79 / 107
引見(ペドロル視点)
しおりを挟む
「久しぶりだな、ペドロル」
「お久しぶりです、国王様」
俺は国王の前に跪いた。
相変わらずの威圧感だ。庶民の間では謙虚だとか、親しみやすいなどと言われているが、これのどこがそう見えるのだろう。
こうして相対するだけで、人の上に立つ人間特有の雰囲気、重さがひしひしと伝わってくるではないか。
やはり庶民どもの感覚は、俺にはわからん。
「それで。今日は何の用だ」
「はい。国王様にお伝えしたいことがありまして、辺境のスパラより、はるばる参上いたしました」
そう、ここに来るだけで一苦労の都市から、俺はやってきた。
あんたに、あんな末端の都市まで追いやられたせいでな。
「伝えたいこととは?」
「はい。国の安全に関わる、非常に重要なことでございます」
俺は用意してきた文書を手渡した。
それを見れば、俺の伝えたいことは一通りわかるはずだ。
国王は俺が取りまとめた文書に、目を通し始めた。
「ふむ」
思ったほど時間はかからなかった。本当に目を通したのか?
「たしかに、一考の価値がある内容だ。すぐに中央の騎士団に伝え、現地に調査兵を送ろう。
よくぞ報告してくれた」
「はっ」
よかった。
やはり国王は、スパラの鈍い奴らとは違う。どうやらこんな短時間でも、ひとまず事の重大さは理解してくれたようだ。
「話は以上か?」
「……ええ、まぁ」
「そうか。ご苦労だった」
……ちょっと待てよ。
俺は送られた辺境で役目を果たしたぞ。
これで分かっただろう。この国には俺が必要だ。俺はあんな田舎都市でくすぶらせておいていい人間などではないのだ。
「どうした。まだ何かあるのか?」
「……」
「言いたいことがあるなら、言いなさい」
「……では、お尋ねします。
私は、その……まだスパラにいる必要があるでしょうか」
国王は俺が渡した文書を指で示した。
「つまりこの働きによって、お前は自分が中央に復帰する権利を得たと。
そう考えているのだな?」
「えぇ……まぁ、その……」
「はっきり答えなさい」
「……そうです」
国王が俺の顔に視線を向けているのがわかる。
顔を上げられない。
なぜこんな詰められ方をされなければならないんだ。
「たしかにお前が素晴らしい働きをしてくれたことはわかった。
だが、この成果を理由にして、お前を中央に戻すことはできない。
自分のしでかしたことを、もう一度よく考えなさい」
「……わかりました」
俺は頭を下げ、国王の間から退出した。
「お久しぶりです、国王様」
俺は国王の前に跪いた。
相変わらずの威圧感だ。庶民の間では謙虚だとか、親しみやすいなどと言われているが、これのどこがそう見えるのだろう。
こうして相対するだけで、人の上に立つ人間特有の雰囲気、重さがひしひしと伝わってくるではないか。
やはり庶民どもの感覚は、俺にはわからん。
「それで。今日は何の用だ」
「はい。国王様にお伝えしたいことがありまして、辺境のスパラより、はるばる参上いたしました」
そう、ここに来るだけで一苦労の都市から、俺はやってきた。
あんたに、あんな末端の都市まで追いやられたせいでな。
「伝えたいこととは?」
「はい。国の安全に関わる、非常に重要なことでございます」
俺は用意してきた文書を手渡した。
それを見れば、俺の伝えたいことは一通りわかるはずだ。
国王は俺が取りまとめた文書に、目を通し始めた。
「ふむ」
思ったほど時間はかからなかった。本当に目を通したのか?
「たしかに、一考の価値がある内容だ。すぐに中央の騎士団に伝え、現地に調査兵を送ろう。
よくぞ報告してくれた」
「はっ」
よかった。
やはり国王は、スパラの鈍い奴らとは違う。どうやらこんな短時間でも、ひとまず事の重大さは理解してくれたようだ。
「話は以上か?」
「……ええ、まぁ」
「そうか。ご苦労だった」
……ちょっと待てよ。
俺は送られた辺境で役目を果たしたぞ。
これで分かっただろう。この国には俺が必要だ。俺はあんな田舎都市でくすぶらせておいていい人間などではないのだ。
「どうした。まだ何かあるのか?」
「……」
「言いたいことがあるなら、言いなさい」
「……では、お尋ねします。
私は、その……まだスパラにいる必要があるでしょうか」
国王は俺が渡した文書を指で示した。
「つまりこの働きによって、お前は自分が中央に復帰する権利を得たと。
そう考えているのだな?」
「えぇ……まぁ、その……」
「はっきり答えなさい」
「……そうです」
国王が俺の顔に視線を向けているのがわかる。
顔を上げられない。
なぜこんな詰められ方をされなければならないんだ。
「たしかにお前が素晴らしい働きをしてくれたことはわかった。
だが、この成果を理由にして、お前を中央に戻すことはできない。
自分のしでかしたことを、もう一度よく考えなさい」
「……わかりました」
俺は頭を下げ、国王の間から退出した。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる