蜜の壺

小林ユキ

文字の大きさ
6 / 9

6.週一回の共犯――姉の寝室、弟の聖域

しおりを挟む
 翌日の深夜。
 昨夜の裕介との再会の余韻がどうしても引かず、絵里奈は自室で一人、熱っぽく指を動かしていた。
(裕介君……あんな手で、触られたら……っ)
 昨日の爽やかなレッスンからは想像もつかないほど淫らな想像に浸り、枕に顔を埋めて喘いでいた、その時だった。

「……姉さん」

 暗闇の中で響いた、低く湿った声。
「ひっ……!」
 心臓が止まるかと思った。飛び起きると、そこにはドアを僅かに開けて立ち尽くす、弟の姿があった。
 月明かりに照らされた弟の視線は、乱れたパジャマから零れ落ちそうな、絵里奈の豊かなFカップに釘付けになっている。

「あ……ごめん、見ちゃった。……でも、姉さんもやっぱり、我慢できないんだね」

「ち、違うの、これは……」

 言い訳を口にする前に、弟は室内へ踏み込み、音を立てずにドアを閉めた。
 その股間は、昨夜の浴室での情事と同様、あるいはそれ以上に猛々しく膨らんでいる。弟は絵里奈の枕元に跪き、無言で自らの熱を解放した。

「……ねえ、また助けてよ。昨日から、頭から離れないんだ」

「だめよ……結も、奥さんもいるのに……っ」

 拒絶の言葉とは裏腹に、絵里奈の身体は昨夜から続く情欲に火をつけられ、熱く疼きだす。
 結局、彼女は流されるように弟の前に跪いた。
 慣れ親しんだ、けれど昨夜よりもさらに熱を帯びた男根を、自慢の胸の谷間に挟み込む。

「んっ……、んうぅ……っ」

 肉と肉が擦れ合う卑猥な音が、静まり返った実家の一室に微かに響く。
 脳内にはまだ裕介の残像があるのに、手の中に、そして胸の間に感じるのは、血を分けた弟の抗いようのない熱量だ。

(私……何をやってるの……)

 自分への嫌悪感が、かえって絵里奈の感度を狂わせていく。
 弟の昂ぶりが限界に達し、激しい吐息とともに放たれた白濁液が、彼女の胸元に、そして昨夜必死に隠していた手のひらに、熱く、重く降り注いだ。

 汚れたままの胸を見つめ、絵里奈は絶望的なまでの背徳感の中で、逃げ場のない快楽に震えるしかなかった。

 ----

 月に一度、裕介の仕事の合間を縫って設定されるベースレッスン。
 今日で三回目となるその訪問は、もはや緊張に震えるようなものではなくなっていた。

「お邪魔します。裕介君、今日もよろしくね」
「ああ。結ちゃん、先月教えたフレーズ、練習してきたかな?」

 慣れた手つきでコーヒーを淹れる裕介と、目を輝かせて楽器を手にする結。
 高層階の窓から差し込む陽光は、絵里奈たちが暮らす古びた実家の薄暗さとは対照的で、ここに来るたびに彼女は自分が「別の人生」に迷い込んだような錯覚を覚える。

 レッスン中、裕介が結の指を修正するために背後に回る。
 その時、ふと裕介の視線がソファに座る絵里奈と重なった。
 かつての恋人同士にしか分からない、無言の熱。
 絵里奈は慌てて視線を外すが、胸の奥はすでに激しく波打っていた。

(三回も来れば、慣れると思ったのに……。裕介君に会うと、どうしても思い出してしまう)

 弟との泥沼のような背徳感にまみれた実家の夜。
 それに対し、この洗練された空間で、成功したかつての恋人に優しく迎え入れられる昼下がり。
 結が夢中でベースを弾く音を聴きながら、絵里奈は自分の中の「母親」としての義務感と、「女」としての渇きが、少しずつ形を変えて混ざり合っていくのを感じていた。

「姉さん」ではなく「絵里奈」と呼ぶ彼の声が、今の彼女にとっては、どんな音楽よりも甘美で、残酷な誘惑として響き始めていた。

 ----

 実家での深夜の密事は、もはや不可抗力なアクシデントではなく、一週間に一度は繰り返される「歪な儀式」へと変わっていた。

「……姉さん、今日もいいよね」

 弟のその言葉は、もはや問いかけではなく、確信に満ちた催促だった。
 絵里奈もまた、表向きは困惑した表情を見せながらも、彼を受け入れるための準備を身体が勝手に始めてしまう。弟の漲る熱を口内に含み、あるいは豊かなFカップの間に挟み込んで、石鹸の泡が立てる卑猥な音とともにその欲望を絞り出す。

 この間などは、さらに常軌を逸していた。
 絵里奈が自室で独り、裕介の面影を追いながらオナニーに耽っている最中、弟が当然のように部屋へ入ってきたのだ。彼は止めるどころか、姉が恥辱に震えながら自らを慰める姿を特等席で眺め、自らも男根を激しくしごき始めた。

「……っ、ん、あああ……っ!」

 二人の絶頂が重なった瞬間、弟から放たれた熱い白濁液が、絵里奈の顔面を無残に汚した。
 自分の指で達した快楽の余韻と、弟から浴びせられた精液の熱。
 鏡に映るその姿は、かつて裕介に愛されていた頃の自分とは、あまりにかけ離れた「淫乱な女」そのものだった。

 昼間は結の良き母親として、そして裕介の前では淑やかな元恋人として振る舞う。
 だが、その仮面の下にある肉体は、週に一度、実家の屋根の下で弟の欲望を飲み込むたびに、より深く、逃げ場のない泥濘(ぬかるみ)へと沈み込んでいく。

「……私、もう元には戻れない……」

 汚れを拭い去った後、静まり返った部屋で一人呟く。
 その罪悪感さえ、次の「儀式」をより甘美に、そして刺激的にするためのスパイスでしかないことを、絵里奈の身体だけが知っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...