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第一章
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三日後の夕方、中村と藤森の両刑事が雅彦の家を訪れた。二人はいつも一緒に行動をしているらしい。
妙子は必死になって詳しく調査をしてほしいと刑事たちに訴えた。子供たちの前ではいつも通りの平静を装い、当てにならない雅彦には何を言っても無駄だと押さえつけていたものを、一気に吐き出すように刑事たちにぶつけた。
妙子が言いたいだけのことを言うだけ言って奥へ引っ込んでから、雅彦も十分な警護をしてほしいと刑事たちに言った。
それを受けて中村の言った言葉は意外なことだった。
「私たちはね、全てあなたが行ったことだと思っているのですよ」
中村は雅彦の目をじっと見つめながら言った。
「な、」
そう言ったきり、雅彦は言葉が出なかった。
「三週間前の夜、久しぶりに夜中まで酒を飲んで酔っ払って家に帰ってきたあなたは、つい出来心で、隣の家に火を付けてしまった。いや、もっとちゃんとした理由があったのかもしれない。とにかく、翌日に隣の家がきれいさっぱり燃えてしまったのを見て、あなたは大変なことをしてしまったと思った。自分が疑われるのはわかっている。それで咄嗟に架空の男を作り上げて家の前ですれ違ったと証言した。でもそんな訳のわからない男の話だけじゃ駄目だ。そこで自分が被害者になることで全ての罪をその架空の男が行ったことにしようとした。どうです? それが真実なのではないのですか?」
中村は言葉を切って、きつい目で雅彦を睨みつけた。
雅彦は怒りで体がカーと火照ってくるのを感じた。
「我々はお宅の高級車が壊された時や、飼い犬が殺された時、車や犬の死骸を専門家にも見てもらいながら、色々と調べさせてもらいました。時間と手間をかけて念入りにやっていましたな。どちらも。とても外部の人間の犯行とは思えない。頭のいかれた人間がやったと見せかけようとするのは良いアイディアだったと思いますが」
「そんなことは無い!」
雅彦は思わず怒鳴り声になって立ち上がった。
「まーまー、落ち着いてください」
中村は雅彦の怒りなど何も感じていないような、落ち着いていて雅彦をバカにしたような態度で言った。
雅彦は怒りで体をぶるぶる震わせながら椅子に腰かけた。気を落ち着かせるためにコーヒーを飲もうとしてテーブルの上にこぼした。
雅彦は悪夢を見続けた。睡眠不足なのに眠れない日々が続いた。夜が苦痛になった。
夢はひどいものだった。同じ夢を一晩に何度も見て、何度も目を覚ました。
立ったまま金縛りにあって身動きできない雅彦の目の前に、のこぎりを持ったばかでかいのっぺらぼうの男がいる。男は雅彦の片手をひょいと持ち上げ、腕の付け根にのこぎりを当て、切り始める。服が引き裂かれ、血しぶきが飛ぶ。雅彦は悲鳴を上げ続ける。
両手、両足を切落とされた雅彦が地面にごろんと転がった時、近くで雅彦をじっと見つめる少女の姿が目に入る。少女は可笑しそうに微笑んで雅彦を見ている。のっぺらぼうの男は少女とは反対の方向へと歩き始める。そこには妙子と二人の子供が恐怖に身をすくめて佇んでいる。雅彦は必死になって叫ぶ。
「やめろー!」
叫ぶ。
「やめろー!」
叫ぶ。
「やめろー!」
雅彦はビクンとして目を覚ました。
現実に引き戻される。部屋は闇が支配していた。夢を見ていただけなのに心臓はどきどきし、汗をびっしょりとかいている。
そんなことが一晩に一度や二度では済まなかった。
妙子は必死になって詳しく調査をしてほしいと刑事たちに訴えた。子供たちの前ではいつも通りの平静を装い、当てにならない雅彦には何を言っても無駄だと押さえつけていたものを、一気に吐き出すように刑事たちにぶつけた。
妙子が言いたいだけのことを言うだけ言って奥へ引っ込んでから、雅彦も十分な警護をしてほしいと刑事たちに言った。
それを受けて中村の言った言葉は意外なことだった。
「私たちはね、全てあなたが行ったことだと思っているのですよ」
中村は雅彦の目をじっと見つめながら言った。
「な、」
そう言ったきり、雅彦は言葉が出なかった。
「三週間前の夜、久しぶりに夜中まで酒を飲んで酔っ払って家に帰ってきたあなたは、つい出来心で、隣の家に火を付けてしまった。いや、もっとちゃんとした理由があったのかもしれない。とにかく、翌日に隣の家がきれいさっぱり燃えてしまったのを見て、あなたは大変なことをしてしまったと思った。自分が疑われるのはわかっている。それで咄嗟に架空の男を作り上げて家の前ですれ違ったと証言した。でもそんな訳のわからない男の話だけじゃ駄目だ。そこで自分が被害者になることで全ての罪をその架空の男が行ったことにしようとした。どうです? それが真実なのではないのですか?」
中村は言葉を切って、きつい目で雅彦を睨みつけた。
雅彦は怒りで体がカーと火照ってくるのを感じた。
「我々はお宅の高級車が壊された時や、飼い犬が殺された時、車や犬の死骸を専門家にも見てもらいながら、色々と調べさせてもらいました。時間と手間をかけて念入りにやっていましたな。どちらも。とても外部の人間の犯行とは思えない。頭のいかれた人間がやったと見せかけようとするのは良いアイディアだったと思いますが」
「そんなことは無い!」
雅彦は思わず怒鳴り声になって立ち上がった。
「まーまー、落ち着いてください」
中村は雅彦の怒りなど何も感じていないような、落ち着いていて雅彦をバカにしたような態度で言った。
雅彦は怒りで体をぶるぶる震わせながら椅子に腰かけた。気を落ち着かせるためにコーヒーを飲もうとしてテーブルの上にこぼした。
雅彦は悪夢を見続けた。睡眠不足なのに眠れない日々が続いた。夜が苦痛になった。
夢はひどいものだった。同じ夢を一晩に何度も見て、何度も目を覚ました。
立ったまま金縛りにあって身動きできない雅彦の目の前に、のこぎりを持ったばかでかいのっぺらぼうの男がいる。男は雅彦の片手をひょいと持ち上げ、腕の付け根にのこぎりを当て、切り始める。服が引き裂かれ、血しぶきが飛ぶ。雅彦は悲鳴を上げ続ける。
両手、両足を切落とされた雅彦が地面にごろんと転がった時、近くで雅彦をじっと見つめる少女の姿が目に入る。少女は可笑しそうに微笑んで雅彦を見ている。のっぺらぼうの男は少女とは反対の方向へと歩き始める。そこには妙子と二人の子供が恐怖に身をすくめて佇んでいる。雅彦は必死になって叫ぶ。
「やめろー!」
叫ぶ。
「やめろー!」
叫ぶ。
「やめろー!」
雅彦はビクンとして目を覚ました。
現実に引き戻される。部屋は闇が支配していた。夢を見ていただけなのに心臓はどきどきし、汗をびっしょりとかいている。
そんなことが一晩に一度や二度では済まなかった。
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