グルドフ旅行記

原口源太郎

文字の大きさ
上 下
54 / 92
グルドフ旅行記・7 かわいい同行者

辺境の村ドーアン

しおりを挟む
 三人は順調にイトデト、ソノダガ、カーゴシスと進んでいった。
 途中何度も魔物に遭遇したが、いつものようにグルドフが魔物を倒した。いつもと違うのは、グルドフと魔物との戦いを傍観しているだけのポポンが、剣を抜いて魔物と戦おうとしていることだった。自分の子供より若い少女を、守ってやらなければならないという気持ちの表れらしかった。
 マットアンを出発して四日目の午後、グルドフたち一行はドーアンの村に到着した。
 高い柵に囲まれたドーアンの村の入り口に、兵士姿の男と、腰に剣を携えた民間人と、役人らしい男が立っていた。
「グルドフ殿、ポポン殿。お待ちしておりました。私はマットアン第三小隊長のマーレイです」
 マーレイはグルドフに手を差し伸べた。
「グルドフです。この度は王様の命により、さらわれた子供の捜索に参りました」
 グルドフはマーレイの手を握りしめた。
「ポポンです」
 ポポンも差し出されたマーレイの手を握りしめて握手をした。
「私はこの村の村長のシロタです。この度のこと、よろしくお願いします」
 剣を携えたシロタも、グルドフとポポンに手を差し出し握手をした。
「私はマゼラの役人、ジョンです」
 ジョンもグルドフたちと握手をした。
「こちらのお方は?」
 マーレイがセーラを見て言った。
「訳あって一緒に旅をすることになりましたセーラ殿です」
 グルドフが紹介した。
「セーラです。よろしくお願いします」
「よろしく」
 マーレイが手を差し伸べ、二人は握手をした。
 グルドフはその前に、セーラがマーレイに向かってそれとなく目で何かを訴えていたのをマーレイの表情から読み取っていたが、知らないフリをした。
「それではこれまでのことをご説明いたしますので、こちらへ」
 兵士たちが使っているらしい家に案内され、グルドフたちはそこの応接室のテーブルについた。
「この村で、赤子がさらわれたと王様のもとに連絡があったのは、約一カ月前であります。一歳の男の子が魔物に連れ去られ、二日後に一歳の女の子がさらわれました。王様の命令により私たちがマットアンを出て、この村に着く直前にも一人さらわれそうになりましたが、それは阻止しました。その時の様子は村長さんから」
 それまで話をしていた隊長のマーレイが、村長のシロタを見た。
「私たちの村では魔物から作物や家畜を守るために、剣術や弓術を修行している者がいます。二人の赤子は母親と外に出ている時に、空から舞い降りた魔物にさらわれました。それから私どもは王様に連絡すると同時に、弓の使える者を村の数か所に配置し、また同じことが起きないように備えておりました。二人目の赤子が連れ去られた三日後に、また巨大なハゲタカに似た魔物が上空から降りてきて、赤子を掴んで飛び立とうとしたところを、一人の村人が矢を放って魔物に命中させました。致命傷ではなかったらしく、魔物は赤子を置いたまま飛び去りました」
「では、その前に赤子をさらっていったのも同じ魔物でありましたかな?」
 グルドフはまだ若いドーアンの村長に尋ねた。
「はい、そうです。子供をさらわれた母親たちが見ています。その後、付近を捜したのですが、何の手がかりも見つけることができませんでした」
「兵隊さんたちも付近の捜索を?」
 グルドフは次にマーレイに尋ねた。
「私どもはこの村に到着した日から小隊を二つに分け、一つはこの村の警護に、もう一つは赤子の捜索に当たらせていますが、いまだに手がかりは見つかっていないところであります」
「ふむ。この付近の地図はありますかな?」
 グルドフが尋ねると、マーレイが壁に貼ってあった地図を外し、テーブルの上に広げた。
しおりを挟む

処理中です...