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第二章 パジャリブ動乱
第十六話:神殿襲撃
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「止まってください」
神殿の正門で、槍を持った二人組の男が、ロスタビリの操る馬車を静止した。
彼らは、神殿を守る兵士である。
軍に属する兵士ではなく、ラシャール教団が独自に雇い、武装させている兵士だ。一応は私兵ということになるが、通常は神兵と呼称される。
「通行証はありますか?」
ロスタビリが軍の通行証を出すと、神兵たちは怪訝な顔をした。
彼らが求めていたのは、教団が発行した、信者向けの通行証だった。
軍の発行した通行証でも敷地内に入ることはできる。
しかし、そういうケースは多くない。
軍の人間が、軍の人間として神殿を訪れるときは事前に連絡があるのが普通で、アポなしでいきなりくることはめったにない。
「今日はどういうご要件で?」
「それを言わなければいけませんか? こちらは正式な通行証を持っているのです。通行する権利があるはずです。それとも、軍の権限で発行された通行証では通せないと言うのですか?」
それを言われると、神兵としてはなにも言えない。
これ以上文句を言えば、教団がお上に従っていないと判断されてしまいそうな勢いだ。
それに、そもそも本気で疑っているわけではない。どんな理由できたにせよ、軍の人間が、教団で不逞を働くはずがない。質問したのは、あくまでも一応のチェックにすぎない。
もしかしたら、たかが末端の兵士には言えない理由できたのかもしれない。
軍と教団、共に市内で絶大な力を持つ組織同士。どんな密約があってもおかしくない。分不相応にも、一介の兵士がそんなことを知ってしまえば……。
「失礼しました。お通りください」
一度正式なチェックを通って入っただけに、中に入ってからは、怪しまれることはなかった。
馬車は、堂々と敷地内を進み、聖堂の近くの馬車置き場までたどり着いた。
問題はここからだ。
一味の中には、聖堂に入ったことがある者が何人かいた。
彼らが言うには、聖堂は正面奥に神像が鎮座しており、その手前は長椅子が並ぶ広間になっている。
もし全員で突入すれば、一瞬で警戒され、神像の横にある奥へと繋がるドアを封鎖されるだろう。
そうなれば、もうおしまいだ。
「何人かついてこい。残りはここで待機。合図があったら聖堂に入って大騒ぎしろ」
「合図ってのは?」
「賑やかになることだ」
ロスタビリは五人だけ仲間を連れ、一般信者立ち入り禁止区域に向かった。
開放区域と立ち入り禁止区域を隔てる門は、二人の神兵によって守られていた。さっきは、主は馬車の中にいて、自分は御者に過ぎないというていで通行証を使えたが、今度はそうはいかない。
軍服を着ていなければ、通行証があっても軍人とは思ってもらえないだろう。
正攻法では突破できない。
なら、強行突破するだけだ。
ロスタビリは、一人で歩いていた一般信者を茂みに連れ込み、殺害した。
首を切り落とし、門を守る神兵たちから少し離れたところにそれを投げ込んだ。
突然の生首に神兵たちは驚き、おそるおそる近づいた。
その間、門の警備は疎かになり、ロスタビリたちはゆうゆうと侵入することができた。
立ち入り禁止区域に入ると、今度は神殿内に入る出入り口を探した。
聖堂ほどではないが、それなりに大きい扉があった。
しかし、そこはスルー。人通りがあったからだ。
どんどん奥へ進むと、勝手口らしき小さなドアがあった。
様子を見ていると、生ゴミを持った女が出てきた。どうやら、中は厨房のようだ。
勝手口から中へ入った。
案の定、そこは厨房だった。
嬉しいことに、そこには女しかいなかった。
驚く女たち。
ロスタビリは、その中の一人をすばやく殺した。
残る女たちは悲鳴をあげようとしたが、それより早くロスタビリは、
「声を出した奴から殺す」
とマウランの葉の効力でトロンとした目でにらみつけた。
狂気を感じた女たちは、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。
ロスタビリは、一番近くにいた女に聞いた。
「ラカか大司祭か、どっちでもいいがどこにいる?」
「それは……」
返事に時間がかかったので、殺した。
他の女たちに見回し、
「どこだ?」
と、問う。
「四階の会議室かと」
「よし、いい子だ」
ロスタビリは、正直に答えた女を縄で拘束し、答えなかった女たちを全員殺した。
厨房を出て、五階へと向かう。
階段がどこにあるかわからないので、適当に動きながら探した。
その際、すれ違った者は全員片っ端から殺していった。
神殿の中が、血で赤く染まっていく。
神殿を狙ったテロリストなど、建造以来初の大事件だ。
だが、この時点ではまだ、ロスタビリたちは注目されていなかった。
ロスタビリたちに注意がいかないように、馬車に置いてきた仲間たちが、聖堂で暴れていたからだ。
首が発見された事件を合図と受け取った仲間たちは聖堂に入り、さきほどから大騒ぎを起こしていた。
彼らのやり方は、手当たり次第に殺していくロスタビリほど残虐ではなかった。
しかし、注目を集めるという意味では、ロスタビリよりよほどうまいやり口だった。
彼らは聖堂に入ると、お祈りをしている修道女たちを襲い、レイプしたのだ。
手当たり次第だった。
修道女たちは全員処女で、彼らはその膜を破ることに楽しみを見出し、突っ込んで数回ピストンしては射精する前に抜き、次の女を襲った。
ロスタビリのテロも前代未聞なら、聖堂での集団レイプなどというのも前代未聞だった。
すぐに神兵たちが飛んできたが、彼らもすぐには手を出せなかった。
神に身を捧げ、永遠の処女であることを誓った修道女たちが、目の前で犯されているのである。
神兵たちの目は、釘付けになってしまった。
若い神兵の中には、童貞も珍しくなかった。
彼らは、初めて目の当たりにするセックスにもう夢中だった。
中には、以前から好意を寄せていた修道女のあられもない姿に興奮し、ズボンを脱いで宴に参加する者さえいた。
狼藉者たちが、誰一人として殺していないというのも、事態の収拾の遅れに拍車をかけた。
神殿を守る神兵たちが、聖堂で人を殺すわけにはいかない。
侵入者が、次々に人を殺していて、もうそいつらを殺すしか事態を収められないというのなら別だったのだろう。
しかし、聖堂に限っては、まだ殺人は起きていない。
不逞の輩たちが捕縛され、聖堂での混乱が収まる頃には、ロスタビリは最上階に到達していた。
神殿の正門で、槍を持った二人組の男が、ロスタビリの操る馬車を静止した。
彼らは、神殿を守る兵士である。
軍に属する兵士ではなく、ラシャール教団が独自に雇い、武装させている兵士だ。一応は私兵ということになるが、通常は神兵と呼称される。
「通行証はありますか?」
ロスタビリが軍の通行証を出すと、神兵たちは怪訝な顔をした。
彼らが求めていたのは、教団が発行した、信者向けの通行証だった。
軍の発行した通行証でも敷地内に入ることはできる。
しかし、そういうケースは多くない。
軍の人間が、軍の人間として神殿を訪れるときは事前に連絡があるのが普通で、アポなしでいきなりくることはめったにない。
「今日はどういうご要件で?」
「それを言わなければいけませんか? こちらは正式な通行証を持っているのです。通行する権利があるはずです。それとも、軍の権限で発行された通行証では通せないと言うのですか?」
それを言われると、神兵としてはなにも言えない。
これ以上文句を言えば、教団がお上に従っていないと判断されてしまいそうな勢いだ。
それに、そもそも本気で疑っているわけではない。どんな理由できたにせよ、軍の人間が、教団で不逞を働くはずがない。質問したのは、あくまでも一応のチェックにすぎない。
もしかしたら、たかが末端の兵士には言えない理由できたのかもしれない。
軍と教団、共に市内で絶大な力を持つ組織同士。どんな密約があってもおかしくない。分不相応にも、一介の兵士がそんなことを知ってしまえば……。
「失礼しました。お通りください」
一度正式なチェックを通って入っただけに、中に入ってからは、怪しまれることはなかった。
馬車は、堂々と敷地内を進み、聖堂の近くの馬車置き場までたどり着いた。
問題はここからだ。
一味の中には、聖堂に入ったことがある者が何人かいた。
彼らが言うには、聖堂は正面奥に神像が鎮座しており、その手前は長椅子が並ぶ広間になっている。
もし全員で突入すれば、一瞬で警戒され、神像の横にある奥へと繋がるドアを封鎖されるだろう。
そうなれば、もうおしまいだ。
「何人かついてこい。残りはここで待機。合図があったら聖堂に入って大騒ぎしろ」
「合図ってのは?」
「賑やかになることだ」
ロスタビリは五人だけ仲間を連れ、一般信者立ち入り禁止区域に向かった。
開放区域と立ち入り禁止区域を隔てる門は、二人の神兵によって守られていた。さっきは、主は馬車の中にいて、自分は御者に過ぎないというていで通行証を使えたが、今度はそうはいかない。
軍服を着ていなければ、通行証があっても軍人とは思ってもらえないだろう。
正攻法では突破できない。
なら、強行突破するだけだ。
ロスタビリは、一人で歩いていた一般信者を茂みに連れ込み、殺害した。
首を切り落とし、門を守る神兵たちから少し離れたところにそれを投げ込んだ。
突然の生首に神兵たちは驚き、おそるおそる近づいた。
その間、門の警備は疎かになり、ロスタビリたちはゆうゆうと侵入することができた。
立ち入り禁止区域に入ると、今度は神殿内に入る出入り口を探した。
聖堂ほどではないが、それなりに大きい扉があった。
しかし、そこはスルー。人通りがあったからだ。
どんどん奥へ進むと、勝手口らしき小さなドアがあった。
様子を見ていると、生ゴミを持った女が出てきた。どうやら、中は厨房のようだ。
勝手口から中へ入った。
案の定、そこは厨房だった。
嬉しいことに、そこには女しかいなかった。
驚く女たち。
ロスタビリは、その中の一人をすばやく殺した。
残る女たちは悲鳴をあげようとしたが、それより早くロスタビリは、
「声を出した奴から殺す」
とマウランの葉の効力でトロンとした目でにらみつけた。
狂気を感じた女たちは、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。
ロスタビリは、一番近くにいた女に聞いた。
「ラカか大司祭か、どっちでもいいがどこにいる?」
「それは……」
返事に時間がかかったので、殺した。
他の女たちに見回し、
「どこだ?」
と、問う。
「四階の会議室かと」
「よし、いい子だ」
ロスタビリは、正直に答えた女を縄で拘束し、答えなかった女たちを全員殺した。
厨房を出て、五階へと向かう。
階段がどこにあるかわからないので、適当に動きながら探した。
その際、すれ違った者は全員片っ端から殺していった。
神殿の中が、血で赤く染まっていく。
神殿を狙ったテロリストなど、建造以来初の大事件だ。
だが、この時点ではまだ、ロスタビリたちは注目されていなかった。
ロスタビリたちに注意がいかないように、馬車に置いてきた仲間たちが、聖堂で暴れていたからだ。
首が発見された事件を合図と受け取った仲間たちは聖堂に入り、さきほどから大騒ぎを起こしていた。
彼らのやり方は、手当たり次第に殺していくロスタビリほど残虐ではなかった。
しかし、注目を集めるという意味では、ロスタビリよりよほどうまいやり口だった。
彼らは聖堂に入ると、お祈りをしている修道女たちを襲い、レイプしたのだ。
手当たり次第だった。
修道女たちは全員処女で、彼らはその膜を破ることに楽しみを見出し、突っ込んで数回ピストンしては射精する前に抜き、次の女を襲った。
ロスタビリのテロも前代未聞なら、聖堂での集団レイプなどというのも前代未聞だった。
すぐに神兵たちが飛んできたが、彼らもすぐには手を出せなかった。
神に身を捧げ、永遠の処女であることを誓った修道女たちが、目の前で犯されているのである。
神兵たちの目は、釘付けになってしまった。
若い神兵の中には、童貞も珍しくなかった。
彼らは、初めて目の当たりにするセックスにもう夢中だった。
中には、以前から好意を寄せていた修道女のあられもない姿に興奮し、ズボンを脱いで宴に参加する者さえいた。
狼藉者たちが、誰一人として殺していないというのも、事態の収拾の遅れに拍車をかけた。
神殿を守る神兵たちが、聖堂で人を殺すわけにはいかない。
侵入者が、次々に人を殺していて、もうそいつらを殺すしか事態を収められないというのなら別だったのだろう。
しかし、聖堂に限っては、まだ殺人は起きていない。
不逞の輩たちが捕縛され、聖堂での混乱が収まる頃には、ロスタビリは最上階に到達していた。
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