いつか君に巡り逢える

原口源太郎

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第2章

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 それからの何日か、僕は大樹に対して以前とは違っていた。表面上は今まで通りを装いながら、大樹の行動を細かく観察した。今まで親友でありながら、空気のように自然な存在で、深く立ち入ったり、個人を強く意識することがなかったのに、大樹の一挙一動が気になってばかりいるようになった。
 それにしても冷静になって考えてみると、あの時の沢口は様子がおかしかった。あんな風に取り乱したり、物事を悪く考えてしまうような弱い子じゃないと思う。何か重大なことがあったのだろうか。大樹に親しくしている女の子がいると聞いたのではなく、沢口自身がそんな場面を目撃したのかもしれない。
 沢口から話を聞いて四日が過ぎた。大樹に怪しいところはなかった。ずっと前から知っている大樹のままだったし、特別女の子と親しそうにしているところも見なかった。僕は沢口に会って、大樹のことは沢口の考え過ぎだと伝えることに決めた。
 さて、どうやってそれを沢口に伝えようかと僕は悩んだ。沢口の連絡先なんて知るわけがないし、大樹に聞くわけにもいかない。教室に沢口を訪ねていくのも照れくさい。沢口がしたように手紙を書くなんてことはできないし。
 そんなことで悩んでいて、四時間目の授業が終わっているのにも気が付かなかった。大樹が目の前に立っている。
「どうしたの、お前」
 大樹がいつものように、ぶっきら棒に言った。
「何でもないよ」
 動揺を隠して僕は答えた。
「ちょっと付き合ってくれ。話したいことがある」
 そう言って大樹は歩き始めた。僕はその後に従う。
 屋上への階段を何段か上ったところで大樹は振り返ると、そこに腰を下ろした。
「どうした?」
「まあ、座れ」
 そう言われ、僕は大樹の隣に座った。
「で、どうした? 何か用か?」
 こんなことは今までになかった。ただならぬ話があるのは確かだ。
「実はさ、沢口の事なんだ」
 うげっ。もしかしたら沢口と別れるなんて言うんじゃないだろうな。
 僕は取り乱さないようにフルパワーで心を落ち着ける努力をした。
「沢口がどうした?」
 僕は平静を装おうとするあまり、台本を棒読みするような喋り方になってしまい、余計に慌てた。
 大樹はそんな様子に気が付いていないようだ。
「沢口が浮気しているらしいんだ」
「へ?」
「浮気って言い方も変か。俺たち、恋人っていうほどの間柄でもないし」
 大樹は前を見て、淡々とした口調で話す。下のほうの廊下を、時折パンやジュースを抱えた生徒が通り過ぎていく。
「恋人同士って言ってもいい間柄だろ? それより、何でそう思ったんだ?」
「ちょっと噂を小耳に挟んだ。男と校内でいちゃついているところを見た奴がいるらしい。もちろん、そいつは俺じゃないぜ」
 なんだかおかしい。デジャヴみたいだ。どこかで経験したことを繰り返している。
 あ、そうだ。この前、沢口に聞いた話だ。お互いに似たもの同士というか、何というか・・・
「単なる噂だろ?」
 何だか僕はバカバカしくなってきた。二人そろって同じように勘違いをしている。仲がいい証拠じゃないか。
「単なる噂ならいいけど。一人だけじゃないんだ。何人か見ているらしい。俺、どうしたいいと思う?」
 どうしたらいいって、そんなこと聞かれても困る。
「俺は絶対に間違いだと思う。沢口さんが好きなのは大樹だけだ」
「そうかな」
「絶対にそう」
 僕の自信ありげな口調に、大樹は不審そうに僕を見た。
「どうしてそう思うんだ?」
「いや、何となく。今までの二人を見ているとさ」
「そうかなあ。俺、頭の中ぐちゃぐちゃになりそう。これじゃ受験勉強どころじゃないよ」
「単なる噂じゃんか。俺がはっきりさせてやるよ」
 そう言ってからしまったと思った。確かに沢口の気持ちは僕だけが知っている。だけどそれをどうやって大樹に説明すればいいんだろう。
「何か知っているのか?」
 さすがに鋭い大樹は何かあると感じたらしい。
「いや、別に何も知らないけど。ちょっと調べてみるよ」
「うん」
 大樹は力なく頷いた。あまり当てにはしていないようだ。けど、極端に交友範囲の狭い大樹にとっては、僕くらいしか頼れる奴はいない。
「何かわかったら知らせてくれ」
 珍しく弱々しい様子で言うと、大樹は立ち上がった。
 僕もそれに続きながら考えていた。一体全体どういうことだろう。数日前に同じような悩みを沢口から打ち明けられたばかりだ。何かあるのだろうか。
 僕は当人同士の単なる思い込みだけじゃない気がした。真実をはっきりさせなければならない。必ずはっきりさせてみせる。何だか正義の使者になった気分で、そう心に誓った。

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