「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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引見(ペドロル視点)

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「久しぶりだな、ペドロル」

「お久しぶりです、国王様」

俺は国王の前に跪いた。


相変わらずの威圧感だ。庶民の間では謙虚だとか、親しみやすいなどと言われているが、これのどこがそう見えるのだろう。

こうして相対するだけで、人の上に立つ人間特有の雰囲気、重さがひしひしと伝わってくるではないか。

やはり庶民どもの感覚は、俺にはわからん。

「それで。今日は何の用だ」

「はい。国王様にお伝えしたいことがありまして、辺境のスパラより、はるばる参上いたしました」

そう、ここに来るだけで一苦労の都市から、俺はやってきた。
あんたに、あんな末端の都市まで追いやられたせいでな。

「伝えたいこととは?」

「はい。国の安全に関わる、非常に重要なことでございます」

俺は用意してきた文書を手渡した。

それを見れば、俺の伝えたいことは一通りわかるはずだ。

国王は俺が取りまとめた文書に、目を通し始めた。



「ふむ」

思ったほど時間はかからなかった。本当に目を通したのか?

「たしかに、一考の価値がある内容だ。すぐに中央の騎士団に伝え、現地に調査兵を送ろう。

よくぞ報告してくれた」

「はっ」

よかった。

やはり国王は、スパラの鈍い奴らとは違う。どうやらこんな短時間でも、ひとまず事の重大さは理解してくれたようだ。

「話は以上か?」

「……ええ、まぁ」

「そうか。ご苦労だった」

……ちょっと待てよ。

俺は送られた辺境で役目を果たしたぞ。

これで分かっただろう。この国には俺が必要だ。俺はあんな田舎都市でくすぶらせておいていい人間などではないのだ。

「どうした。まだ何かあるのか?」

「……」

「言いたいことがあるなら、言いなさい」

「……では、お尋ねします。

私は、その……まだスパラにいる必要があるでしょうか」

国王は俺が渡した文書を指で示した。

「つまりこの働きによって、お前は自分が中央に復帰する権利を得たと。

そう考えているのだな?」

「えぇ……まぁ、その……」

「はっきり答えなさい」

「……そうです」

国王が俺の顔に視線を向けているのがわかる。
顔を上げられない。

なぜこんな詰められ方をされなければならないんだ。

「たしかにお前が素晴らしい働きをしてくれたことはわかった。

だが、この成果を理由にして、お前を中央に戻すことはできない。

自分のしでかしたことを、もう一度よく考えなさい」

「……わかりました」

俺は頭を下げ、国王の間から退出した。
























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