オッドアイズ

みるく*

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~妖魔~

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外も大分暗くなってきた、
午後6時頃───。


夕食を簡単に済ませ、
ぼーっとソファに座るあかり。

目の前には学校の課題が
あるのだが、広げてみただけで
一向に手がつかない。

テレビをつけたところで
今朝のようなニュース
ばかりだろう。
特に見たい番組もある
わけではなかった。



「うーーん…。
暇だ…。」


フゥ…と一息つき
本でも見るか、と机の
そばにある雑誌に手を
伸ばした。



…その時。






───ピーンポーン────



インターホンの
チャイムが鳴り響く。


「…誰だろ。」



「はい。」



『…すいません。
…郵便です。
…。』



「えっ?
…はい。」




郵便…?
誰からなのか。

普段親戚などの存在を
全く知らないあかり。
母から聞かされたことも
なかったし、今まで独りで
過ごしてきて身内の人が
何か送ってくることもなかった。

もちろん、自分で何かを
買ったりもしていない。


ドア越しに訪問者を覗いてみると…。





深く帽子を被って顔は見えないが
昼間見たような不気味なやつではない。
直立して静かにドアが開くのを
待っているようだ。

全く動かないので
これはこれで不気味だが…。



念のためチェーンをかけて
ドアを開けることにした。



───ガチャ────



静かにドアを開く…。




と、ヒョイと顔を覗かせる男。



「!!?
きゃっ……!!」


『ユ…ビン…グフヘヘ…』




ドアの開いた隙間から
見せた顔は人間ではなかった。

人間の格好をしているが

目は大きく丸々と見開かれ
白目を向いている。

そして奇妙なのが口。
口角が目の横にまで
つり上がっている。
絶対に人間ではない。



一瞬でヤバイと思い
ドアを閉じようとしたが
相手の方が先に手を入れて
閉めるのを制止した。

こちらは両手、
相手は片手なのに
その力は強大で
チェーンをかけているが
ドアを引っ張りすぎて
ミチミチと音を出している。



(このままじゃ…。
どうしよう、お母さん…!!)


今にも崩れそうになりながら
必死にドアを引っ張るあかり。




『…グフ…。』

「!!
いやっ!!」


相手はドアの隙間からもう片方の
手をこちらに入れて
あかりを掴もうとした。

怖さのあまりギュっと
目を閉じる…。



と次の瞬間。



────ヒュッ────





何かが通り過ぎる音が聞こえた。

と、ドアを制止していた
強い力もふっとなくなり
扉が勢いよく閉まる。



「……へ?」



あまりに一瞬の出来事。
しんと静まり返る玄関。


目を瞑っている間に
何が起こったのか…。



恐る恐るドア越しに覗くが…
…誰もいない…。




「何だったの、あれは…。
絶対人間じゃない。」

外の様子が気になるが
ドアを開けるほどの勇気はない。



心臓の音だけがまたドクンと
彼女の耳にこだまする。



「……あれ?
ペンダントが…。」




ふっと胸の上にあるペンダントを
見ると赤く灯っていた。

これは母から昔もらった、
あかりにとって形見であり
お守りのようなものだった。
いつも肌身離さずつけている。


…何かに共鳴しているようだ。





───コツ…コツ…コツ────






いきなり外から聴こえてくる足音。

…徐々に近づいてくる。





やがて靴音はピタッと
あかりのドアの前で止まった。


「…今度は何よ!…」



あかりは呼吸する事さえ忘れて
ドアを睨む。





───ガチャ───




「!!!」


しまった!とあかりは思った。
先ほどドアを閉じた時
鍵をかけるのを忘れていたのだ。

チェーンもかけたままだったので
ドアは少しだけ開かれた。


そこには…




「!
あ、なたは…。」



昼間見たコートを着たそいつが
立っていた。


だが、今はフードを被っておらず、
サラサラの綺麗な白髪に
整った顔立ち。
そして目は赤と青のオッドアイだ。
吸い込まれそうになるほど綺麗である。
あかりと同じ歳ぐらいだろうか。



あかりは自分の状況を忘れ、
思わずその目を見つめてしまっていた。




『………おい。』


「えっ!?
あっ…はい…。」



『…これ、外せ。』



我に返ったあかりは
男が指さす物を見た。

チェーンを外せと言っているらしい。



「えっ…。
嫌ですよ。」


『…何でだよ。』



「何で、って…。
えっ、あなた誰ですか?
チェーン外したら
どうする気ですか?」


『中に入るに決まって──
「お断りします。」



とりあえず人間のようだし
危険な人ではなさそうと
いうのはわかる。

が、先程の事もそうだし
今目の前にいる相手が
何者かもわからない。

そんな状況でチェーンを外す
バカがいるだろうか?



『…今助けてやっただろ…。』

「えっ?
じゃあさっきのって…」


『…とにかく立ち話もなんだから
中に入ってから説明する。
から、入れろ。』


「……それって普通、私が
言うセリフですよね。
しかも中に入れてもらうのに
何でそんな偉そうなんですか、
嫌ですよ。
今世間で騒がれてるニュース
知らないんですか?
あなたがその犯人だったら
どうするんですか。」



『それも一から説明する。
俺は怪しくない。
お前の味方だ。』



はぁ?
何を言ってるんだこの人は…。



喋れば喋るほど、このやりとりが
バカバカしくなってきた。
そして、めんどくさい…。



「…味方だという証拠は?」




『俺は以前、お前と一度会っている。』


「それって、今日の信号の
ところでじゃ…。」


『違う。もっとずっと
遠い昔、まだガキの頃だ。
言っただろ、お前を守るって。』




「お前を…守る…?」


『…そのペンダント、お前の
母親が昔つけてたもんだろ。』


「!!」




何故、知っているのか。

そんなこと今まで一度だって
他の誰かに話したことはない。




『…まだ信じないか?』



「……わかったわ。
その代わり変なことしたら
すぐ警察呼ぶからね。」




そっとチェーンを外しながら、
あかりはいまだ謎に包まれた
フード男を部屋に招き入れるのだった。
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