40 / 47
第3章
6
しおりを挟む
「やっぱり頼りになるよ」
お昼の弁当を食べながら大樹が言った。勇介も一緒にいて、弁当をぱくついてるけれど、生まれてからずっと彼女がいないので、あまり男女の事には関心を示さない。というか、関心はあるのだろうけれど、積極的に関わってこようとはしない。
「もう済んだ話だからいいよ」
「でも、まだわからないことがある。俺が三年生の誰かといちゃついていたというのは野牧の作り話だったけど、沢口が誰かといちゃついていたというのは、野牧の作り話じゃないだろ?」
「ああ、それね。それは事実だよ」
「えっ?」
大樹は手にしていた箸を落としそうになった。
「まあ、イチャイチャはしていなかっと思うけれど」
「どういうこと?」
「沢口が浮気をしているかもしれないとお前が俺に相談をした一週間前に、沢口からも同じような相談を受けた」
「それは知ってる」
「その時は、図書館に呼び出された。沢口は俺を見つけると、嬉しそうに手を振った。そして人気のないところに行くと、真剣な表情になってお前のことを話し出した。話しているうちに沢口は感情が高ぶってきて、今にも泣き出しそうになったんで、これはいかん、何とか元気づけなきゃって俺は思った」
「うん」
「そんな俺たちの様子を、事情の知らない外部の人間が見たらどう思うと思う?」
「内山!」
昼飯を食べ終えて弁当箱を仕舞っている時に名前を呼ばれた。
教室の入り口に立つ同級生の男が、僕を見て首を振った。こっちに来いという合図らしい。
廊下に優菜の友達の岩崎がいた。
「どうしたの?」
「ちょっと来てください。優菜が大変なんです」
「優菜が?」
そう言ったときには、すでに岩崎は廊下を歩き出している。
「優菜がどうしたって?」
階段をスタスタと降りていく岩崎の背中に向かって、もう一度僕は尋ねた。
「私もクラスが違うのでよくわからないんですけど、教室の前で優菜が男の子たちに囲まれて、付き合っているのは誰だか教えろ、嫌です、なんていう押し問答をしているのが聞こえてきたので」
それで咄嗟に僕を呼びに来たのか。さすが岩崎。
なんて感心してる場合じゃない。
僕は覚悟を決めた。
一年の教室が並ぶ廊下に、大きな人だまりがあった。思ったよりも多くの人がいて驚いた。
「あそこ?」
僕の問いかけに岩崎が頷く。
僕は生徒たちが作る大きな輪の外側に加わった。
輪の中心に優菜ともう一人の女の子、それに体格のいい男がいる。
「俺は鈴木が嘘を言ってるのなら納得ができない。本当に付き合ってるヤツがいるのなら、名前を言ってみろ。もし付き合ってるヤツがいるってことが本当なら、俺はもう何も言わない。何度もそう言ってるだろ」
男は強い調子で、説得するように優菜に話しをしている。
「言えない」
優菜は震える声で答えた。隣にいるのは優菜の友達なのだろうか。その子に寄り添うようにしている。
「いい加減にしろよ」
男は優菜に言った。そして遠巻きに周りを取り囲む生徒たちを見た。
「お前ら、見世物じゃねえ、あっちに行け」
男は興奮したように周りの生徒に言った。
「ちょっとごめん」
僕は野次馬をかき分けて、輪の中心へ歩いていった。
優菜が怯えた目で僕を見る。
「おいで、優菜」
僕は優しく言った。
優菜が来て、僕の腕を掴む。
大勢の人間が僕たちを見ている。
「優菜が好きなのは俺だ。今までこそこそと付き合ってきたけれど、これからは堂々と付き合っていくから」
僕はそう言って、優菜と話をしていた男を見た。そして周りの野次馬たちを見る。
「さあ、もう終わり。教室に戻った戻った」
そう言いながら僕たちのところに来たのは大樹と勇介だった。
「凄いよ内山。格好よかった。僕じゃとてもあんなことできないよ」
興奮したように話すのは勇介だ。
授業が終わって、僕たちは教室で話しをしていた。
「それじゃ、去年の秋に駅前で見かけた子って、優花の妹だったのか?」
「うん、そう。偶然にも」
「お前、優花と付き合っていながら、妹の顔さえも知らなかったのか? さすがだよ」
「そんなもんだろ、普通。じゃ、お前は沢口の兄弟の顔を知ってるのかよ」
「いや、知らない」
「それ見ろ。おっと、今日は優菜と一緒に帰るんだった。お先に」
「チェ、もう一緒に帰ってやんねー」
大樹がすねたように言った。
校門の近くに優菜が立っている。優花も一緒だ。
僕たちは三人で駅へと歩いた。三人でいると優花のことが、まるで優菜の保護者のように思えた。
僕たちはこの先どうなっていくのだろうかと、少し不安になった。
お昼の弁当を食べながら大樹が言った。勇介も一緒にいて、弁当をぱくついてるけれど、生まれてからずっと彼女がいないので、あまり男女の事には関心を示さない。というか、関心はあるのだろうけれど、積極的に関わってこようとはしない。
「もう済んだ話だからいいよ」
「でも、まだわからないことがある。俺が三年生の誰かといちゃついていたというのは野牧の作り話だったけど、沢口が誰かといちゃついていたというのは、野牧の作り話じゃないだろ?」
「ああ、それね。それは事実だよ」
「えっ?」
大樹は手にしていた箸を落としそうになった。
「まあ、イチャイチャはしていなかっと思うけれど」
「どういうこと?」
「沢口が浮気をしているかもしれないとお前が俺に相談をした一週間前に、沢口からも同じような相談を受けた」
「それは知ってる」
「その時は、図書館に呼び出された。沢口は俺を見つけると、嬉しそうに手を振った。そして人気のないところに行くと、真剣な表情になってお前のことを話し出した。話しているうちに沢口は感情が高ぶってきて、今にも泣き出しそうになったんで、これはいかん、何とか元気づけなきゃって俺は思った」
「うん」
「そんな俺たちの様子を、事情の知らない外部の人間が見たらどう思うと思う?」
「内山!」
昼飯を食べ終えて弁当箱を仕舞っている時に名前を呼ばれた。
教室の入り口に立つ同級生の男が、僕を見て首を振った。こっちに来いという合図らしい。
廊下に優菜の友達の岩崎がいた。
「どうしたの?」
「ちょっと来てください。優菜が大変なんです」
「優菜が?」
そう言ったときには、すでに岩崎は廊下を歩き出している。
「優菜がどうしたって?」
階段をスタスタと降りていく岩崎の背中に向かって、もう一度僕は尋ねた。
「私もクラスが違うのでよくわからないんですけど、教室の前で優菜が男の子たちに囲まれて、付き合っているのは誰だか教えろ、嫌です、なんていう押し問答をしているのが聞こえてきたので」
それで咄嗟に僕を呼びに来たのか。さすが岩崎。
なんて感心してる場合じゃない。
僕は覚悟を決めた。
一年の教室が並ぶ廊下に、大きな人だまりがあった。思ったよりも多くの人がいて驚いた。
「あそこ?」
僕の問いかけに岩崎が頷く。
僕は生徒たちが作る大きな輪の外側に加わった。
輪の中心に優菜ともう一人の女の子、それに体格のいい男がいる。
「俺は鈴木が嘘を言ってるのなら納得ができない。本当に付き合ってるヤツがいるのなら、名前を言ってみろ。もし付き合ってるヤツがいるってことが本当なら、俺はもう何も言わない。何度もそう言ってるだろ」
男は強い調子で、説得するように優菜に話しをしている。
「言えない」
優菜は震える声で答えた。隣にいるのは優菜の友達なのだろうか。その子に寄り添うようにしている。
「いい加減にしろよ」
男は優菜に言った。そして遠巻きに周りを取り囲む生徒たちを見た。
「お前ら、見世物じゃねえ、あっちに行け」
男は興奮したように周りの生徒に言った。
「ちょっとごめん」
僕は野次馬をかき分けて、輪の中心へ歩いていった。
優菜が怯えた目で僕を見る。
「おいで、優菜」
僕は優しく言った。
優菜が来て、僕の腕を掴む。
大勢の人間が僕たちを見ている。
「優菜が好きなのは俺だ。今までこそこそと付き合ってきたけれど、これからは堂々と付き合っていくから」
僕はそう言って、優菜と話をしていた男を見た。そして周りの野次馬たちを見る。
「さあ、もう終わり。教室に戻った戻った」
そう言いながら僕たちのところに来たのは大樹と勇介だった。
「凄いよ内山。格好よかった。僕じゃとてもあんなことできないよ」
興奮したように話すのは勇介だ。
授業が終わって、僕たちは教室で話しをしていた。
「それじゃ、去年の秋に駅前で見かけた子って、優花の妹だったのか?」
「うん、そう。偶然にも」
「お前、優花と付き合っていながら、妹の顔さえも知らなかったのか? さすがだよ」
「そんなもんだろ、普通。じゃ、お前は沢口の兄弟の顔を知ってるのかよ」
「いや、知らない」
「それ見ろ。おっと、今日は優菜と一緒に帰るんだった。お先に」
「チェ、もう一緒に帰ってやんねー」
大樹がすねたように言った。
校門の近くに優菜が立っている。優花も一緒だ。
僕たちは三人で駅へと歩いた。三人でいると優花のことが、まるで優菜の保護者のように思えた。
僕たちはこの先どうなっていくのだろうかと、少し不安になった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
*********
以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。
内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる