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勇者ダルガム
冒険に出る者・2
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翌日、勇者ダルガムが登城し、王様に謁見した。
「勇者ダルガム、今回はそなたに冒険をしてもらうつもりだが、いかがかな?」
「はい・・・・」
「少々困難な冒険になるかもしれないが、そなたも勇者となった身。父の助けなしに行うことができるであろう」
「はい・・・・」
「どうも返事が乗り気でないように聞こえるが」
「いえ、そんなことは・・・・」
「何か言いたいことがあるのなら、はっきり申せ」
「・・・・」
「勇者となってはじめての冒険となれば、喜び勇んで出かけると思うのだが、なぜそなたは浮かない顔をしておるのだ?」
「いえ、あの、父もまだ勇者でいるのに、私に冒険に行けと命じられるのは大変に名誉なことだと思います。ですが・・・・」
そこで勇者ダルガムは言いよどんだ。
「気にするな。言いたいことがあるのならはっきり申せ」
「ダバイン王国のことは王様もご存知かと思います。ダバイン王国の民は苦しんでいます。国外へ逃げ出した者もいるそうですが、ほとんどの者は魔物の現れる町の外へ出て旅することもできずにいると聞きます。何かあった時に、私はダバイン王国に向かい、困っている人々を助けたいと思います」
「ダバインは強いぞ。魔物たちよりはるかに強い。この国の王として、そんな危険なところに若き勇者を送り出したくはないのだが」
「私はずっと勇者ダバインにあこがれて修行をしてきました。まだ見ぬ人ではありますが、一度は会ってみたい。できれば剣を交えてみたい。それが私の願いであります。私の剣の腕が未熟で、もしダバインに討たれようとも・・・・」
「そこまでの覚悟ができているのなら仕方がない。実は昨日、そなたの父も同じことを言った。他国のこととはいえ、民のことを思うのは勇者のあかし。今日は家に帰り、父のキルダムと話をし、どちらか冒険に行くと決まった者が明日またここに来るようにせよ。また、残った者が、ダバイン王国に行くことになっても、私は止めはせぬ」
「はい、ありがとうございます」
勇者ダルガムは頭を下げて王様の前から下がろうとした。
「ダルガム、決して命を粗末にするでないぞ」
王様は、ダルガムが町に残ると見越した様子で、その背中に声をかけた。
「はい」
返事をして、ダルガムは去っていった。
翌日、王様のもとに赴き、冒険の詳細を聞いたのは父の勇者キルガムだった。
勇者キルガムは剣術もこなす弓使いと、まだ見習いにもなっていない勇者ダルガムの弟タクダムと、見習い中の魔法使いの四人で旅に出かけた。
武道家、魔法使い、見習い弓使いはダルガムが旅に出かけるときのために町に残った。
勇者ダルガムは、ダバインと戦うことになるかもしれないと、今まで以上に激しい稽古を行うようになった。
「勇者ダルガム、今回はそなたに冒険をしてもらうつもりだが、いかがかな?」
「はい・・・・」
「少々困難な冒険になるかもしれないが、そなたも勇者となった身。父の助けなしに行うことができるであろう」
「はい・・・・」
「どうも返事が乗り気でないように聞こえるが」
「いえ、そんなことは・・・・」
「何か言いたいことがあるのなら、はっきり申せ」
「・・・・」
「勇者となってはじめての冒険となれば、喜び勇んで出かけると思うのだが、なぜそなたは浮かない顔をしておるのだ?」
「いえ、あの、父もまだ勇者でいるのに、私に冒険に行けと命じられるのは大変に名誉なことだと思います。ですが・・・・」
そこで勇者ダルガムは言いよどんだ。
「気にするな。言いたいことがあるのならはっきり申せ」
「ダバイン王国のことは王様もご存知かと思います。ダバイン王国の民は苦しんでいます。国外へ逃げ出した者もいるそうですが、ほとんどの者は魔物の現れる町の外へ出て旅することもできずにいると聞きます。何かあった時に、私はダバイン王国に向かい、困っている人々を助けたいと思います」
「ダバインは強いぞ。魔物たちよりはるかに強い。この国の王として、そんな危険なところに若き勇者を送り出したくはないのだが」
「私はずっと勇者ダバインにあこがれて修行をしてきました。まだ見ぬ人ではありますが、一度は会ってみたい。できれば剣を交えてみたい。それが私の願いであります。私の剣の腕が未熟で、もしダバインに討たれようとも・・・・」
「そこまでの覚悟ができているのなら仕方がない。実は昨日、そなたの父も同じことを言った。他国のこととはいえ、民のことを思うのは勇者のあかし。今日は家に帰り、父のキルダムと話をし、どちらか冒険に行くと決まった者が明日またここに来るようにせよ。また、残った者が、ダバイン王国に行くことになっても、私は止めはせぬ」
「はい、ありがとうございます」
勇者ダルガムは頭を下げて王様の前から下がろうとした。
「ダルガム、決して命を粗末にするでないぞ」
王様は、ダルガムが町に残ると見越した様子で、その背中に声をかけた。
「はい」
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勇者ダルガムは、ダバインと戦うことになるかもしれないと、今まで以上に激しい稽古を行うようになった。
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