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第二章
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森の中の大木に一枚の厚い板が立てかけてある。そこに描かれた的の中心に手裏剣が音を立てて突き刺さった。
少し離れたところで、背の高い少年が得意そうな表情で、もう一人の小柄な少年を見る。
「フン。よし、見ていろよ」
小柄な少年が言って、手裏剣を投げる構えを作り、慎重に狙いを定めた。
最初に手裏剣を的に当てた背の高い少年が勇である。勇に対抗意識を燃やして慎重に狙いを定めている少年は空。
空の放った手裏剣が、的に刺さっている勇の手裏剣を撥ね飛ばした。空の手裏剣はそのまま板に刺さり、一瞬小さく震えた。
どんなもんだい。そんな顔で空は勇を見る。
「たまたまマグレで当たるってこともある」
勇はすました顔で言った。
「マグレなんかじゃないやい」
「じゃ、もう一度同じように当ててみろよ」
「よーし」
空は手裏剣を手に持ち、もう一度慎重に狙いを定める。
そして投げた。
キン!
的に刺さっていた手裏剣を、再び空の投げた手裏剣が撥ね飛ばした。
その時、勇が素早く動いた。
空の投げた手裏剣に撥ね飛ばされて宙を舞う手裏剣が、再びキンと音を立てて、別の方向へと飛んだ。
空が勇を見る。勇は得意げな表情で空を見た。
「チェ、お前にはかなわねえや」
二人は投げた手裏剣を回収するために歩き出した。
勇も空も村の生まれである。
同い年の二人は生まれた時からといっていいほどの頃から一緒に、忍びになるためのあらゆることを行ってきた。空は気さくな性格でありながら、周りのことがよくわかり、何事にも気が付く性格であった。ただ、物事に慎重すぎるきらいがあり、それがいつも勇の心に引っ掛かっていた。
空が板に刺さった手裏剣に手を伸ばした時、その手のほんのわずか先にカッと音を立てて手裏剣が突き刺さった。
空と勇が咄嗟に身を低くして振り返る。
木の陰から少女が姿を現した。勇や空よりも幼い。まだ子供である。
「何やってんだよ。危ないだろ」
慌てて手を引っ込めた空が言った。
「私だって投げるの、上手いんだよ」
少女がにこやかに微笑みながら言った。
「女が手裏剣を上手く扱えたって仕方がないだろ」
そんな空の言葉を聞いて、少女はぷっと頬を膨らませた。
「もう休み時間は終わりだよ」
少女の言葉を聞くと、勇と空の顔付きが変わり、素早くその場から姿を消した。
少女の名前は楓。勇や空と同じようにこの村で生まれ育った。隣の家が勇の家であったこともあり、物心付く頃から近くに勇がいる時はその後を追いかけてばかりいた。
勇は物を投げることが得意であった。様々な手裏剣を様々な投げ方で投げたし、身の回りにある石礫を始め、色々な物を色々な方法で投げることができた。棒切れひとつにしても、重い方を先にして重心を持ち、体全体を使って遠くまで投げたり、手首のスナップだけで投げたり、棒の後端に指をかけて投げたり、棒の端を握ってくるくると回転させるようにして投げたり・・・・
そんな勇の様子を見ては楓も同じことをしようとして真似ばかりしてきたから、自然、手裏剣の腕前も人並み以上といえるほどになっていた。ただ、甲賀の流れを汲む赤吹の忍びに、女はいない。くノ一は存在しないのである。村で生まれた女は生涯を村で過ごし、その外に出ることはなかった。
少し離れたところで、背の高い少年が得意そうな表情で、もう一人の小柄な少年を見る。
「フン。よし、見ていろよ」
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最初に手裏剣を的に当てた背の高い少年が勇である。勇に対抗意識を燃やして慎重に狙いを定めている少年は空。
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そして投げた。
キン!
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空が勇を見る。勇は得意げな表情で空を見た。
「チェ、お前にはかなわねえや」
二人は投げた手裏剣を回収するために歩き出した。
勇も空も村の生まれである。
同い年の二人は生まれた時からといっていいほどの頃から一緒に、忍びになるためのあらゆることを行ってきた。空は気さくな性格でありながら、周りのことがよくわかり、何事にも気が付く性格であった。ただ、物事に慎重すぎるきらいがあり、それがいつも勇の心に引っ掛かっていた。
空が板に刺さった手裏剣に手を伸ばした時、その手のほんのわずか先にカッと音を立てて手裏剣が突き刺さった。
空と勇が咄嗟に身を低くして振り返る。
木の陰から少女が姿を現した。勇や空よりも幼い。まだ子供である。
「何やってんだよ。危ないだろ」
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