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第1話:無能王子の追放と、甘美なる魔力の目覚め
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「――アルス・レイガード。貴様を本日付で王族から除名し、国外追放に処す」
冷徹な声が、豪奢な謁見の間に響き渡った。
玉座に座る父、国王の目はゴミを見るかのように冷たい。その傍らでは、次期国王と目される兄王子が勝ち誇ったような薄笑いを浮かべていた。
「魔力量は測定不能のゼロ。適性属性もなし。我が王家の血を汚す無能など、この国には不要なのだよ」
アルスは膝をついたまま、拳を握りしめた。
測定不能だったのは、既存の魔導具では測りきれないほど魔力が膨大だったからだ。だが、それを説明する機会さえ与えられない。
視線を向けると、かつての婚約者である聖女・クラリスが、軽蔑の眼差しを向けてきた。
「……見損ないましたわ、アルス様。力のない殿方に、私が仕える価値などありません」
その言葉が、アルスの心の中で何かが弾ける音をさせた。
悲しみではない。どろりとした、熱い「何か」が腹の底で渦巻き始めたのだ。
「……そうですか。ならば、勝手にすればいい」
「フン、負け惜しみを。……おい、連れて行け! 転送魔法で『絶望の森』へ放り込め!」
儀仗兵たちに両脇を抱えられ、アルスは強引に魔法陣の上へと立たされた。
光が溢れ、視界が白く染まる直前。アルスは確かに見た。
自分を嘲笑う兄と、冷たく背を向ける聖女の姿を。
(……いつか、後悔させてやる。そのプライドも、身体も、全部めちゃくちゃにしてな……)
----
転送された先は、陽の光さえ届かない原生林だった。
着の身着の着のまま放り出されたアルスの前に、巨大な牙を持つ魔獣・ブラッドウルフが姿を現す。
「グルルッ……」
死の予感が脳を焼く。その瞬間だった。
アルスの体内で、今まで抑え込まれていた膨大な魔力が、ついに「形」を成して溢れ出した。
それは、通常の魔法のような無機質なエネルギーではない。
どこか甘く、とろけるような熱を帯びた、桃色の魔力。
『――源流魔術、起動。深淵なる“極上”の深淵へようこそ』
頭の中に、甘美な女の声が響く。
アルスは吸い寄せられるように、迫りくる魔獣に向けて右手をかざした。
「……消えろ。それか、溶けろ」
指先から放たれたのは、一筋の閃光。
だが、それは魔獣を焼き切るのではなく、包み込み、ドロドロの液体へと変えてしまった。抵抗する間もなく、狂暴な獣が愛玩動物のように床に伏し、甘い声を漏らして消滅していく。
「これが……俺の力か」
自分の身体から溢れる魔力を自覚したその時。
背後で、硬質な金属の音が鳴った。
「……生きていたか、無能王子」
振り返れば、そこには白銀の鎧に身を包んだ女騎士・カトリーヌが立っていた。
王家最強の剣と謳われる彼女は、兄王子の命を受け、アルスの首を確実に狩るために追ってきたのだ。
「貴方の死をもって、この件は終わりにしましょう。……安心なさい、苦しませはしないわ」
凛とした美貌に、慈悲のない瞳。
だが、今のアルスには分かる。彼女の鎧の下で波打つ、瑞々しい魔力の流れが。
「苦しませない……か。なら俺も、お返しに最高に『気持ちいい』のを教えてやるよ」
アルスは不敵に微笑み、極上の熱を帯びた手を、カトリーヌへと向けた。
冷徹な声が、豪奢な謁見の間に響き渡った。
玉座に座る父、国王の目はゴミを見るかのように冷たい。その傍らでは、次期国王と目される兄王子が勝ち誇ったような薄笑いを浮かべていた。
「魔力量は測定不能のゼロ。適性属性もなし。我が王家の血を汚す無能など、この国には不要なのだよ」
アルスは膝をついたまま、拳を握りしめた。
測定不能だったのは、既存の魔導具では測りきれないほど魔力が膨大だったからだ。だが、それを説明する機会さえ与えられない。
視線を向けると、かつての婚約者である聖女・クラリスが、軽蔑の眼差しを向けてきた。
「……見損ないましたわ、アルス様。力のない殿方に、私が仕える価値などありません」
その言葉が、アルスの心の中で何かが弾ける音をさせた。
悲しみではない。どろりとした、熱い「何か」が腹の底で渦巻き始めたのだ。
「……そうですか。ならば、勝手にすればいい」
「フン、負け惜しみを。……おい、連れて行け! 転送魔法で『絶望の森』へ放り込め!」
儀仗兵たちに両脇を抱えられ、アルスは強引に魔法陣の上へと立たされた。
光が溢れ、視界が白く染まる直前。アルスは確かに見た。
自分を嘲笑う兄と、冷たく背を向ける聖女の姿を。
(……いつか、後悔させてやる。そのプライドも、身体も、全部めちゃくちゃにしてな……)
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転送された先は、陽の光さえ届かない原生林だった。
着の身着の着のまま放り出されたアルスの前に、巨大な牙を持つ魔獣・ブラッドウルフが姿を現す。
「グルルッ……」
死の予感が脳を焼く。その瞬間だった。
アルスの体内で、今まで抑え込まれていた膨大な魔力が、ついに「形」を成して溢れ出した。
それは、通常の魔法のような無機質なエネルギーではない。
どこか甘く、とろけるような熱を帯びた、桃色の魔力。
『――源流魔術、起動。深淵なる“極上”の深淵へようこそ』
頭の中に、甘美な女の声が響く。
アルスは吸い寄せられるように、迫りくる魔獣に向けて右手をかざした。
「……消えろ。それか、溶けろ」
指先から放たれたのは、一筋の閃光。
だが、それは魔獣を焼き切るのではなく、包み込み、ドロドロの液体へと変えてしまった。抵抗する間もなく、狂暴な獣が愛玩動物のように床に伏し、甘い声を漏らして消滅していく。
「これが……俺の力か」
自分の身体から溢れる魔力を自覚したその時。
背後で、硬質な金属の音が鳴った。
「……生きていたか、無能王子」
振り返れば、そこには白銀の鎧に身を包んだ女騎士・カトリーヌが立っていた。
王家最強の剣と謳われる彼女は、兄王子の命を受け、アルスの首を確実に狩るために追ってきたのだ。
「貴方の死をもって、この件は終わりにしましょう。……安心なさい、苦しませはしないわ」
凛とした美貌に、慈悲のない瞳。
だが、今のアルスには分かる。彼女の鎧の下で波打つ、瑞々しい魔力の流れが。
「苦しませない……か。なら俺も、お返しに最高に『気持ちいい』のを教えてやるよ」
アルスは不敵に微笑み、極上の熱を帯びた手を、カトリーヌへと向けた。
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