異世界転性 ~竜の血脈~

草野猫彦

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第2話 お母様は魔女

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 レイアナ・クリストール。愛称はリア。それが今生での彼女の名前だった。

 そう、彼女。
 ひたすら己の肉体と技を鍛え続けた40過ぎの硬派な男は、なんとも愛らしい幼女に生まれ変わっていたのだった。

(確かに…性別がどうなるかは聞いてなかったな…。ひょっとしたらギフトで決められたのかな…)
 死んだと言われた時も、異世界に転生すると言われた時も動揺しなかったが、女に生まれ変わったのは参った。
 何しろ、長年付き添った息子が消滅しているのである…。
 気づいた時には落ち込んだ。眠って食べて排泄して、また落ち込んだ。

 世界史を紐解いても、高名な女の戦士などほとんどいない。
 日本では源平合戦の巴御前が有名か。

 この世界は剣と魔法の世界と言われていたからには、戦いの多い世界なのだろう。
 そこで身体的に不利な女として、武の道を歩むというのは難しいのではないだろうか。

 それはともかく…現状を整理する。

 まず、母親の名前はアガサ。職業は魔法屋だ。
 黒髪黒目。これはリアと同じであるらしい。娘の贔屓目かもしれないが、相当の美女である。
 店舗兼自宅の持ち家で、魔法の薬を主に販売している。他に魔法による治療や占い。
 顧客との会話を聞く限り、相当腕はいいらしい。

 父親はいない。所謂シングルマザーらしい。
 話題にすら上らない。

 そして同居人がもう一人。
 名前はフェイ。10代半ばの少女だ。髪の色は地球にはない青。
 アガサの店の従業員兼弟子であり、リアの世話もしてくれる。

 リアの寝ている部屋からは、その程度の情報しか分からない。
 とりあえず寝て、母乳を飲んで、排泄して、泣いて、時々湯で洗われて、日々が過ぎていく。
 前世の記憶があっても、赤ん坊の体では何も出来ない。そもそも睡眠欲が強くて、一日の多くを眠って過ごしている。

 転機は生後半年に訪れた。

「う~ん、やっぱりおかしいわね」
 唇に指を当てて、アガサはリアを見つめる。場所は店のカウンターである。
「どうしたんですか店長」
 棚の掃除をしながら問いかけるフェイ。普段アガサを呼ぶときは、店長と呼称している。
「鑑定の魔法を使っても、ステータスが分からないのよね」
「へえ、ひょっとして、そういうギフトを持ってるんじゃないですか?」
 ギフトは珍しいものだが、フェイ自身も持っている。アガサのギフトの前にはそれほどの価値もないように思えるが。
 他人から能力を見られないというのは、場合によっては大変便利なものではないだろうか。

 一方それを聞いたリアの方は、自分の迂闊さに頭を抱えていた。
 生まれてから今まで、一度も自分の能力を確認していなかったのである。

(自己確認…考えるだけでいいのか?)
 目の前に半透明の画面が浮かぶ。能力、技能、祝福とある。ギフトというからには祝福だろう。

『龍の血脈』『自己確認』これはいい。これはいいのだが…。

『女神の加護』
『戦神の加護』

(なんだこりゃ?)
 選んだギフトは二つだけだったはずだ。しかし明らかに二つ、覚えのない表記がある。

(女神の加護…。そんなのもらったか? それに戦神の加護って…)
 まさかあの、いかにもインドアな女神様が、実は戦の神様でもあったのか。
 そんなことを考えながら、リアは女神の加護に注目する。

『女神の加護』
 守備力に若干の補正。知力に若干の補正。

 女神とのやり取りを思い出してみると、多少の好意を持っていてくれたような気はする。
 どれだけの効果があるのかは知らないが、ありがたいことはありがたい。
(問題はもう一つだけど…)

『戦神の加護』
 指揮下の兵の士気を上昇させる。
 指揮下の兵の能力に大幅の補正。
 流れ矢、流れ弾に当たらない。
 戦場の状況を俯瞰視する。
 自軍の有利な天候になる。
 不利な状況化でも味方の士気が低下しない。etc

(なんぞこれ)
 いかにも戦争をしてくださいと言わんばかりの効果である。しかも、指揮統率する立場で。

 女の戦士は珍しいが、女の指揮官というのはもっと珍しいのではないだろうか。
 西洋のジャンヌ・ダルクのような存在にでもなれというのだろうか。

「それにしても、魔力自体は高いんですよね?」
 アガサとフェイの会話は続いていた。
「そうね。既に私と同じぐらいだし、暴走もせずに安定している。かなりの素質と言っていいんでしょうね」

 二人はそんな会話をしている。ちなみに『龍の血脈』の中に『看破耐性』というものがあり、これが鑑定の魔法を妨げているらしい。

「もうすぐまた千年紀も終わりだし…魔神の復活も近いはずよね」
 何やら不穏なことを呟いたアガサは、キッと顔を上げて宣言した。

「決めたわ! この子を超一流の魔法使いにして、勇者の仲間にするのよ!」



 どうしてそうなった。
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