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行かなければ。(アルダタ視点)
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痛みを感じて、目が覚めた。
「気分はどうですか」
声をかけられて、目を向けた。見たことのない男だった。眼鏡をかけており、知的な風貌をしている。
「アルダタ。返事できるなら、お医者様の質問に答えな」
この声はよく知っている。タラレッダだ。
厳しいけれど、温かい声。何年かぶりにあったかのような懐かしさを覚える。
「はい。気分は悪くありません」
「そうですか。腕の痛みはどうですか」
私は腕を見る。包帯でぐるぐる巻きにされていた。
動かそうとすると、焼けるような痛みが走った。
「……ッ」
「大丈夫かい!?」
「だ、大丈夫です」
「あまり激しく動くと傷口が開くかもしれません。今日のところは、あまり動かさないようにしておいてください」
医者は言うなり立ち上がった。
そしてタラレッダと言葉をいくつか交わした後、彼は部屋を出て行った。
「あの、ここは……」
「マリルノ様のお屋敷だよ。
あんたが倒れていたところから近いからって、彼女がここへ運びこむよう私らに言ったんだ。
感謝するんだね」
「……はい」
結局またマリルノ様に迷惑をかけてしまった。
私はどんな顔で、あの方に会えばよいのだろう。
「でも……あんたも災難だったね」
タラレッダが言う。
私は首を傾げた。
「悪いけど、私が聞いたことは全部マリルノ様に話させてもらったよ。
ペドロル様に命じられて彼女に近づいていたこととか、あんたのお母様が亡くなられていたこととかね」
!!
「どうしてそれを……」
「あんたもよく知ってるだろ。私たち使用人に隠し通せることなんて、まぁ無いのさ」
「……マリルノ様は今どこに?」
「パージ爺さんがこの後、ペドロル様を拾う予定になってたんだ。
その話を聞かれちゃって、そしたら『私も行きます』って急に言い出してね。
ぎりぎりまでここであんたが目覚めるのを待ってたんだけど、パージが言いつけられた時間になったから、さっき出たところだよ」
行かなければ。
「……ッ」
「ちょっとあんた、まだ起き上がっちゃだめだってさっき言われただろ!」
「ハァ、ハァ……」
息が乱れる。
「タ、タラレッダさん、お願いです」
タラレッダは眉間に皺を寄せて、私の顔を見た。
そして観念したように、ため息をついた。
「マリルノ様もだけど……あんたも頑固な人だね。どうせこっちが言ったって、何も聞きゃしないんだろ?」
「すみません」
「分かったよ。その代わり馬車なんてたいそうなものは用意できないからね。肩くらいなら貸してやるけどさ、自分の足で歩くことになるよ」
涙で視界がぼやけた。
「ありがとうございます」
「気分はどうですか」
声をかけられて、目を向けた。見たことのない男だった。眼鏡をかけており、知的な風貌をしている。
「アルダタ。返事できるなら、お医者様の質問に答えな」
この声はよく知っている。タラレッダだ。
厳しいけれど、温かい声。何年かぶりにあったかのような懐かしさを覚える。
「はい。気分は悪くありません」
「そうですか。腕の痛みはどうですか」
私は腕を見る。包帯でぐるぐる巻きにされていた。
動かそうとすると、焼けるような痛みが走った。
「……ッ」
「大丈夫かい!?」
「だ、大丈夫です」
「あまり激しく動くと傷口が開くかもしれません。今日のところは、あまり動かさないようにしておいてください」
医者は言うなり立ち上がった。
そしてタラレッダと言葉をいくつか交わした後、彼は部屋を出て行った。
「あの、ここは……」
「マリルノ様のお屋敷だよ。
あんたが倒れていたところから近いからって、彼女がここへ運びこむよう私らに言ったんだ。
感謝するんだね」
「……はい」
結局またマリルノ様に迷惑をかけてしまった。
私はどんな顔で、あの方に会えばよいのだろう。
「でも……あんたも災難だったね」
タラレッダが言う。
私は首を傾げた。
「悪いけど、私が聞いたことは全部マリルノ様に話させてもらったよ。
ペドロル様に命じられて彼女に近づいていたこととか、あんたのお母様が亡くなられていたこととかね」
!!
「どうしてそれを……」
「あんたもよく知ってるだろ。私たち使用人に隠し通せることなんて、まぁ無いのさ」
「……マリルノ様は今どこに?」
「パージ爺さんがこの後、ペドロル様を拾う予定になってたんだ。
その話を聞かれちゃって、そしたら『私も行きます』って急に言い出してね。
ぎりぎりまでここであんたが目覚めるのを待ってたんだけど、パージが言いつけられた時間になったから、さっき出たところだよ」
行かなければ。
「……ッ」
「ちょっとあんた、まだ起き上がっちゃだめだってさっき言われただろ!」
「ハァ、ハァ……」
息が乱れる。
「タ、タラレッダさん、お願いです」
タラレッダは眉間に皺を寄せて、私の顔を見た。
そして観念したように、ため息をついた。
「マリルノ様もだけど……あんたも頑固な人だね。どうせこっちが言ったって、何も聞きゃしないんだろ?」
「すみません」
「分かったよ。その代わり馬車なんてたいそうなものは用意できないからね。肩くらいなら貸してやるけどさ、自分の足で歩くことになるよ」
涙で視界がぼやけた。
「ありがとうございます」
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