「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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違和感の正体(ペドロル視点)

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ガテスラが指差した村は、スパラの東側や南東部に位置し、ダパス地方と接している村ばかりだった。

「おかしいだろ……」

「何がですか?」

ガテスラが興味深そうに尋ねてきた。

人に物を尋ねる前にちょっとは自分の頭で考えてみろよ、とも思うが……まぁいい。

馬鹿なこいつが思いつくまで待つのは、時間の無駄だ。

「ボロボロウ人はこの山の向こう側にいるのだろう?」

俺はダパス地方の北部に連なる山脈を指差した。ボロボロウ人がいるという北方の未開地とダパス地方をわけている山脈だ。

「ええ、そうですね」

「ならなぜ、直接北から攻めてこない?」

俺はボロボロウ人の未開地から、山脈を迂回して、我が国の北側から侵入するルートを指で描いた。

「今、お前があげた村は、北側ではなく、この国の東端、スパラの東側や南東部ばかり。となると考えられる侵入ルートはこうだろう」

俺はボロボロウ人が実際に使ったであろうルートを示す。

高い山を迂回せず、わざわざ越えて、ダパス地方に入る。それからダパス地方の中を通って、西にあるスパラの村を攻める。

「わざわざ山を越えたり紛争地帯の中を通ったり、このルートには無駄があり過ぎる。そんなことをせずとも我が国を攻めたいなら、直接北から攻めれば良いだけの話ではないか……一体何がしたいんだ、ボロボロウ人とやらは」

「確かに考えてみれば奇妙ですが……」

ガテスラは顎に指を当てて考えた。

「しかし、奴らはボロボロウ人です。当然、ここにあるような詳細地図なんて持っていないでしょう。

どのルートを通れば効率が良いなんて、考えてすらないように思われますが」

「何も考えず、手当たり次第に移動して、襲っているということか?」

「はい」

だとすれば北側にもある程度の被害が出ていなければおかしい。こんなにも東側や南東部ばかり、ダパス地方に接している場所に被害が集中しているなんて、意図的か、少なくともなんらか理由がなければおかしいだろう。

しかし俺は、ガテスラにこれ以上教えるのをやめた。

田舎将軍よりは多少マシだが、結局こいつも、途中で「ボロボロウは野蛮人だから」という先入観を持ち出してくる。

そこで考えるのをやめてしまっている。

結局、頭の出来が悪い奴には、何を教えても仕方がないということだ。

俺は黙って立ち上がり、資料棚の前で別の資料を探した。

俺の考えが正しければ、次に知るべきは……あった。この本だ。

目当ての資料を手に取り、机に戻ろうとすると、部屋の外へ出ようとしているガテスラの姿が目に入った。

「おい、どこへ行くつもりだ」

ガテスラは振り返って言った。

「いえ、ペドロル様の邪魔をしてはいけないと思って……」

俺は鼻で笑った。

「どうした、お前らしくない。

俺のことを、いつでもどこでも近くで見張ってなきゃ気が済まないんじゃないのか?」

ガテスラは真っ直ぐに俺を見て言った。

「今のペドロル様には、そのような執拗な監視は必要ないと思います」

なんなんだこいつは。

今さらお前に信頼されたところで、それがなんになるというのだ。

「勝手にしろ」

俺がそう言うと、ガテスラは本当に閲覧室から出ていった。

まぁどうせ、部屋のすぐ外で待機しているんだろうがな。

俺はそう思いながら、自分が棚から取り出した資料を見た。

ダパス地方の紛争の歴史。

俺の考えが正しければ、ここスパラで増えているボロボロウ人の侵略には、ダパス地方が関わっている。

この原因を明らかにすることができれば、俺の中央凱旋は大いに近づくはずだ……



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