52 / 106
第二章 拡がりゆく世界
第49話 新しい工房
しおりを挟む
ヨハネは部屋を出て階段を下りると、奉公人用の出口から裏路地に出た。
そして彼は商会の隣にある建物を見上げた。
二階建ての煉瓦造りの建物だった。確か燻製肉や乾物を卸商会が入っていたはずだったが、今は空き家になっていた。中の設備はそのままになっていた。勘定係から預かった鍵を使って勝手口を開け、中に入った。ヨハネは咳き込んだ。
そこは台所だった。かまどの横に薪が積まれ、古い鍋が幾つか転がっていた。彼はシャツをたくし上げ、それで口と鼻を隠しながら隣の部屋へ移った。そこは幾つも木箱が積み上げら、散乱している倉庫だった。そこも埃とゴミだらけで、明らかに誰かが侵入して家探しをした形跡があった。部屋の奥には煉瓦のしっかりした階段があった。それを昇ると、2階は机と椅子が置かれている広い部屋だった。そこもひどい埃に覆われていたが、小さな南側の小さな鎧戸は開けたままになっており、太陽の光が差し込んでいた。窓からは商会の2階と男女それぞれの奴隷小屋がよく見えた。2階の部屋の奥には木製の扉があり、そこを開けると建物の外に木製の階段が付けられその下は1階の台所の側に続いていた。
ここを機織りの作業場として、人が寝泊まりできるよう作り直さなければならない。台所も必要だ。ヨハネは頭を巡らせ始めた。荷物を運ぶ必要のある作業場には1階が良いだろう、奉公人が寝泊まりするのは2階にするべきだ、台所は水回りを確かめてからもう1度考える必要がある、そんな事を考えながらヨハネは取りあえず、このすさまじい埃を掃除しなければならないと考えて、大きなため息をついたが、その時また埃を吸い込んで涙が出るほど咳き込んだ。
次の日からヨハネは奉公人たちを使って新しい建物の掃除を始めた。
みな退屈な仕事を嫌がったが、少しずつきれいに変わっていく部屋を見るのはヨハネにとって喜びだった。掃除を終えた後は、勘定係と話し合いを持った。彼は、1階には中古の機織り機械を20台入れる事、それを操る機織り奉公人たち20人分の寝床と寝具が必要な事、食事と洗濯をするための設備を準備する事などを話した。
最後に勘定係は言った。
「20人の奉公人はみな女だ。その女たちを従える女奉公人の頭と今度引き合わせるから、その人物と話し合いながら内装や水回りの事は決めろ。既定の予算を超えない限り細かい事は任せる」
20人の女たちを従える女奉公人の頭、と聞いてヨハネはいつか会った沖仲士頭の女房を連想した。
彼女は沖仲士たちから恐れられている沖仲士頭から恐れられている存在で、筋肉と贅肉がたっぷりと付いた中年女だった。
加えて、弁が立ち力も強くてみなから一目置かれていた。そんな女と話し合うとなると、どれだけ気押されるのだろうか、とヨハネは気を重くした。
そして彼は商会の隣にある建物を見上げた。
二階建ての煉瓦造りの建物だった。確か燻製肉や乾物を卸商会が入っていたはずだったが、今は空き家になっていた。中の設備はそのままになっていた。勘定係から預かった鍵を使って勝手口を開け、中に入った。ヨハネは咳き込んだ。
そこは台所だった。かまどの横に薪が積まれ、古い鍋が幾つか転がっていた。彼はシャツをたくし上げ、それで口と鼻を隠しながら隣の部屋へ移った。そこは幾つも木箱が積み上げら、散乱している倉庫だった。そこも埃とゴミだらけで、明らかに誰かが侵入して家探しをした形跡があった。部屋の奥には煉瓦のしっかりした階段があった。それを昇ると、2階は机と椅子が置かれている広い部屋だった。そこもひどい埃に覆われていたが、小さな南側の小さな鎧戸は開けたままになっており、太陽の光が差し込んでいた。窓からは商会の2階と男女それぞれの奴隷小屋がよく見えた。2階の部屋の奥には木製の扉があり、そこを開けると建物の外に木製の階段が付けられその下は1階の台所の側に続いていた。
ここを機織りの作業場として、人が寝泊まりできるよう作り直さなければならない。台所も必要だ。ヨハネは頭を巡らせ始めた。荷物を運ぶ必要のある作業場には1階が良いだろう、奉公人が寝泊まりするのは2階にするべきだ、台所は水回りを確かめてからもう1度考える必要がある、そんな事を考えながらヨハネは取りあえず、このすさまじい埃を掃除しなければならないと考えて、大きなため息をついたが、その時また埃を吸い込んで涙が出るほど咳き込んだ。
次の日からヨハネは奉公人たちを使って新しい建物の掃除を始めた。
みな退屈な仕事を嫌がったが、少しずつきれいに変わっていく部屋を見るのはヨハネにとって喜びだった。掃除を終えた後は、勘定係と話し合いを持った。彼は、1階には中古の機織り機械を20台入れる事、それを操る機織り奉公人たち20人分の寝床と寝具が必要な事、食事と洗濯をするための設備を準備する事などを話した。
最後に勘定係は言った。
「20人の奉公人はみな女だ。その女たちを従える女奉公人の頭と今度引き合わせるから、その人物と話し合いながら内装や水回りの事は決めろ。既定の予算を超えない限り細かい事は任せる」
20人の女たちを従える女奉公人の頭、と聞いてヨハネはいつか会った沖仲士頭の女房を連想した。
彼女は沖仲士たちから恐れられている沖仲士頭から恐れられている存在で、筋肉と贅肉がたっぷりと付いた中年女だった。
加えて、弁が立ち力も強くてみなから一目置かれていた。そんな女と話し合うとなると、どれだけ気押されるのだろうか、とヨハネは気を重くした。
0
あなたにおすすめの小説
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【アラウコの叫び 】第4巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日21:40投稿】
4巻は、序盤は「推理もの」、中盤から後半は「ロマンスもの」が展開されます。
・サンティアゴで起こる「事件」と「裁き」
・「アンデスの悪魔」として悪名を轟かせた狂気の老人カルバハルの存在感
・ニドス家の兄妹の「行く末」
・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」
大きく分けてこの様な展開になってます。
-------------------
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎週月曜07:20投稿】
3巻からは戦争編になります。
戦物語に関心のある方は、ここから読み始めるのも良いかもしれません。
※1、2巻は序章的な物語、伝承、風土や生活等事を扱っています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる