グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は

ソラテ村

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 グルドフは岩山を歩いていた。
 右側は谷で、三十メートルほど下に、チョロチョロとした流れが見える。
 グルドフは足を止め、後ろを振り返った。
 五十メートルほど後を、元魔法使いのポポンが歩いてくる。
 ポポンと歩調を合わせて歩くようにしているつもりなのに、一人で歩いているとついつい歩みが速くなってしまう。
「少し休みますか?」
 ポポンが追い付いたとき、グルドフが尋ねた。
「ソラテはもうすぐでしょ?」
「ええ」
「ならば休憩なくても大丈夫」
 ポポンはグルドフを追い抜いていった。
 グルドフとポポンはこの日、ソラテ村に泊まり、翌日から険しい山脈を越えてマットアン王国に行くつもりだった。グルドフ一人の足なら一日で山脈を越えてマットアン王国の村に着けるのだが、歩みの遅いポポンと一緒だと無理なので、山でテントを張り、一泊してからマットアンのふもとの村を目指すことにした。
「ソラテの村には立派なレンタルショップがありましてね。この前来た時に覗いてみたのですが、手ぶらで来ても冬山登山ができそうなほどの充実ぶりでした」
 グルドフは話しながら歩くことにした。そのほうが疲れるが、ポポンを置いていってしまうことはない。
「それはそれは」
「まずは宿に行き、そのあとで必要なものを借りに行くとしましょう」

 村の周りに広がる畑に、人の姿はまばらだった。
「おかしいな」
 グルドフはあちこちの畑を見まわしながら言った。
「この前にこの村に来た時も、まだ日が高いというのに、誰も畑にいなくて驚いたのです。その時は、村人全員で魔物退治に来た者を歓迎するためだったのですが。はて。今日も何か祝い事でもあるのですかな?」
 グルドフは首を傾げた。
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