「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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ペドロル視点

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『ここがスパラ。俺が今いる蔵書館が……この辺りか。

そして東へ行くとダパス地方……確かに、こうみると、スパラはかなりダパス地方と近いな。

紛争が始まったばかりの時はスパラにも多くの難民が押し寄せたというが……最近そういう話を聞いた覚えがない。難民関連の話なら、中央でも話題に上りそうなものだが。

まぁいい。

そしてこのダパス地方北部に連なっている山脈の向こう側から、ボロボロウ人はやってくる……』

俺が蔵書室で確認したかったのは、スパラ周辺の詳細地図だった。

あのイノシシ将校の話では、野蛮民族ボロボロウ人の荒らしが我が国で増えている理由が、全く分からなかった。

だからまずは、地形的な状況から確認しようと俺は思ったのだ。

こうして改めて見ると、東は紛争地帯、北からは野蛮民族と、この国は案外近いところに、厄介な問題ごとを抱えている。

「おい」

「なんでしょうか」

 ガテスラがすぐに返事をする。四六時中、監視されているということは気に食わないが、こういう物事を命じる時は楽でいい。

「あの田舎臭い将軍だが、ボロボロウ人が最近襲った村の名前をいくつか挙げていたよな。

 この地図だと、どの辺りにあるんだ」

「……」

 すると珍しく、すぐには返事が返ってこなかった。

「おい聞いているのか」
 俺は地図から顔を上げて振り返った。

 するとガステラは、驚いたような顔で俺を見ていた。

「なんだ、その顔は」

「あっいえ。失礼しました。村、でしたよね」と地図を確認する。

「ちょっと待て。気持ちが悪いな……

 なんだ今の顔は。え?」

 ガステラは観念したように口を開いた。

「申し訳ありません……その、少々意外だったものですから」

「何がだ」

「ですからその……ペドロル様がこの国の防衛について、積極的に考えられているというのか……」

 ふん。そういうことか。

「勘違いするな。俺はとっとと手柄をあげて中央に戻る必要があるだけだ。

 こんな田舎臭い辺境の貧相な村のことなんぞ、俺にはどうだっていい」

「……失礼いたしました」

「まぁいい。では地図で示せ。

 襲われた複数の村は、それぞれこの地図のどの辺りにあるのだ」

「かしこまりました。

 そうですね……この辺りと……この辺り……それからここにも一つ……」

 ガテスラは名前や被害状況を挙げながら、地図上で襲われた村の位置を示していった。

「ちょっと待て!」

 いくつかの村の説明をされた後、俺はなおも説明を続けているガテスラを遮って言った。

「何かありましたか……?」

「考える。少し黙れ」

「はっ」

 こいつが指差した位置……

 何かがおかしい。

 俺はダパス地方とボロボロウ人がいるという未開地区を分けている山脈を指でなぞりながら考えた。

 そして違和感の正体に気がついた。
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