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第二章
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そしてセイナとブルゼノのさらに厳しい修行の日々が始まった。
いつも一緒にいるセイナとブルゼノのことを夫婦になったとからかう者がいたが、逆に自分も剣術を習いたいといって、時々二人の稽古する牧場に通ってくる者もいた。
二人が稽古する牧場の近くに、木でできた塔のような監視所があり、剣を携えたムロタという男が常駐していた。
町を囲む城壁の近くには畑が広がり、そこまで魔物が来ることはない。しかしその畑のさらに外側にある牧場や果樹園には時々魔物が現れる。
そういった魔物が家畜を襲ったりしないように見張る監視所が、ぐるりと町を囲むように点在していた。
その監視の役目を負っているのが、王様のもとで働く兵士だった。
毎日牧場に来て剣術の稽古をする若い二人に、ムロタはすぐに興味を持った。
ムロタも兵士だったから、剣術の修行はしてきたし、一人で魔物と戦わなければならない時もあるから、腕もそれなりのものを持っている。
ムロタは時々監視所から下りてきては、セイナやブルゼノの相手をした。また、二人が休憩の時は、逆に監視所に上り、ムロタが実際に魔物と戦ったときの話を聞いたりした。
「私も魔物と戦ってみたい」
昼間の稽古を終え、羊を追って町に帰るときに、セイナがぽつりと言った。
「魔物と?」
「パフラットさんやババロン君は魔物と戦っているのよ。魔物は人間ほど賢くないから、道場での剣術のように色々な駆け引きをしないし、動きや速さも人間とは違う。パフラットさんたちはそれを知っているから、それを想定した修行ができるけれど、私は魔物がどのような物か知らないから、いつまでたっても人間同士の剣術しか知らない。私も魔物と戦ってみたい」
「セイナだって、いずれは町の外に出て魔物と戦うようになるのだろうし、そんなに急ぐことでもないんじゃない?」
ブルゼノはセイナを見て言った。
セイナは無言で羊の群れを見ていた。
朝、羊を連れてきたきりで、姿を見せないので、ムロタは変だなとは思っていた。
羊を連れて帰る時間になってもセイナとブルゼノが姿を見せないので、ムロタはただ事ではないと悟り、近くの監視所へ走った。
そこの監視所の同僚に城への報告を頼み、ムロタは牧場の周りを捜した。
しかし、二人の姿を見つけることはできなかった。
夕闇が迫り、町を囲む城壁の門が間もなく閉められるという合図の銅鑼の音がゴーンと響いてきた。
「ちくしょう、なんでもっと早く気が付かなかった」
そう後悔の念に駆られながら、薄暗くなっていく中を歩き回っている時に、城から派遣された兵士たちが到着した。
一緒に来たブルゼノの父が羊を連れて帰っていった。
ムロタは兵士たちの中に、見慣れない旅姿の男が一人いるのに気が付いた。
いつも一緒にいるセイナとブルゼノのことを夫婦になったとからかう者がいたが、逆に自分も剣術を習いたいといって、時々二人の稽古する牧場に通ってくる者もいた。
二人が稽古する牧場の近くに、木でできた塔のような監視所があり、剣を携えたムロタという男が常駐していた。
町を囲む城壁の近くには畑が広がり、そこまで魔物が来ることはない。しかしその畑のさらに外側にある牧場や果樹園には時々魔物が現れる。
そういった魔物が家畜を襲ったりしないように見張る監視所が、ぐるりと町を囲むように点在していた。
その監視の役目を負っているのが、王様のもとで働く兵士だった。
毎日牧場に来て剣術の稽古をする若い二人に、ムロタはすぐに興味を持った。
ムロタも兵士だったから、剣術の修行はしてきたし、一人で魔物と戦わなければならない時もあるから、腕もそれなりのものを持っている。
ムロタは時々監視所から下りてきては、セイナやブルゼノの相手をした。また、二人が休憩の時は、逆に監視所に上り、ムロタが実際に魔物と戦ったときの話を聞いたりした。
「私も魔物と戦ってみたい」
昼間の稽古を終え、羊を追って町に帰るときに、セイナがぽつりと言った。
「魔物と?」
「パフラットさんやババロン君は魔物と戦っているのよ。魔物は人間ほど賢くないから、道場での剣術のように色々な駆け引きをしないし、動きや速さも人間とは違う。パフラットさんたちはそれを知っているから、それを想定した修行ができるけれど、私は魔物がどのような物か知らないから、いつまでたっても人間同士の剣術しか知らない。私も魔物と戦ってみたい」
「セイナだって、いずれは町の外に出て魔物と戦うようになるのだろうし、そんなに急ぐことでもないんじゃない?」
ブルゼノはセイナを見て言った。
セイナは無言で羊の群れを見ていた。
朝、羊を連れてきたきりで、姿を見せないので、ムロタは変だなとは思っていた。
羊を連れて帰る時間になってもセイナとブルゼノが姿を見せないので、ムロタはただ事ではないと悟り、近くの監視所へ走った。
そこの監視所の同僚に城への報告を頼み、ムロタは牧場の周りを捜した。
しかし、二人の姿を見つけることはできなかった。
夕闇が迫り、町を囲む城壁の門が間もなく閉められるという合図の銅鑼の音がゴーンと響いてきた。
「ちくしょう、なんでもっと早く気が付かなかった」
そう後悔の念に駆られながら、薄暗くなっていく中を歩き回っている時に、城から派遣された兵士たちが到着した。
一緒に来たブルゼノの父が羊を連れて帰っていった。
ムロタは兵士たちの中に、見慣れない旅姿の男が一人いるのに気が付いた。
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