私はあなたに恋をしたの?

原口源太郎

文字の大きさ
2 / 24

しおりを挟む
「ふーん、そうか。変な男は相手にするなよ」
 雪美の父、森口佳一が愉快そうに言った。
 その日は珍しく佳一が早く帰宅したので、久しぶりに親子三人で食卓を囲んでいる。
 雪美の父は大手金属加工機メーカーの重役で、朝の出勤が遅いが夜の帰宅も遅い。
「あなた、何、その言い方」
 妻の友里恵が口を挟んだ。
「いいじゃないか、雪美だって、もう大人だ」
「まだ17になったばかりです」
「17といえばもう立派な大人だ。彼氏はいるのか?」
「やめてよ。」
 雪美が迷惑そうに言う。
「あなた。雪美はまだ子供。そんなのはまだ先。大学に行って、社会に出て、世間を学んでから結婚すればいいの」
「お前、何十年前の話をしてるんだ? 女がインテリぶるのは可愛くない。世間を知らなくても、相手の男が立派ならそれでいいんだ」
「あなたこそ何十年前の話をしているの?」
「ちょっと、ちょっと。私の将来は私が考えるし、私が決める。そうでしょ?」
「それはそうだが、若いうちからチャラチャラして遊び歩いているような男は駄目だ。若いうちは真面目に仕事に取り組んで、苦労したほうがいい」
「あら、あなたはどうだったの?」
「お、俺は真面目に仕事一筋・・・・」
「えー!」
「うるさい!」
 うちの親もガキなんだから。
 雪美は愉快そうにサラダの野菜を口に放り込んだ。

 土曜日と日曜日はいつもながらあっという間に過ぎて、月曜日の朝になった。
 白いシャツとセーラー服の群れの中を、雪美と夏香、優樹菜の三人も楽しげに話をしながら歩いていく。
「ねえ、雪美」
 夏香が目で合図する。
 雪美は校門の門柱に寄りかかる俊輔と目が合った。
「おはよう」
 小さくつぶやくように言うと、雪美は視線を落としたまま校門を通り過ぎた。
「おはよー」
 夏香と優樹菜の声など耳に入らないかのように俊輔は無言で雪美を見送った。

 やがて一週間の最初の授業が始まった。
「ねえ、ねえ」
 雪美の背中を後ろの席の夏香が突いてくる。
「何?」
 雪美は声を殺して応えた。
「どう思う、さっきの俊輔君」
 夏香も同じように小声で話す。
「どうって?」
「私達なんか目に入らないって感じで雪美のことばかり見てたよ」
「そう?」
「そうって、やっぱり何かあったの?」
「何もない」
「はい、森口、問一の答えは?」
 不意に名前を呼ばれて、雪美は座ったままパッと気を付けをした。
「はい」
 小さな声で返事をして席を立つ。
「えーと。えーと・・・・。えー・・・・」
「123ページ」
 後ろから夏香が助け舟を出した。
 慌てて教科書の次のページをめくる。
「そう、答えは『えーと、えーと、えー』だ。よくできた、なんてわけがないだろ。無駄なおしゃべりはしない」
 数学の杉山が冗談だか本気だかわからない言葉を発して雪美をたしなめた。
「はい」
 また小さく返事をして雪美は座った。
「ごめん」
 夏香が小声で後ろから詫びを入れてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

処理中です...