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グルドフ旅行記・5 オオカミ親分の憂鬱
キングナイト一味
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キング・ナイトは中身のない西洋の鎧の魔物だ。オオカミ親分の元にいるマイク・ナイトも同じ種類の魔物だが、マイクの前身が普通の騎士の物だったとしたら、キングは多分、王様かそれに匹敵する人物の物だったらしい。
だから作りが違う。大きくて立派だ。
キング・ナイト一味は昔、人間が建てたらしい岩を積み上げた山小屋を棲家としていた。それだけでは収まりきらずに、小屋の周りにも自分たちで岩を積み上げ、ちょっとした要塞のようになっている。
(これはオオカミ親分、いかがなされた?)
手下を引き連れたキング・ナイトが要塞の外に現れた。
マイクもそうだが、ナイトといわれるだけあって、物腰も言葉遣いも品がある。
(ちょっと話があって来た)
これまた後ろに子分たちを引き連れたオオカミ親分が言った。
(そうですか。では中へ)
(いや、ここでいい。実はな、この峠で人間を襲っちゃならねえことになった)
(は? 人間を襲うなと?)
(そうだ)
(何バカなことを。人間とは我々に襲われるためにいるのではないですか。人間を襲うのは当たり前のことでありましょう)
(そこを曲げて頼む。訳あって強え勇者と約束しちまった)
(それはあなたの問題でありましょう。我々には関係のないことです)
(関係があるから来たんだ)
(勇者との約束を破るとどのようなことが?)
(俺たち、勇者に成敗されちまう)
(成敗される? つまり殺されてしまうということですか?)
(そうだ)
(しかし人間を襲わないとなると、我々の最大の楽しみを奪われるということです。どうせ勇者に成敗されるのはオオカミ親分、あなた達だけでありましょう? やはり我々には関係のないことです)
(そうか、ならもう頼まねえ。力ずくでわからせてやる)
(やりますかな?)
キングは腰の剣を抜いた。
(ウー)
オオカミ親分は腰を低くして身構えた。
(なぜそんなに勇者を恐れるのです)
(あいつはただの勇者じゃねえ。ドラゴンのタツ様とダバイン王をやっつけた最強の勇者だ)
そう言いながら、オオカミ親分はキングに跳びかかる構えを見せた。
キング・ナイトは片手をあげてオオカミ親分を制した。
(わかりました。親分の言うことに従いましょう。私の部下どもには一切人間に手出しさせません)
(そうか)
オオカミ親分はほっとして言った。
(他に何か頼み事は?)
(他には何もねえ。あとは今まで通りでいい)
(わかりました。あなたの言うことを聞くということは、つまり手下になったということです。そのつもりでお願いしたい)
(別に俺はどうでも構わねえぜ。勇者との約束さえ守ってくれるならよ)
(私の部下のことは私がすべて責任を負います。それ以外で、この峠で起こったことの全ては親分、あなたが全責任を負うということだと理解してよろしいですか?)
(う、も、もちろんだ)
(その怖い勇者が来たとしても?)
(ああ、俺が勇者と話をつけて、潔く俺が勇者に討たれてやろう)
(ならば。今からあなたが我々の親分だ。よろしく)
(それじゃ、早速だが、この山の警備を頼みてえ。人間の通る街道筋は俺の手下どもを配置したが、他の場所からこの山脈に入ってくる奴もいるかもしれねえ。そんな人間がいたら、魔物に襲われないように警備してくれ)
(ほほう、人間を襲ってきた我々が、今度は人間を守れと? 面白い。ソロモ)
キングは腹心の部下を呼び寄せた。
(手下どもをいくつかの班に分けて、山の警備に当たらせろ)
(はい)
(あとは・・・・ひとつ目の野郎だ)
オオカミ親分が言った。
(奴は今の話をしたところで、笑いものにされるのがオチですぞ)
オオカミ親分の子分となったキングが言った。
(図体ばかりの能無しだから、力ずくで手下にしちまうしかあるめえ)
(親分のお手並み拝見と参りますか)
オオカミ親分一家と、警備に出なかった残りのキング一味は一緒になって、ひとつ目親分のねぐらを目指して歩き始めた。
だから作りが違う。大きくて立派だ。
キング・ナイト一味は昔、人間が建てたらしい岩を積み上げた山小屋を棲家としていた。それだけでは収まりきらずに、小屋の周りにも自分たちで岩を積み上げ、ちょっとした要塞のようになっている。
(これはオオカミ親分、いかがなされた?)
手下を引き連れたキング・ナイトが要塞の外に現れた。
マイクもそうだが、ナイトといわれるだけあって、物腰も言葉遣いも品がある。
(ちょっと話があって来た)
これまた後ろに子分たちを引き連れたオオカミ親分が言った。
(そうですか。では中へ)
(いや、ここでいい。実はな、この峠で人間を襲っちゃならねえことになった)
(は? 人間を襲うなと?)
(そうだ)
(何バカなことを。人間とは我々に襲われるためにいるのではないですか。人間を襲うのは当たり前のことでありましょう)
(そこを曲げて頼む。訳あって強え勇者と約束しちまった)
(それはあなたの問題でありましょう。我々には関係のないことです)
(関係があるから来たんだ)
(勇者との約束を破るとどのようなことが?)
(俺たち、勇者に成敗されちまう)
(成敗される? つまり殺されてしまうということですか?)
(そうだ)
(しかし人間を襲わないとなると、我々の最大の楽しみを奪われるということです。どうせ勇者に成敗されるのはオオカミ親分、あなた達だけでありましょう? やはり我々には関係のないことです)
(そうか、ならもう頼まねえ。力ずくでわからせてやる)
(やりますかな?)
キングは腰の剣を抜いた。
(ウー)
オオカミ親分は腰を低くして身構えた。
(なぜそんなに勇者を恐れるのです)
(あいつはただの勇者じゃねえ。ドラゴンのタツ様とダバイン王をやっつけた最強の勇者だ)
そう言いながら、オオカミ親分はキングに跳びかかる構えを見せた。
キング・ナイトは片手をあげてオオカミ親分を制した。
(わかりました。親分の言うことに従いましょう。私の部下どもには一切人間に手出しさせません)
(そうか)
オオカミ親分はほっとして言った。
(他に何か頼み事は?)
(他には何もねえ。あとは今まで通りでいい)
(わかりました。あなたの言うことを聞くということは、つまり手下になったということです。そのつもりでお願いしたい)
(別に俺はどうでも構わねえぜ。勇者との約束さえ守ってくれるならよ)
(私の部下のことは私がすべて責任を負います。それ以外で、この峠で起こったことの全ては親分、あなたが全責任を負うということだと理解してよろしいですか?)
(う、も、もちろんだ)
(その怖い勇者が来たとしても?)
(ああ、俺が勇者と話をつけて、潔く俺が勇者に討たれてやろう)
(ならば。今からあなたが我々の親分だ。よろしく)
(それじゃ、早速だが、この山の警備を頼みてえ。人間の通る街道筋は俺の手下どもを配置したが、他の場所からこの山脈に入ってくる奴もいるかもしれねえ。そんな人間がいたら、魔物に襲われないように警備してくれ)
(ほほう、人間を襲ってきた我々が、今度は人間を守れと? 面白い。ソロモ)
キングは腹心の部下を呼び寄せた。
(手下どもをいくつかの班に分けて、山の警備に当たらせろ)
(はい)
(あとは・・・・ひとつ目の野郎だ)
オオカミ親分が言った。
(奴は今の話をしたところで、笑いものにされるのがオチですぞ)
オオカミ親分の子分となったキングが言った。
(図体ばかりの能無しだから、力ずくで手下にしちまうしかあるめえ)
(親分のお手並み拝見と参りますか)
オオカミ親分一家と、警備に出なかった残りのキング一味は一緒になって、ひとつ目親分のねぐらを目指して歩き始めた。
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