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第一章 奴隷たちの島々
第22話 セプールベタの説教
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その光景を眺めながら一人の男が解体跡の土台の上に立った。その男は赤ら顔で顔の下半分を鼻ひげと口ひげで覆っていた。一人の人足が「セプールベダ様だ」とつぶいた。その司祭はよく通る声でゆっくりと話し始めた。
「みな聴くが良い。天地万物の創造主は、みなの奉仕を嘉納するであろう。かつてこの場所は、紙と石と獣を崇める異教徒たちの神殿であった。それがまた一つ打ち砕かれて、地に伏した。幸いな事である」
そこまで話すと、その司祭は唇を舐め、声を整えて朗々と説教を始めた。
「この島が、何十年も前に見い出され、大天使ミカエルに捧げられる以前、ワクワクたちが建てた偶像崇拝の館が数えきれないほど立ち並んでいた。そこでは樹木を切り出し作った粗末な門と、苔むす石畳の回廊が続いた先に、様々な偶像が崇められ、人身御供の儀式が行われていた。ワクワクたちは夜になるとそこに集い、男女が半裸で入り混じり、残餐から作りたる濁り酒を飲みながら、獣の皮を張った太鼓を打ち鳴らして踊り狂った。そのうち酒と音楽と踊りで忘我の極みに達したワクワクたちは、服を脱ぎ石畳の上に草の敷物を敷き詰めると、口に出すのも汚らわしい涜神の行いに耽った。その結果、親と子の愛情は混乱を極め、堕胎の罪を犯す者も多数出たが、ワクワクたちはその罪について意にも介さず、何ら良心の呵責も感じなかった。しかし、命がけでこの地に渡ってきた宣教師たちの長く粘り強い布教によって、まずこの土地の大氏族の頭目を正しき信仰に導く事に成功した。彼は宣教師たちに土地と金銭を与え、教会の建設を認めた。正しき信仰は瞬く間に異教徒たちの蒙を啓ひらき、もろもろの偶像は砕けて地に臥せった。それでもワクワクたちの悪魔の家は、この土地の山の隙間から小さな丘の陰にまで蛇のように隠れ建ち、これを清める事が我々の使命となった。今ここに、異端の淫祠が一つ毀たれた。これは蛇の卵を一つ踏み潰すにも似て、いまだ福音を知らぬ異教徒を、天の国へと導く新しき一歩である」
その司祭は話し終わると恍惚とした様子で石段を下りた。
人足たちは黒パンをくわえながら、その様子を呆然と眺めていた。
その中にあって、ヨハネは心穏やかではなかった。
彼は司祭の説教に強い違和感を覚えだからだ。彼の故郷にもこのような異教徒の神殿は数多くあったが、あの説教のように邪悪で陰惨な場所では決してなかったからだ。
ワクワクの神殿は静寂で清潔で、心を穏やかにしてくれる場所だった。
高台や丘の上に造られたそれらの神殿は、ワクワクの若い男女が婚姻の儀式を行う美しい場所だと彼は知っていた。今ではみな教会での結婚式に代わってしまったが、ヨハネは幼い頃に見たワクワクの契りの儀式をよく覚えていた。それは、白と赤の衣装に身を包んだ男女が神殿で静かに祝福を受ける穏やかな儀式だった。
ふとヨハネはティーを想った。
そして馬車に近づき黒パンを一つ取ると服の下にねじ込んで隠した。
「みな聴くが良い。天地万物の創造主は、みなの奉仕を嘉納するであろう。かつてこの場所は、紙と石と獣を崇める異教徒たちの神殿であった。それがまた一つ打ち砕かれて、地に伏した。幸いな事である」
そこまで話すと、その司祭は唇を舐め、声を整えて朗々と説教を始めた。
「この島が、何十年も前に見い出され、大天使ミカエルに捧げられる以前、ワクワクたちが建てた偶像崇拝の館が数えきれないほど立ち並んでいた。そこでは樹木を切り出し作った粗末な門と、苔むす石畳の回廊が続いた先に、様々な偶像が崇められ、人身御供の儀式が行われていた。ワクワクたちは夜になるとそこに集い、男女が半裸で入り混じり、残餐から作りたる濁り酒を飲みながら、獣の皮を張った太鼓を打ち鳴らして踊り狂った。そのうち酒と音楽と踊りで忘我の極みに達したワクワクたちは、服を脱ぎ石畳の上に草の敷物を敷き詰めると、口に出すのも汚らわしい涜神の行いに耽った。その結果、親と子の愛情は混乱を極め、堕胎の罪を犯す者も多数出たが、ワクワクたちはその罪について意にも介さず、何ら良心の呵責も感じなかった。しかし、命がけでこの地に渡ってきた宣教師たちの長く粘り強い布教によって、まずこの土地の大氏族の頭目を正しき信仰に導く事に成功した。彼は宣教師たちに土地と金銭を与え、教会の建設を認めた。正しき信仰は瞬く間に異教徒たちの蒙を啓ひらき、もろもろの偶像は砕けて地に臥せった。それでもワクワクたちの悪魔の家は、この土地の山の隙間から小さな丘の陰にまで蛇のように隠れ建ち、これを清める事が我々の使命となった。今ここに、異端の淫祠が一つ毀たれた。これは蛇の卵を一つ踏み潰すにも似て、いまだ福音を知らぬ異教徒を、天の国へと導く新しき一歩である」
その司祭は話し終わると恍惚とした様子で石段を下りた。
人足たちは黒パンをくわえながら、その様子を呆然と眺めていた。
その中にあって、ヨハネは心穏やかではなかった。
彼は司祭の説教に強い違和感を覚えだからだ。彼の故郷にもこのような異教徒の神殿は数多くあったが、あの説教のように邪悪で陰惨な場所では決してなかったからだ。
ワクワクの神殿は静寂で清潔で、心を穏やかにしてくれる場所だった。
高台や丘の上に造られたそれらの神殿は、ワクワクの若い男女が婚姻の儀式を行う美しい場所だと彼は知っていた。今ではみな教会での結婚式に代わってしまったが、ヨハネは幼い頃に見たワクワクの契りの儀式をよく覚えていた。それは、白と赤の衣装に身を包んだ男女が神殿で静かに祝福を受ける穏やかな儀式だった。
ふとヨハネはティーを想った。
そして馬車に近づき黒パンを一つ取ると服の下にねじ込んで隠した。
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