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あの時彼女はブルマを履いていた、そしておならをした
しおりを挟む暑い、暑い夏の日だった。
砂埃がうっすらと漂う、薄暗いコンクリート製の体育用具室の中だった。
クラスの中でも格別仲がいい彼女と二人、授業で使った何かの片づけをさせられていた時だった。
白い半袖体操着と紺色のブルマを着た彼女とは友達以上恋人未満くらいのとてもとても微妙な関係だった。
何かの拍子、ほんのあと一歩でもう取り返しがつかない、不可逆的に戻ってはこれないところへと進んでしまうような期待と恐怖がそこにはあった。
はちきれんばかりの狂おしい想いと、それだけになお躊躇させられてしまう怖気が絶妙に両立して併存している真っ最中だった。
甘酸っぱいものだけがそこにはあった。
それ以上に関係が深まってしまえばもう、それだけでは済まなくなるのはなんとなく確信めいた予感があった。
男女の仲とか言われるものは、不純なものでしかなかった。
そこまで至っていないからこそ、混じりけなしで透き通った神聖なものだけで満たされたいた。
彼女はお尻をこちらに向けて、三つほど重なった金属製のハードルをうんしょと持ち上げようとした。
その奥にいくのに邪魔だったからそうして場所を開けようと、こっちを信頼しきったというより何らの不安も警戒する必要も思いつきようもないといった風情と態度で無頓着に、女子にしては肉付きの薄いお尻を背後に突き出して全身に力を籠めようとしていた。
日焼けした華奢な四肢が「ぐっ」と大地とハードルの間でいきんだ瞬間。
盛大に空気が爆発するような音がした。
お尻の割れ目の上の紺色の布地が、一瞬だけぽこっと盛り上がったのがわかった。
おなら以外の何物でもなかった。
それはまごうことなく放屁だった。
そうすぐに理解はしても、身体も心もまったく機能しなくなっていた。
何をどうすればいいのか全然わからなくなっていた。
彼女に対して何かをこちらから言い出すべきなのか、どんな態度で接すればいいのか。
憎からず思っている異性からいきなり突然こんな生理現象を披露された思春期真っ最中の未熟な自我では処理しきれない難問そのものだった。
情けなく縮こまり、硬直することしかできない無様な醜態をさらし続けることしかできなかった。
うっすらと砂埃が舞う薄暗い二人だけの体育用具室の中は完全に時が止まって、空気が凍り付いていた。
温度も季節も一切が因果を持てない、隔絶された時空の監獄のようだった。
結局最初に動き出したのは彼女のほうだった。
いきなり何の前兆もなく、ぐるっと上半身だけでこちらを振り向くと、無理矢理作ったような歪んだ笑顔で「おなら出ちゃった!」と言った。
とても明るい声だった。
悲壮的なほどに健気な響きに満ち溢れていた。
真っ赤になった耳がうっすらと汗を纏ってたゆたうように陽炎っていた。
こちらを見つめる眼差しに込められたものの全貌をとても理解できようはずもなかった。
しかし純度の高い強烈な二種類の意志だけはどれだけ未熟で幼い自分でもさすがに読み取ることができた。
嫌いにならないで。
嫌いになったりしたら許さない。
似ているようで全然違う、少女の気丈と怖気、強さと弱さ、自尊心と媚びが矛盾することなく一直線に自分に放たれているのを否応なく理解させられた。
考えるまでもなく自然と取るべき態度と発するべき言葉を選択させられていた。
ありきたりで可もなく不可もない、彼女の必死の努力が無に帰さないだけの反応をやっととることができたのは数秒後のことだった。
自分がとてもとても興奮していることに気が付いたのはさらに時間が経って二人で校舎まで戻る廊下の途中だった。
隣を歩く彼女の汗や整髪料の匂いが気になって仕方がなくなっていた。
先ほど見て聞いた、経験した記憶がずっと脳裏を駆け巡って下腹の奥をずきずきと刺激し続けていた。
生まれて初めて異性を性的にどうかしたいと強く思った瞬間だった。
了
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