた。
「まずは純潔の確認からだな」
その言葉にアイラは縮み上がった。
野盗のギースに既に与えてしまっている。
さらに二度も交わったからにはもう血液の付着も望めない。
灯りを掲げ、人買いが言った。
「股を開いてよく中を見せろ」
絶体絶命であった。
アイラは震えながら服をゆっくり脱ぎ始めた。
「父親の前でというのも面白いな」
人買いの言葉にびくりと女は動きを止めた。
娘に手を出さない程度の良識はあるのだと思っていたが、果たしてそうなのか不安がよぎった。
父親が粘っこい目つきでアイラを見ながら口を開いた。
「いや、この女は俺の子ではない」
一瞬、何を言われているのかわからず、アイラは服を脱ごうとしていた手を止め首を傾けた。
「え?お父様ではない?……じゃああなたは誰……?」
幼い頃から父親だと信じてきた男の顔がただの悪人の物にかわる。
怒涛のように疑問が押し寄せる。
自分はどこからきたのか母親は誰の子を産んだのか。
「娘のように大事に育てたのだ。手は一切触れていないぞ。
証拠にこの娘の信じ切っていた目を見ろ。俺はこの時を待っていた。
父親だと思っていた男に裏切られ辱めを受ける女を見るのも一興ではないか?」
人買いは邪悪な笑い声を立てた。
「それは面白い。だが、最初は俺がもらうぞ。料金に含まれている」
「じゃ、じゃあお母様は?私の母は一体……」
人買いは動揺するアイラに構わず襲いかかった。
上から抑え込み、唇に吸い付くとドレスを引き裂きにかかる。
「い、いやっ!いやっ!どういうことなの?!教えてっ!教えてよ!お母様はどこにいるの!お父様は?」
顔を必死に背け、いやらしい薄い唇を逃れると必死に訴える。
アイラの悲鳴など男の力の前では何の役にも立たない。
純潔でないことがばれることを恐れていたが、それどころではなくなっていた。
人買いは暴れるアイラを押さえつけ、うつ伏せにすると狂暴な一物で秘芯を貫いた。
「いやああっ!」
アイラの悲鳴が夜の闇を引き裂いた。
何よりもそれを見ている父親だと思っていた男の目が恐ろしかった。
蛇のように音もなく忍び寄りついに首に噛みつく時がきたのだというように、その表情には残忍な喜びが満ちている。
父親と呼んできた人にこれから犯されるなど耐えられなかった。
人買いに深く貫かれながら、アイラは必死に暴れ悲鳴を上げ続けた。
岩道に入り、馬車が激しく揺れ、車輪が固い物を乗り越える音ががたがたと続く。
その音をかき消すほどの悲鳴を上げてアイラは暴れていた。
人買いに胎内を深く抉られ、アイラは苦痛に体をひねった。
「暴れるな!」
大きく揺れる馬車の中で人買いも上体を低くし、下半身をこすりつける。
父親と呼んできた男がアイラの両手を押さえつけた。
「酷い。酷いわ……」
父親と思ってきた男が、娘が犯されるのを手助けしているなどあまりにも酷い状況だった。
さらにまだ父親ではなかったという事実に心が追い付いていないのだ。
「お父様となんていやぁぁぁっ」
絶望にのたうち暴れるアイラの体が大きく飛んだ。
馬車が傾いたのだ。
浮き上がった体が床に叩きつけられ一瞬息が止まり、アイラの悲鳴が止む。
音が消え、男たちはやっと外の気配に気が付いた。
小さく聞こえる無数の声に車輪がどこかにはまったのかと男達は思った。
「何事だ」
人買いが上体を起こすと同時に、内装を厚くした革張りの馬車内にも獣の咆哮が届いた。
いつの間にか見張りの兵士の姿が消えている。
遠くから悲鳴が聞こえ、地面を震わす馬蹄の音が聞こえてきた。
しかもそれはすぐそばまで迫っている。
金属を打ち鳴らす音で、ようやく外で戦闘が始まっているのだと気がついた。
人買いが幌の入り口を開ける。
僅かな視界しかきかない月明かりの下、大勢の男達が声もなく怒涛の勢いで戦っていた。
国の正規の軍勢ではないのはすぐにわかった。
揃いの隊服ではなかったのだ。
さらに国境を抜ける知る人ぞ知る抜け道で、険しい山中であった。
大きく傾いた馬車が横倒しになり、人々の悲鳴が上がった。
何が起きているのか、その光景を目にしただけでは何もわからない。
人買いが兵たちに怒鳴り始め、父親であった男は逃げようとあたふたしている。
アイラは隙をついて外に飛び出した。
檻が積んである馬車に走ったのだ。
落ちた松明の灯りを拾い上げ辺りを照らす。
馬車の傍で倒れている兵士の腰から鍵束が覗いているのを見つけると拾い上げて檻にかけよった。
乗っていた人々がアイラを見つけて扉に飛びついてきた。
いくつか鍵を試し、鍵穴にしっかり刺さる一本を見つけると錠を外し扉を開けた。
我先にと人々が牢から飛び出し逃げていく。
次の檻に向かおうとして、アイラはぬかるんだ水たまりに足を取られた。
「こっちにこい!」
野太い声がし、転びかけたアイラの体を誰かが引っ張り上げた。
灯りを掲げ、浮かび上がった顔を目にするとアイラは安堵の表情を浮かべた。
「ギース!」
約束を守って来てくれたのだ。
目の前で刃が打ち鳴らされ、さらに襲ってきた剣をギースは跳ね飛ばし、返す刃で相手の首を切り裂いた。
吹き上がる血に腰が抜けそうになりながらも、アイラは叫んだ。
「檻を、檻を開けてあげないと!」
ギースはアイラが握りしめている鍵束に目をやり、やっと腕を離した。
「急げ」
アイラを守りながら檻を全部開けるまで付き合い、ギースはその体を担ぎ上げた。
「ギース、国王軍の騎士が二人訪ねてきたの。ここにも来るかもしれない」
肩に担ぎ上げられながらアイラが叫び、ギースは激しく舌打ちした。
「引き上げだ!金目の物を奪えるだけ奪え!」
「おろして!待っているから。逃げていかないから。とどめを刺す気でしょう?出来るだけ殺さないで。縛り上げれば国の役人が捕まえるわ」
ギースは部下にそんな危ないことはさせられないとアイラを下し、自ら動き始めた。
馬よりも巨大な竜の死骸を見つけると、アイラは目を見張り、手で口を覆い悲鳴を堪えた。
無数の剣が突き刺さり、大量の流れ出た体液が地面をぬかるんだものに変えている。
人買いや父と呼んだ男の姿は見えない。
暗闇の中で男たちの怒号が飛び交い、その中を突き抜けるようなギースの鋭い声が指示を飛ばしていた。
騒ぎは徐々に収まり、ギースが戻って来ると、言葉通り大人しく待っていたアイラを抱き上げた。
自分で歩けると言いかけ、アイラは腰が立たないことにやっと気が付いた。
岩山を獣のように走り出した野盗の男たちはあっという間にその血なまぐさい戦場を後にする。
アイラはギースの首に抱き着いたまま叫んだ。
「お願い、屋敷に戻してちょうだい。お母様が、お母様がまだ囚われているかもしれない」
ギースは無言で男たちの中から離脱し別の道を取った。
「騎士はどうした」
「地下牢に息がある状態で閉じ込めてきたの。だから、生きているはず。私たちを捕まえることは出来ないわ」
「今のところは、といったところだな」
ギースは闇の中を駆け抜けながらその危険性を考えた。
いざとなればアイラを人質に切り抜けるしかない。
ギースは屋敷に到着すると、辺りを警戒しながら裏口に回った。
藪から老婆のマイラが現れた。
「マイラ!お母様がどこにいるか知っている?迎えに来たの」
マイラは案内をすると言って先頭に立って歩きだした。
アイラが続き、鋭い目で辺りを窺いながらギースもついていく。
抜け穴から地下牢に続く細い通路に入るとギースは抜刀し、さらに慎重に進んだ。
やがて明かりが灯されたままの地下牢内に到着した。
驚いたことにそこに閉じ込められていたはずのドイルも、吊るされていたゼインもその姿を消していた。
「国王軍が入ったのかもしれない。急ごう」
ギースが警告した。
先頭を歩いていたマイラが奥の牢の前で足を止めた。
「ここなの?ここにお母様がいるの?!」
マイラの前に飛び出したアイラは牢の中を覗き込んだ。
「ひっ」
その目に飛び込んできたのは無残に打ち捨てられ、完全に白骨化した死体だった。
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