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第17話 はじめての迷宮探索
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巨大な門を開け、長い階段を降りると、天井と壁面が青白く発光する石の通路に降り立った。正面には、大きな金属製の鏡のようなものがある。
「これに触って呪文を唱えると、迷宮の中に入ります。準備はいいですか?」
なるほど、6人と制限が付いていたのはこれがあるからか。
各自が頷いて、鏡に触れる。
「では行きます。迷宮よ、探索者の前にその門を開け」
触れた所から波が広がるようにして、体を他の場所へと転移させる。
気が付けば、同じような通路でありながら、左右に分かれた場所に立っていた。背後を見ても、鏡はない。
「これ、帰るときはどうするんですか?」
恐々とルルーが尋ねる。彼女が言わなければ、誰も気にしなかったかもしれない。
「迷宮の外周に、いくつか帰還用の鏡があります。ここからなら…少し歩けばいいぐらいの距離ですね」
マールは3層までの地図をほぼ記憶していた。
「どうします? とりあえず迷宮に慣れるためにモンスターを探しますか? 1層ならほとんど罠もないですし、あたし一人でも倒せるモンスターが多いですよ」
ふむ、とリアは腕組みして考え込む。
目的は最下層だ。慣れる以上に、ここにとどまる意味はない。
「とりあえず隊列をどうするか決めようよ」
相変わらずわくわくとした口調でサージが言う。確かにそれは重要かもしれない。
これに関してはリアも腹案があった。
「先頭を私とマール、それからカルロス、ルルー、サージの順で、最後尾をギグでどうだろう?」
「お嬢を先頭にするんですか?」
カルロスが難色を示したが、これにはちゃんと理由がある。
「まずギグが一番後ろなのは、後ろから襲われたときに対応するためだ。マールには案内と、罠に気をつけてもらわないといけない。それに並んで私が進むのは、敵に気付きやすいからだな。魔法使いが真ん中なのは当然で、いざ戦闘となったらマールとカルロスが位置を変わる。問題があるか?」
理路整然としていて、とりあえずそれで行こうということになった。
なにしろ死なない迷宮なのだから、一度ぐらいは死んでみてもいい経験だろう。
「そういえばサージ、時空魔法で地上に転移とか出来ないのか?」
たとえばリレミトみたいに、とは言わなかった。
「残念ながら。転移はおいら一人で、見える範囲にしか出来ないよ。しかもすごく魔力使うから、戦いでも使いづらいね」
「あと、2層に行くにはどれぐらいの時間がかかるんだ?」
「普通に注意しながら行けば半日くらいです。急げばその半分ぐらいでしょうか」
「よし、じゃあ雑魚相手にレベル調整もかねて、注意しながら行くか」
一行は隊列を組み進み始めた。
通路の幅は、大人が5人は優に並べるほどもある。時折遠くから剣戟の音が聞こえてくるのは、他の探索者のものだろう。
「中に入ってから合流出来なくもないんじゃないか?」
「そうですね。でも広さを考えると、難しいと思います。鏡で転移する場所もランダムですし」
一応下層に潜れば潜るほど、迷宮の面積は狭くなるらしいが、そこまで行く実力があるパーティーを、いくつも組むのが大変である。
やがて、通路の奥から這い寄る気配があった。
リアとマールが素早く気付く。
「サージの魔法で動きを止めて、マールの矢でとどめをさせ。しばらくはこれでレベルを上げよう」
このレベルというものも、ゲーム的なものであるのだが、日常生活を送っていても、普通に上がっていく。
もっとも特別に練習や訓練を積むことによって経験値は多く入り、一番手っ取り早いのがモンスターを倒すことである。
モンスターを倒したときにその魔力の元、魔素とも言うべきものが周囲の人間に吸収され、その力を強化すると言われているのだが、あくまでも経験則である。
体長1メートルほどのオオトカゲや蛇、人間大の昆虫などが、主なモンスターだった。ゴブリンなどはいない。
あれらは一応、亜人の端くれにあたるものであり、殺しても魔石が採れないので、それはいいのだが。
「宝箱発見。どうします?」
壁がかすかに窪んで、そこに確かに宝箱が置かれていた。
わきわきと手を動かしながらマールが尋ねる。当然自分が開けるものだと思っているのだろうが、リアの判断は違った。
「ちょっとやってみるか」
「え、鍵がかかってるし、罠もあるかもしれないので危険ですけど」
「そうだな。皆は少しさがっていろ」
宝箱の前に立ったリアは、腰の刀に手をやって、沈み込むようにして抜き放った。
宝箱の金属部分が切断される。開けると、ぶわりと煙が舞い上がる。
「毒です! 解毒の魔法を!」
慌ててマールは叫ぶが、ルルーは平然と止めた。
「大丈夫、リアは毒耐性持ってるから」
「あ~、舌がぴりぴりする」
煙の中から現れたリアは、確かになんらの異常も見られなかった。手には魔法薬らしき小瓶を持っている。
「サージ、これ何?」
「魔法薬だね。魔力を少量回復するってさ」
こういう時、スキル鑑定は便利だ。魔法だと魔力を使ってしまうので、案外使いづらい。
それからも宝箱が出るたびに、同じような物理解除をしていった。
途中でマールが己の存在意義に疑問を持ったりしたが、ルルーが慰めていた。
「リアはアレだから、仕方ないの」
罠も同じような感じで突破した。
妖精の瞳でマールが罠の箇所を見つけると、リアがわざとそこを踏んづける。
槍が飛び出したり、矢が飛んできたり、落とし穴に落ちたりとしたが、全て無傷。
落とし穴には槍衾があったのだ、手で握り締めて体に届かせなかった。
「槍はいまいちだけど、投擲には使えるかな。矢はそのまま予備にすればいいし」
そして一時間ほど歩いたところで、こんこんと壁を叩いて曰く。
「なあ、これを壊して距離を短縮したら駄目なのか?」
迷宮の概念に真っ向から抵触するようなことを言った。
「壊すって、ハンマーか何かで?」
いいかげん呆れたようなマールに対して、リアは首を振った。
「いや、普通にこう」
拳で殴りつけると、石壁がガラガラと崩れた。
「うん、たいした強度じゃないな」
「だ、駄目です! 迷宮の通路を壊すと、モンスターが集まってくるんです! 早く逃げないと――」
慌てるマールの肩に手を置いて、リアは穏やかに言った。
「いいじゃないか。レベルを上げよう。前後だけになった通路に出るぞ」
マールの常識から言って、それは無茶苦茶だった。
迷宮とはもっと、慎重に、厳粛に、こそこそと罠をかいくぐってお宝に一喜一憂するものであったはずだった。
しかしリアは違った。
「こちらからくるモンスターは全部私が片付けるから、そちらはよろしくな。ああ、マールは私が半殺しにしたやつの後始末を頼む」
直線の通路で、二手に分かれる。リアの少し後ろにマール。20メートルほど離れて、他の4人が隊列を組む。
やがて第一陣がやってきた。オオトカゲが20匹あまりか。
リアは踊るようにその手足を断ち、マールが止めをさしやすいようにする。
反対側でも盾を上手く使うカルロスを中心に、ギグとサージの火力が敵を圧倒していた。
たまにルルーも攻撃魔法を使う。最初は治癒のために待機していたのだが、それよりも敵を減らすことを優先しだした。
爬虫類系と昆虫系の敵を100匹以上も殺して、ようやく波が引いてくれた。
リア以外は肩で息をしている。
「ね、姉ちゃん、次からはもうちょっと考えて戦おうよ…」
サージも時空魔法以外に、効率のいい火魔法の攻撃を行っていたが、さすがにしんどかったらしい。
「レベルは上がってるか?」
「うん、おいらとマールは3、ルルーたちは2上がってる」
とりえず魔石を回収し、昆虫の刃などの素材を剥ぎ取り、場所を移動して一行は回復に努めた。
リアは刀を拭っているが、見事に刃の欠けはない。
「強さはともかく、数が問題だよ。ゲームみたいに倒したら消えてくれるわけじゃないんだし」
「そうだな。いつももっと広い場所で戦っていたから、その点の配慮は足らなかった」
オークの軍団と戦ったときは、集落の広場だった。
「広いところで戦っていたら、むしろ数に押しつぶされてますよ」
カルロスは疲れたように言った。事実疲れていたのだろう。盾を使って敵が後衛の魔法使いに行かないようにしていたのは、上手い戦い方だった。
「じゃあ1層は距離を大幅に短縮できるところ以外は道なりで行こう」
「その前に、いったん食事にしましょう」
ルルーの言葉に全員が頷いた。
「げ、モンスターを食べるの?」
サージが顔をしかめるが、オオトカゲなど普通の爬虫類と変わらないだろう。
「でも、携帯食があるのにさあ…」
わざわざそれを収納してきたのはサージである。
「もちろん、それもいい。だがいざという時のために、そちらは残しておいて、目の前の物を食べよう」
「ほうっておいても、スライムが処分してくれるはずですけど…」
某国民的RPGで有名になった雑魚モンスタースライムだが、実際は恐ろしい敵である。
粘体であるので音もなく忍び寄り、その全身で獲物に絡み付いて、消化を行う。
特に詠唱でしか魔法を使えない魔法使いなどは、顔に絡みつかれたらそれだけで死亡確定である。
「ん、トカゲは美味いな。こちらの虫も…うん、海老みたいな食感だな。塩だけでけっこういけるぞ」
毒の部分があれば、舌にぴりぴりときて分かるはずだ。毒耐性、便利である。
マールをそれほど抵抗なく虫に手を出した。前のパーティーではよくあったことらしい。
意外なことにルルーも虫には抵抗がない。故郷ではよく食べていたそうな。
前世の記憶が強いサージと都市育ちのカルロスはやはり嫌悪感があったが、一口食べてみたらあとは大丈夫だった。
「しかし殺しすぎたな。スライム君には頑張ってもらおう」
魔法で出した水で喉を潤し、一行は迷宮の奥へと進む。
予定通り、短縮できる通路は壁を壊して短縮した。
もちろんまたモンスターが群れとなって襲ってきたのだが、同じように処分していく。慣れがある分、その速度は上がっている。
他の探索者にも出会うことなく、やがて当初の予定よりもずっと早く、1層の中心へとやってきた。
同じような素材で出来た、広い部屋だった。道は一本。対面の壁に鏡があり、その前に階層の守護者が待ち構えていた。
「骸骨剣士、レベル35だってさ」
サージがお決まりの鑑定をしてくれる。このまま戦っても楽勝だろう。
「剣だと戦いづらそうですね」
カルロスが顔をしかめる。剣と盾だけを構えた骸骨は、確かに彼とは相性が悪そうだった。
「おいらがやろうか? 遠距離攻撃もないみたいだし、一発で片付くよ」
時空魔法の空間断裂系の攻撃は、魔法の抵抗がなければ一撃で相手を殺す。
しかしこの骸骨剣士は、魔法で作られたもので、多少の抵抗はしてくるだろう。
「相性がいいのはギグだろう。ちょっと軽く殴ってきてくれ。念のため、ルルーは治癒魔法を準備」
「おう」
意外と言えば意外だが、少し苦戦した。
ギグの力任せの戦鎚の攻撃を、骸骨剣士はかわし、受け止め、受け流したのだ。
それもサージが魔法で片足を吹き飛ばすまでの健闘だったが。
「魔石、ゲット~」
並みの魔物とはさすがに大きさの違う魔石である。色も赤黒い。
「すごいです。皆さん、強いです」
マールは感心しているが、まだまだ先は長い。
一行は鏡に手を当てると、2層へと転移した。
「これに触って呪文を唱えると、迷宮の中に入ります。準備はいいですか?」
なるほど、6人と制限が付いていたのはこれがあるからか。
各自が頷いて、鏡に触れる。
「では行きます。迷宮よ、探索者の前にその門を開け」
触れた所から波が広がるようにして、体を他の場所へと転移させる。
気が付けば、同じような通路でありながら、左右に分かれた場所に立っていた。背後を見ても、鏡はない。
「これ、帰るときはどうするんですか?」
恐々とルルーが尋ねる。彼女が言わなければ、誰も気にしなかったかもしれない。
「迷宮の外周に、いくつか帰還用の鏡があります。ここからなら…少し歩けばいいぐらいの距離ですね」
マールは3層までの地図をほぼ記憶していた。
「どうします? とりあえず迷宮に慣れるためにモンスターを探しますか? 1層ならほとんど罠もないですし、あたし一人でも倒せるモンスターが多いですよ」
ふむ、とリアは腕組みして考え込む。
目的は最下層だ。慣れる以上に、ここにとどまる意味はない。
「とりあえず隊列をどうするか決めようよ」
相変わらずわくわくとした口調でサージが言う。確かにそれは重要かもしれない。
これに関してはリアも腹案があった。
「先頭を私とマール、それからカルロス、ルルー、サージの順で、最後尾をギグでどうだろう?」
「お嬢を先頭にするんですか?」
カルロスが難色を示したが、これにはちゃんと理由がある。
「まずギグが一番後ろなのは、後ろから襲われたときに対応するためだ。マールには案内と、罠に気をつけてもらわないといけない。それに並んで私が進むのは、敵に気付きやすいからだな。魔法使いが真ん中なのは当然で、いざ戦闘となったらマールとカルロスが位置を変わる。問題があるか?」
理路整然としていて、とりあえずそれで行こうということになった。
なにしろ死なない迷宮なのだから、一度ぐらいは死んでみてもいい経験だろう。
「そういえばサージ、時空魔法で地上に転移とか出来ないのか?」
たとえばリレミトみたいに、とは言わなかった。
「残念ながら。転移はおいら一人で、見える範囲にしか出来ないよ。しかもすごく魔力使うから、戦いでも使いづらいね」
「あと、2層に行くにはどれぐらいの時間がかかるんだ?」
「普通に注意しながら行けば半日くらいです。急げばその半分ぐらいでしょうか」
「よし、じゃあ雑魚相手にレベル調整もかねて、注意しながら行くか」
一行は隊列を組み進み始めた。
通路の幅は、大人が5人は優に並べるほどもある。時折遠くから剣戟の音が聞こえてくるのは、他の探索者のものだろう。
「中に入ってから合流出来なくもないんじゃないか?」
「そうですね。でも広さを考えると、難しいと思います。鏡で転移する場所もランダムですし」
一応下層に潜れば潜るほど、迷宮の面積は狭くなるらしいが、そこまで行く実力があるパーティーを、いくつも組むのが大変である。
やがて、通路の奥から這い寄る気配があった。
リアとマールが素早く気付く。
「サージの魔法で動きを止めて、マールの矢でとどめをさせ。しばらくはこれでレベルを上げよう」
このレベルというものも、ゲーム的なものであるのだが、日常生活を送っていても、普通に上がっていく。
もっとも特別に練習や訓練を積むことによって経験値は多く入り、一番手っ取り早いのがモンスターを倒すことである。
モンスターを倒したときにその魔力の元、魔素とも言うべきものが周囲の人間に吸収され、その力を強化すると言われているのだが、あくまでも経験則である。
体長1メートルほどのオオトカゲや蛇、人間大の昆虫などが、主なモンスターだった。ゴブリンなどはいない。
あれらは一応、亜人の端くれにあたるものであり、殺しても魔石が採れないので、それはいいのだが。
「宝箱発見。どうします?」
壁がかすかに窪んで、そこに確かに宝箱が置かれていた。
わきわきと手を動かしながらマールが尋ねる。当然自分が開けるものだと思っているのだろうが、リアの判断は違った。
「ちょっとやってみるか」
「え、鍵がかかってるし、罠もあるかもしれないので危険ですけど」
「そうだな。皆は少しさがっていろ」
宝箱の前に立ったリアは、腰の刀に手をやって、沈み込むようにして抜き放った。
宝箱の金属部分が切断される。開けると、ぶわりと煙が舞い上がる。
「毒です! 解毒の魔法を!」
慌ててマールは叫ぶが、ルルーは平然と止めた。
「大丈夫、リアは毒耐性持ってるから」
「あ~、舌がぴりぴりする」
煙の中から現れたリアは、確かになんらの異常も見られなかった。手には魔法薬らしき小瓶を持っている。
「サージ、これ何?」
「魔法薬だね。魔力を少量回復するってさ」
こういう時、スキル鑑定は便利だ。魔法だと魔力を使ってしまうので、案外使いづらい。
それからも宝箱が出るたびに、同じような物理解除をしていった。
途中でマールが己の存在意義に疑問を持ったりしたが、ルルーが慰めていた。
「リアはアレだから、仕方ないの」
罠も同じような感じで突破した。
妖精の瞳でマールが罠の箇所を見つけると、リアがわざとそこを踏んづける。
槍が飛び出したり、矢が飛んできたり、落とし穴に落ちたりとしたが、全て無傷。
落とし穴には槍衾があったのだ、手で握り締めて体に届かせなかった。
「槍はいまいちだけど、投擲には使えるかな。矢はそのまま予備にすればいいし」
そして一時間ほど歩いたところで、こんこんと壁を叩いて曰く。
「なあ、これを壊して距離を短縮したら駄目なのか?」
迷宮の概念に真っ向から抵触するようなことを言った。
「壊すって、ハンマーか何かで?」
いいかげん呆れたようなマールに対して、リアは首を振った。
「いや、普通にこう」
拳で殴りつけると、石壁がガラガラと崩れた。
「うん、たいした強度じゃないな」
「だ、駄目です! 迷宮の通路を壊すと、モンスターが集まってくるんです! 早く逃げないと――」
慌てるマールの肩に手を置いて、リアは穏やかに言った。
「いいじゃないか。レベルを上げよう。前後だけになった通路に出るぞ」
マールの常識から言って、それは無茶苦茶だった。
迷宮とはもっと、慎重に、厳粛に、こそこそと罠をかいくぐってお宝に一喜一憂するものであったはずだった。
しかしリアは違った。
「こちらからくるモンスターは全部私が片付けるから、そちらはよろしくな。ああ、マールは私が半殺しにしたやつの後始末を頼む」
直線の通路で、二手に分かれる。リアの少し後ろにマール。20メートルほど離れて、他の4人が隊列を組む。
やがて第一陣がやってきた。オオトカゲが20匹あまりか。
リアは踊るようにその手足を断ち、マールが止めをさしやすいようにする。
反対側でも盾を上手く使うカルロスを中心に、ギグとサージの火力が敵を圧倒していた。
たまにルルーも攻撃魔法を使う。最初は治癒のために待機していたのだが、それよりも敵を減らすことを優先しだした。
爬虫類系と昆虫系の敵を100匹以上も殺して、ようやく波が引いてくれた。
リア以外は肩で息をしている。
「ね、姉ちゃん、次からはもうちょっと考えて戦おうよ…」
サージも時空魔法以外に、効率のいい火魔法の攻撃を行っていたが、さすがにしんどかったらしい。
「レベルは上がってるか?」
「うん、おいらとマールは3、ルルーたちは2上がってる」
とりえず魔石を回収し、昆虫の刃などの素材を剥ぎ取り、場所を移動して一行は回復に努めた。
リアは刀を拭っているが、見事に刃の欠けはない。
「強さはともかく、数が問題だよ。ゲームみたいに倒したら消えてくれるわけじゃないんだし」
「そうだな。いつももっと広い場所で戦っていたから、その点の配慮は足らなかった」
オークの軍団と戦ったときは、集落の広場だった。
「広いところで戦っていたら、むしろ数に押しつぶされてますよ」
カルロスは疲れたように言った。事実疲れていたのだろう。盾を使って敵が後衛の魔法使いに行かないようにしていたのは、上手い戦い方だった。
「じゃあ1層は距離を大幅に短縮できるところ以外は道なりで行こう」
「その前に、いったん食事にしましょう」
ルルーの言葉に全員が頷いた。
「げ、モンスターを食べるの?」
サージが顔をしかめるが、オオトカゲなど普通の爬虫類と変わらないだろう。
「でも、携帯食があるのにさあ…」
わざわざそれを収納してきたのはサージである。
「もちろん、それもいい。だがいざという時のために、そちらは残しておいて、目の前の物を食べよう」
「ほうっておいても、スライムが処分してくれるはずですけど…」
某国民的RPGで有名になった雑魚モンスタースライムだが、実際は恐ろしい敵である。
粘体であるので音もなく忍び寄り、その全身で獲物に絡み付いて、消化を行う。
特に詠唱でしか魔法を使えない魔法使いなどは、顔に絡みつかれたらそれだけで死亡確定である。
「ん、トカゲは美味いな。こちらの虫も…うん、海老みたいな食感だな。塩だけでけっこういけるぞ」
毒の部分があれば、舌にぴりぴりときて分かるはずだ。毒耐性、便利である。
マールをそれほど抵抗なく虫に手を出した。前のパーティーではよくあったことらしい。
意外なことにルルーも虫には抵抗がない。故郷ではよく食べていたそうな。
前世の記憶が強いサージと都市育ちのカルロスはやはり嫌悪感があったが、一口食べてみたらあとは大丈夫だった。
「しかし殺しすぎたな。スライム君には頑張ってもらおう」
魔法で出した水で喉を潤し、一行は迷宮の奥へと進む。
予定通り、短縮できる通路は壁を壊して短縮した。
もちろんまたモンスターが群れとなって襲ってきたのだが、同じように処分していく。慣れがある分、その速度は上がっている。
他の探索者にも出会うことなく、やがて当初の予定よりもずっと早く、1層の中心へとやってきた。
同じような素材で出来た、広い部屋だった。道は一本。対面の壁に鏡があり、その前に階層の守護者が待ち構えていた。
「骸骨剣士、レベル35だってさ」
サージがお決まりの鑑定をしてくれる。このまま戦っても楽勝だろう。
「剣だと戦いづらそうですね」
カルロスが顔をしかめる。剣と盾だけを構えた骸骨は、確かに彼とは相性が悪そうだった。
「おいらがやろうか? 遠距離攻撃もないみたいだし、一発で片付くよ」
時空魔法の空間断裂系の攻撃は、魔法の抵抗がなければ一撃で相手を殺す。
しかしこの骸骨剣士は、魔法で作られたもので、多少の抵抗はしてくるだろう。
「相性がいいのはギグだろう。ちょっと軽く殴ってきてくれ。念のため、ルルーは治癒魔法を準備」
「おう」
意外と言えば意外だが、少し苦戦した。
ギグの力任せの戦鎚の攻撃を、骸骨剣士はかわし、受け止め、受け流したのだ。
それもサージが魔法で片足を吹き飛ばすまでの健闘だったが。
「魔石、ゲット~」
並みの魔物とはさすがに大きさの違う魔石である。色も赤黒い。
「すごいです。皆さん、強いです」
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