トノサマニンジャ 外伝 『剣客 原口源左衛門』

原口源太郎

文字の大きさ
12 / 26
第三章

しおりを挟む
 翌日、源左衛門は与助の家を訪れた。
 もう蓄えがほとんどなく、どんな仕事でもいいから働き口はないかと尋ねると、与助はしばらく考えてから答えた。
「一つあるにはあるんだがね。ただ原口さんには合わないかと思っていたんだ。しかし、それほど困っているようなら話をしてみようか。仕事は小料理屋での雑用。表向きはね」
「料理屋?」
「酒と料理を売っている店だ。昔、川汲山の華谷寺の門前で茶屋をやっていたおやじが城下に下りてきて店を開いた。初めは茶と菓子を出していたんだが、そのうちに酒と簡単な料理を出すようになったら評判になって、今じゃ夜中まで店を開いている」
「ほう」
 源左衛門は赤吹よりも大きな尾張の城下町に一年近く暮らしていたが、そのような店は知らなかった。
「酒を出すようになったら、酔っ払いがたびたび問題を起こすので、前は腕っぷしの強い町人を店に置いていたんだが、そいつ自身が色々と問題を起こした挙句、ぷいといなくなっちまった。だから今度は品のいいお侍さんでいい人はいないかと・・・・丁度あんたみたいな」
「つまりその店の用心棒ということですか?」
「まあ、そういうこと。ただ、そこで刀を抜いたりしたら、仕官の話は難しくなるが」
「わかっています」
「それでもいいか?」
「ええ。他に働き口の当てがないのなら。お願いします」
「それでは早速今晩、行ってみよう」
「はい。色々とお世話になって申し訳ありません」
「なに、人の世話を焼くのがおらの仕事みたいなもんだ。気にすることはないさ」
 源左衛門は何度も礼を言って与助の家を出た。

 長屋に帰ってくると、奥の部屋から雪乃が出てきて、源左衛門の二本の刀を受け取った。
 源左衛門は奥の部屋に行き、畳の上に座った。後ろからついてきた雪乃が物入れの上に二本の刀を並べて置いた。雪乃はそこで縫物をしていたようであった。
 源左衛門は雪乃が再び縫物をするのを待った。
「今夜出かけてくる。上手くいくと明日から仕事に就けるかもしれない」
 雪乃が針を動かすのを見ながら源左衛門は言った。
「そうですか」
 雪乃は穏やかに言った。
「それからこれは」
 そう言って懐から金を出した。
「世話になっている山内殿が当面の分として貸してくださった。仕官が決まったら返してくれればいいとのことだ」
「まあ、こんなにたくさん」
「いずれ何か礼をしないと」
「はい」
 少し涙ぐみながら雪乃は頷いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

処理中です...