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いろいろ大変な女の子がオッサンに説教される話
しおりを挟む「何時までもこんなことしてちゃダメだよ」
熱気と湿気、埃が満ちた不快な空気と。
大仰で安っぽい内装、白々しい虚飾で成り立つ薄暗い部屋はやっと落ち着きつつあった呼吸と空調の音だけが響いていたから、決して大きな声じゃないのにやけにはっきりと聞こえてくる。
ついさっきまでのドン引きするほど必死で健気で切羽詰った卑屈な態度とのあまりの落差に思わず笑ってしまいそうになった。
うつ伏せで枕を抱いてベッドの外側に顔を向けている私は何の反応もしない。
どうせ返事なんてしてもしなくても関係ないから。
ただ一方的に思いついたことを機械的に口にしてるだけだろうから。
こいつらとは会話なんて成立しないことはわかりきっている。
何時だってあまりにも恥知らずな己の欲求をこれ以上無いほど直接的に叶えることしか頭にない。
そのことだけは共通でそれ以外には何もない。
ひとりひとりに何の特徴も価値もない、全く同じ種類の生き物。
個体差なんて微塵もない、本能に従って蠢き続けて捕食を続ける群体の一部。
だからいつも終わった後で同じことを言う。
判を押したように同じ行為の後で同じ内容の言葉を同じような顔と態度で言い放つ。
「君みたいな子が何時までもこんなことやってちゃだめだよ」
先ほどまでぼつぼつの吹き出物だらけのところにたっぷりと油を乗せてただでさえ吐き気を催すほど気色悪い顔をさらに醜く歪ませて私の身体を貪ってたオッサンが出したその声の響きに改めて笑ってしまいそうになる。
未だ不愉快な感覚の残滓が抜けきらない身体を内側から満たしていく、馬鹿馬鹿しさと滑稽さがない混じった想い。
我が身を省みぬ破廉恥さ。
自分も他人も理解しようがない矮小な認識能力。
最初こそ、そのあまりにも低劣で愚鈍で醜悪な在り様に心底からの軽蔑と嫌悪感でイライラさせられて。
狂いそうになるほど煩わしくてうんざりしたけど。
今ではもうそんな気持もない。
まともな感性を期待するほうが無駄なのだ。
初めからこういう生き物なのだから、それ以上の何かを求めるほうが間違っているんだ。
そう割り切ってさえしまえば、後はなんのことはない。
意味を成す言葉と思わずにただ聞き流してしまえばいい。
そういう鳴き声なのだと認識を固めてさえしまえば、特に感じることなどない。
でも精神的にも肉体的にも一番消耗しているこの時に聞かされるとやっぱりしんどかった。
無意識に耳に届いた言葉の断片を拾い上げて咀嚼して解釈して論理を組み立てて意味ある回答を導きだそうとしてしまう。
決して声に出すことも態度に示すこともしないけど、自分の中では一連の処理が自動的に行われてしまってとめることができない。
「遊ぶお金がそんなに欲しいの? 自分を大事にしなよ」
遊ぶ余裕なんてあるか。
学費と生活費を誰にも頼らずにやってくにはこんなことでもしない限り無理なんだよ。
そんなただ遊ぶためだけのお金を欲しがってればそれで済むような子の方がイマドキすくねぇよ。
同年代の男の子だってお金の余裕があるヤツなんてほとんどいない。
お前の中の「学生」のイメージは90年代から変わってねぇのかよ。
「親御さんが泣いてるよ」
泣くかアホ。
ただ何も考えてない悪い人じゃないってだけの母親が再婚相手に選んだ飲み屋の常連客だった男は私を最初に汚しまくってくれたよ。
何も知らないわからない無邪気な子供だった私に「現実」というのをイヤというほど叩き込んでくれて。
この世の中、他人に頼ることなんてできない、自分の力で生きていくしかないってことだけを法的に父親になった男と何もせずに傍観していた母親はきっちりと完璧に一切の妥協なく教えてくれた。
そこからやっと這い出して自分の力で生きていく目処が立ったところなんだ。
私がどんな目にあっても笑うことはあっても泣くことなんてあるか。
「自分の娘がこんなことしていたら絶対に許さない」
ちょっ、おまっ、娘いるのかよっ(笑)
マジウケル。
そんなご立派なお父さんが娘と変わらないような女を買ってキリッと良い顔で説教してるワケ?
散々、値段交渉した挙句に拝み倒すようにいろいろ注文してきて、ありえないような恍惚な表情で声とか出して自分を解き放っちゃった上に延長までしてきたヤツが。
マジであんまり笑わせんなよ。
さすがに我慢できなくなっちゃうだろ。
もうその辺で限界が来たから、「シャワーに行くね」って言いながら身体を起こす。
浴室に入ってやっと一人になれたら、疲れが一気に襲ってきた。
もう動くことすら億劫だったけど、身体中のべたつきの不快さがお湯を浴びることを何より優先させる。
出来ればボディーソープで全身を磨きたいけど、肌が荒れるから使わない。
お湯だけでも全身を洗い流したら気分が少しマシなった。
後は身体を拭いてタオルを体にまいて出て。
入れ違いでシャワーを浴びに行ったオッサンの鼻歌をバックに下着をつける。
服を着て化粧を直してるうちに向こうも準備が整ったみたい。
「今日はすごく楽しかったです。また逢いたいな」
お札の感触を掌で確認しながら、心の底からの言葉を最高の笑顔で告げた。
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