グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・1 ジング王国の少年

魔物退治・1

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 翌日、一行は朝早くに宿をたち、山の奥へと入っていった。
 その日も結局、魔物たちの棲家を見つけることはできなかった。しかし途中で戦って倒した魔物のいくつかには矢が刺さっており、近くに強い魔物たちが住んでいる雰囲気はあった。
 ババロンとパフラットは初めて町の外での野宿を経験した。
 三人は交代で眠ることにした。
「いいか、見張りの者は眠くなったら絶対にほかの者を起こすこと。三人が眠ってしまったら必ず魔物が襲ってくると思っていなさい」
 シェフは昔の経験をもとに、野宿するときに気をつける様々なことを子供たちに教えた。
「おじさんは魔法を使えるの?」
 たき火を囲んでいる時に、ババロンがシェフに尋ねた。
「多少はね。忙しかったから、たいした魔法は使えないけど」
「見てみたい」
 ババロンが興味津々な顔で言った。
「ちょっと待ってて」
 シェフはそう言って用意をした。
「じゃ、いくよ。それっ!」
 そういうと、シェフの手から炎がチョロチョロッと出た。
「うわっ」
 ババロンは驚いたように口を開けたが、パフラットはなんだ、子供だましかといった顔をした。
「凄い、僕もやりたい」
「やってみたいか? じゃ、町に帰ったら教えてやろう」
「うん」
 ババロンは目を輝かせて頷いた。

 翌日、三人は疲れた体を奮い立たせて、また山の中を歩き回った。
 すると、しんがりを歩いていたシェフの足元に何かが飛んできた。
 紙をしばりつけた矢だった。
 シェフは前を行く子供たちに見つからないように紙を広げて読んだ。
 ”右の岩山の裏が怪しい。P.S、この矢は再利用するので捨てないように“
 シェフは辺りを見回したが、グルドフの姿を見つけることはできなかった。
「私の経験からいくと、あの岩山の裏辺りが怪しい。行ってみよう」
 シェフの言葉に、子供たちは従った。

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