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渚の隣には、さっき店の入り口で将太に声をかけたヤクザの親分らしき男が座って、心配そうに渚を見ている。
渚が顔を上げて将太を見た。
「さくらさん」
渚の顔にぱっと笑みが浮かぶ。
渚の隣に座る親分がおいでおいでと手招きした。
将太は足がガクガクして歩けない。
両腕を男にガキッと掴まれて渚と親分の座るテーブルに連れていかれ、ソファに座らされた。
「さくら君か。君は元気がいいな。街中、大混乱だ」
親分が穏やかな口調で言った。
「は、はあ」
将太は店の中をそっと見まわす。怖そうなおじさんやお兄さんたちで一杯だ。
「いくらすばしこい君でも、もう逃げられないだろ」
そういうと親分は近くに立つ黒いスーツ姿の男に目配せをした。その男は拳銃を持っている。
近くに寄って来た男が拳銃を構える。
そして引き金を。
「わ!」
将太はソファから転げ落ちた。
「思ったよりも臆病な奴だな」
お決まりのギャグのように、親分が煙草をくわえていた。
バーン!
轟音が店内に響き渡った。
そして辺りは静まり返る。将太のすぐ横のソファに穴が開いてわずかに白い煙を出している。
「ばかやろう!」
親分が拳銃を持っていた男を張り飛ばす。
「すみません」
張り飛ばされてすっ飛んでいった男がすぐに親分の元に駆け寄り、懐から別の拳銃を取り出した。
引き金を引くとカチッと音がして銃身の先に火がともる。
親分はそれで煙草に火を付けた。
「すまんな、脅かすつもりじゃなかったんだが」
親分の言葉に、将太は目をぱちくりして恐々ソファに戻る。
「ところで、さくら君は何か勘違いをしているんじゃないかね」
「え?」
「例えば、俺は美少年が好きな変態親爺で、こいつが」
そう言いながら親分は渚の頭をポンポンと軽く叩く。
「恋人だとか。俺の恋人に手を上げたところを見られてしまったから、ただじゃ済まされない、ヤクザを怒らせてしまったからには殺されると思って逃げ回った」
「え、ええ」
将太はしおらしく頷く。
「その通りだ。だから死んでもらう」
「ええ?」
将太は青くなる。
「それは冗談だ。こいつは俺の息子だ」
そう言って親分はまた渚の頭をポンポンと軽く叩く。
「え?」
「そんな風には見えないかもしれないが。年を食ってからできた子だから、こいつのことが可愛くて、甘やかしてばかりいて、こんな風になってしまっても何もできなかった。本当は俺が厳しく言い聞かせなければならないとわかっていたが、それができなかった。さくら君が代わりに言ってくれたおかげで、こいつも目が覚めただろう」
そう言って親分は愛情のこもった眼で渚を見つめる。渚はいつの間にかすやすやと眠っていた。
「俺も目が覚めた。甘やかしてばかりいてはこいつのためにならない。それをわからせてくれたさくら君には感謝の言葉もない」
「そんな・・・・」
「何か礼をしたいと思ったが、代わりにあの騒ぎの後始末を引き受けよう。それでチャラだ」
「それではあまりにも・・・・」
「気にするな」
「でも」
「なら、たまにこいつに会いに来てやってくれ。さくら君のことが気に入ったようだ」
「はい」
「じゃ」
親分が席を立つ。
「さくら君も、こんな所でアルバイトなんかやめておけ」
そう言って将太の手に紙切れを握らせる。
ぞろぞろと屈強な男たちを従えて親分は店を出ていった。
将太が手を開いてみると、数枚の一万円札だった。
「これじゃ、渚に会いに行かないわけにはいかないじゃないか」
渚が顔を上げて将太を見た。
「さくらさん」
渚の顔にぱっと笑みが浮かぶ。
渚の隣に座る親分がおいでおいでと手招きした。
将太は足がガクガクして歩けない。
両腕を男にガキッと掴まれて渚と親分の座るテーブルに連れていかれ、ソファに座らされた。
「さくら君か。君は元気がいいな。街中、大混乱だ」
親分が穏やかな口調で言った。
「は、はあ」
将太は店の中をそっと見まわす。怖そうなおじさんやお兄さんたちで一杯だ。
「いくらすばしこい君でも、もう逃げられないだろ」
そういうと親分は近くに立つ黒いスーツ姿の男に目配せをした。その男は拳銃を持っている。
近くに寄って来た男が拳銃を構える。
そして引き金を。
「わ!」
将太はソファから転げ落ちた。
「思ったよりも臆病な奴だな」
お決まりのギャグのように、親分が煙草をくわえていた。
バーン!
轟音が店内に響き渡った。
そして辺りは静まり返る。将太のすぐ横のソファに穴が開いてわずかに白い煙を出している。
「ばかやろう!」
親分が拳銃を持っていた男を張り飛ばす。
「すみません」
張り飛ばされてすっ飛んでいった男がすぐに親分の元に駆け寄り、懐から別の拳銃を取り出した。
引き金を引くとカチッと音がして銃身の先に火がともる。
親分はそれで煙草に火を付けた。
「すまんな、脅かすつもりじゃなかったんだが」
親分の言葉に、将太は目をぱちくりして恐々ソファに戻る。
「ところで、さくら君は何か勘違いをしているんじゃないかね」
「え?」
「例えば、俺は美少年が好きな変態親爺で、こいつが」
そう言いながら親分は渚の頭をポンポンと軽く叩く。
「恋人だとか。俺の恋人に手を上げたところを見られてしまったから、ただじゃ済まされない、ヤクザを怒らせてしまったからには殺されると思って逃げ回った」
「え、ええ」
将太はしおらしく頷く。
「その通りだ。だから死んでもらう」
「ええ?」
将太は青くなる。
「それは冗談だ。こいつは俺の息子だ」
そう言って親分はまた渚の頭をポンポンと軽く叩く。
「え?」
「そんな風には見えないかもしれないが。年を食ってからできた子だから、こいつのことが可愛くて、甘やかしてばかりいて、こんな風になってしまっても何もできなかった。本当は俺が厳しく言い聞かせなければならないとわかっていたが、それができなかった。さくら君が代わりに言ってくれたおかげで、こいつも目が覚めただろう」
そう言って親分は愛情のこもった眼で渚を見つめる。渚はいつの間にかすやすやと眠っていた。
「俺も目が覚めた。甘やかしてばかりいてはこいつのためにならない。それをわからせてくれたさくら君には感謝の言葉もない」
「そんな・・・・」
「何か礼をしたいと思ったが、代わりにあの騒ぎの後始末を引き受けよう。それでチャラだ」
「それではあまりにも・・・・」
「気にするな」
「でも」
「なら、たまにこいつに会いに来てやってくれ。さくら君のことが気に入ったようだ」
「はい」
「じゃ」
親分が席を立つ。
「さくら君も、こんな所でアルバイトなんかやめておけ」
そう言って将太の手に紙切れを握らせる。
ぞろぞろと屈強な男たちを従えて親分は店を出ていった。
将太が手を開いてみると、数枚の一万円札だった。
「これじゃ、渚に会いに行かないわけにはいかないじゃないか」
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