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第二章
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美濃赤吹二万石の藩主、永野兼成は一部の家来からうつけの殿様とか、寝ぼけ殿様と呼ばれている。御殿の奥でいつもゴロゴロしているからである。
昼間からぐうぐういびきをかいて寝ていることはしょっちゅうで、うつらうつらとしたまま時を過ごしていたり、目をぱっちり開いているのに、ぼけーっとしたまま天井を眺めていたり、寝転がったまま書物をぱらぱらとめくっていたり・・・・
毎日御殿でゴロゴロしているのに飽きるのか、時には天守の最上階に上り、板の間の上に寝転がって一日を過ごすこともあるらしい。
そんな殿様の姿を見たことのある家臣たちは黙したままであるが、どこからともなく永野も兼成の代で終わりだというささやきが漏れ聞こえてきた。
また、思いついたように突然、木刀を手に取って庭に跳び下りると、取り巻きの家臣を呼び、剣術の稽古を始めるときがあった。幼い頃、剣術指南役に稽古を受けたが、その指南役がさじを投げてしまうほどであったから、剣術といえるかわからない。ただやみくもに木刀を振り回すだけである。ある程度、というより殿様の警護役の腕の立つ者が相手をしたが、デタラメ剣法のくせに木刀を振り回す動きは速く、打ち込むときの力も強いので、受け損なわないように必死になったから、ほんの少し相手をしただけで警護役の武士たちは心身ともにぐったりと疲れた。へたり込む数人をしり目に、自身は何事も無かったかのように木刀を放り出し、また奥の部屋に戻ってゴロゴロして時を過ごすのである。
もうひとつ。これまた突然思いついて早駈けをすると言い出し、馬に乗って城を飛び出していってしまう。共の者たちが大慌てで殿様を追いかけるが、殿様の馬は藩内一の名馬であるから、誰も追いつくことはできない。殿様の姿を見失い、家来たちが青い顔であちこち右往左往して捜していると、やっぱり何事も無かったかのようにひょっこりと帰ってくるのである。
持って生まれた血筋であろうか、いつもゴロゴロしているのに、どうしてそんな力や能力があるのか取り巻きの家来たちは不思議に思った。
昼間からぐうぐういびきをかいて寝ていることはしょっちゅうで、うつらうつらとしたまま時を過ごしていたり、目をぱっちり開いているのに、ぼけーっとしたまま天井を眺めていたり、寝転がったまま書物をぱらぱらとめくっていたり・・・・
毎日御殿でゴロゴロしているのに飽きるのか、時には天守の最上階に上り、板の間の上に寝転がって一日を過ごすこともあるらしい。
そんな殿様の姿を見たことのある家臣たちは黙したままであるが、どこからともなく永野も兼成の代で終わりだというささやきが漏れ聞こえてきた。
また、思いついたように突然、木刀を手に取って庭に跳び下りると、取り巻きの家臣を呼び、剣術の稽古を始めるときがあった。幼い頃、剣術指南役に稽古を受けたが、その指南役がさじを投げてしまうほどであったから、剣術といえるかわからない。ただやみくもに木刀を振り回すだけである。ある程度、というより殿様の警護役の腕の立つ者が相手をしたが、デタラメ剣法のくせに木刀を振り回す動きは速く、打ち込むときの力も強いので、受け損なわないように必死になったから、ほんの少し相手をしただけで警護役の武士たちは心身ともにぐったりと疲れた。へたり込む数人をしり目に、自身は何事も無かったかのように木刀を放り出し、また奥の部屋に戻ってゴロゴロして時を過ごすのである。
もうひとつ。これまた突然思いついて早駈けをすると言い出し、馬に乗って城を飛び出していってしまう。共の者たちが大慌てで殿様を追いかけるが、殿様の馬は藩内一の名馬であるから、誰も追いつくことはできない。殿様の姿を見失い、家来たちが青い顔であちこち右往左往して捜していると、やっぱり何事も無かったかのようにひょっこりと帰ってくるのである。
持って生まれた血筋であろうか、いつもゴロゴロしているのに、どうしてそんな力や能力があるのか取り巻きの家来たちは不思議に思った。
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