ダリア・ギヴァルシュ・サルバドゥールイゴーヴァ

紅林

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祝福に包まれた婚姻

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ダリアは結婚式を挙式する教会で初めて夫となるグレブに会った。彼女は彼のあまりの美しさに目を奪われた。そして心からこう思った

「やっぱり、わたくしの判断は間違っていなかったわ!お父様を説得できてよかった」

式を終えた後はグレブと共に馬車に乗り、サルバドゥールイゴーヴァ家が居を構えるホールシュテイン地方へと向かった。
その道中グレブと言葉を交わしたダリアは益々彼に心を奪われた。その美しい容姿もさることながら彼は女性が好きそうな宝石の話やドレスの話題、そこに度々ジョークを混ぜたりして話すのだ。女性のことを軽んじる男性も多い中、ここまで妻に気を使ってくれる男性は珍しく、グレブは紳士的であった

「旦那様は本当に素敵な方ですわね」

ダリアが口にする率直な褒め言葉を聞くと彼は顔を赤らめた。そんな所もダリアは美しいと思ってしまった。完全にグレブの虜となってしまったのだ。それはグレブも同じで、聡明で美しいダリアの虜になった

その後の二人の関係は良好でありグレブが収めるホールシュテイン地方の状況も非常に安定していた。ダリアはは結婚直後に一人目の子供をその身に宿し長男のセオドアが産まれた。セオドアは非常に活発な男の子で庭を駆け回って元気に遊ぶような子供だった。これで跡継ぎの心配はないと家臣たちからも言われて、グレブは次子は可愛いダリア似の女の子が欲しいと考えていたが待望の二人目の子供はニコラスと名付けられた男の子だった。しかし彼は多少の落胆はあれど愛するダリアとの間に出来た二人目の子供の誕生を喜び、セオドアとニコラスのことを深く愛し育てた

しかしそんな時にグレブに不幸な出来事が起こってしまう

「旦那様は!?旦那様はご無事なの!?」

ダリアが医者の肩を掴んで激しく揺らす
しかし医者から発せられた言葉はダリアとセオドア、そしてニコラスを絶望に落とすものだった。

「残念ながら最早助かりません」

グレブは趣味の狩りを楽しんでいる時に不意に落馬をしてしまい打ち所が悪く、そのまま命を落としてしまったのだ。彼女は絶望した。彼と結婚してから5年、ダリアは心からグレブを愛していた。グレブもダリアのことを心から愛していたし、大切にしていた。それほどの深い愛がたった5年で終わってしまった

「神よ、何故なのです。何故わたくしから一番大切な人を奪うのです。まだセオドアもニコラスもこんなに小さいのに」

彼女は邸宅の庭でセオドアとニコラスのことを両腕で包んで泣き崩れた。セオドアとニコラスはまだ「死」というものがよく分かっていないのか「父上はいつ帰ってきますか?」とまだつたない言葉遣いで何度も尋ねていた。

愛する息子2人の呼び掛けにも応えずにダリアは泣き続けた。彼女が泣きやみ邸宅に入ったのは日も沈みきった頃だったと言われている


グレブが亡くなった当日にたまたまサルバドゥールイゴーヴァ家の庭整備で邸宅を訪れていた庭師のエッカルト・ノーブル氏に取材をした記録が今もエイアール新聞の資料室に保管されている

「あの時のことは今も忘れないです。普段は俺たちに話しかけもしないような澄ました人が、使用人や他の人がいる前で子供と一緒に号泣し始めたんですぜ。あれは本当に驚いた」

記者は事件のことをどう思うか問う

「あぁあの事件ね。酷い事件だと思いますよ。え?まぁあの時は死んだ母が腰を痛めて仕事を辞めるしかなかったんですよ。偶然ですが母に助けられました」

記者はこの後「本当に良かったですね」とエッカルトに声をかけたという
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