あの娘のスクール水着を盗んだ ~ちょっとエッチな短編集~

かめのこたろう

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ヤリサーのヤリ部屋で新人っぽい女子が犠牲になりそうなところに出くわす話

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 ヤリサーっていうのは確かにあった。


 大学時代に腐るほどいた浅くて広い、顔見知り以上友人以下みたいな関係の有象無象。
 そのうちの一人で世の軽薄のイメージをそのまま形にして生きてたようなアイツ。
 ほんと、マンガとかに出てくるヤリチンサークル大学生を完璧に再現して命を吹き込んだみたいなヤツ。

 特別親しくも、深くもないけど顔をあわせれば軽口叩いて笑い合う。
 もうどこで知り合ったのかも朧で曖昧で思い出せもしない。
 でもそんなの気にならないくらい、さほどの意味も価値もないどうでもいい間柄。

 お互い、その他大勢の一人であることを明確に自覚しながら付き合っていたのは間違いなかった。
 ただその時その時で何か適当な都合があったとき、軽い頼みごとをすれば対応しなくもない。

 例えばあの授業の課題の写しある?とか。
 バイクのパーツ探してんだけど、持ってそうなヤツ知らねえかとか。

 普段から一緒にいて遊んだりしないけど、ほどほどに利用しあえるから邪見にすることもなく表向きには笑い合う。
 たまたま時間が空いて、他に誰もいないようなら雑談相手くらいには使い合える。
 一歩間違えたら膨大で虚無的なものでしかない大学生活を、円滑に過ごすための一つの装置。

 胡乱で微かで重みはないけど、無視できない程度に確かな有効性を持つ人間機構。

 ちょっとした知り合いという、存在感の希薄さとは裏腹に、あるのとないのとじゃ全然違う有益な互助関係。
 あの時あの場所じゃ空気みたいに当たり前のことで、自分たち以外の大抵の奴もそう意識することもなく自然と持っていたはず。

 その時もたまたま、ほんの軽い用事があったからだと思う。
 雑談の途中でふと話題になったから、試しに聞いてみたらそいつが持ってたとかそんな感じで。
 もうディテールなんて全く出てこないくらいどうでもいいことではあったんだろうけど。
 ただ、確かなのはソイツが入りびたってるたまり場に行くってなったこと。

 ヤリサー主催の箱、いわゆるヤリ部屋だって一部で有名だったマンションの一室。

 学生向けとはとても言えない、防音もセキュリティもそれなりにしっかりしてる、むしろ富裕層向けのとこだった。
 関係してるヤツラで金だしあってんのか、金持ちのボンボンが一人仲間うちにいたのかとか、その資金の出どころなんかはまったくわからない。
 当時はもちろん、今でも想像しようがないけど、自分には完全に関係ないし、深入りなんてしない方がいいことだけはわかりきっていた。

 ドアの前。
 いよいよ入ろうって段。
 別に気後れもしてなかったし、遠慮もしてなかったけど、内心はともかく一応礼儀的に躊躇するそぶりを示してやった。
 まあやらなくてもいいけど、やっとけばそれなりに潤滑的作用が出るかな程度の感覚で無意識的に。

 「あー、いーよいーよ」。

 全然気にしてる様子もなく言いながらドアノブを回して開けていく。
 徐々に広がる隙間から最初に見えたのは赤かオレンジっぽい暖色系の間接照明みたいな薄明かりと、むわっと湿ってこもった空気の甘い匂い。

 確かな人の気配。
 一人二人じゃない、複数人がけばけばしい色の暗がりの中で密着して蠢いている、確かな存在感。

 たぶん本来はリビングらしい、最初の広間で展開されていたのは想像通りの光景だった。
 少なくとも下着程度の、下手したら全裸の男と女が想い想いの恰好でくっついてたり独りで寛いでたり。
 本能的に思わず、知り合いの顔はないかと一瞬でサーチしてしまう。
 自分のテリトリー内の誰かしら、親しい仲間と認識している者がそこにいないか。

 幸い(?)、そこにいたのはヤリサー関係のヤツらだけっぽかった。
 普段から軽薄なアイツとつるんでる、同じような雰囲気を纏ったあいつら。
 別にすごく派手ってわけじゃないし、ぱっと見は普通なんだけど、どことなくなんとなくある種の距離感がよじれてるような独特の空気を醸し出してるあの子とかその子とか。
 わかるヤツならわかる程度に、キャンパスのそこかしこで空間が歪んでるように何かを揺蕩わせて立ち昇らせている彼らと彼女ら。
 顔だけはよく見かけるから全く知らないわけじゃない、そいつらが「そんなことやってんだろうな」ってイメージそのものの姿と恰好でいる、予定調和的なその光景。

 すごく乱れて爛れた、世間並みに言えばどうしようもない状態そのものだったんだろうけど、別に驚きも衝撃もなかった。
 「だろうね」って酷く淡々とした乾いた感覚で認識していた。
 アロマかなんかの甘ったるい匂いに人間の生理的成分の臭みが混ざった絡みつくような香りに包まれて、妙にフローリングが湿っぽいような気がして足裏が意識された。
 別に実際に濡れてたり、湿っていたわけじゃないんだけど。
 でも何故かぬらっと滲み出るような水気、汁気が伝わってくるような気がした。

 「あ、○○君じゃん」とか、その中では比較的見知っていた一人の女の子が声をかけてきたような気がする。
 やっぱり半裸みたいな恰好で、明らかにそういう感じだったけど別に気にもならなかったから普通に応答したはず。
 これから一緒に参加するのかって聞いてきたから、明確に否定してすぐ帰る旨を伝えると「××子によろしくいっといて~」みたいな感じで言い放ち、その直後にはもう横の裸の胸板に体を預けて愛撫を受け入れていた。
 何か睦言をささやきながら、くすくす艶笑を浮かべてさわりあって弄り合い始めた。


 少なくとも同じ学び舎に通う同窓の人間たちの異常な非日常そのものの日常風景。
 猥雑で淫乱で不道徳な、退廃の極みに関わらず僅かな違和感もない当たり前で普通の自然な姿。


 「お前もいっとく?」って、お目当てのものを差し出しながらアイツが聞いてきた。
 でもやっぱり即座に断ってもう意識を出口へと向けていく。

 だってどうやっても自分にはさほどの意味も価値もなかったから。
 その時付き合ってる相手はいたし、性欲的にもなんら不都合はなかったからかもしれない。
 あとはその場にいたメンツに特に魅力を感じるものがなかったからかも。
 まあはっきりとしたことはわからない。
 ようは「自分の趣味じゃなかった」ってことかもしれない。

 ただ、礼を言って身をひるがえそうとしたときに、リビングに連なる奥のベッドルームらしき場所が目に入った。
 そこにいたのは、二人の男と一人の女、その彼女が纏っていたものに思わず意識を奪われる。

 ここにいる奴らが共通して纏っている例の空気、空間の歪みを全く感じさせない、明らかに別種の生物の存在感。

 「ねえだめ」とか「みんな見てる」とか、拒絶めいたことを言いながら、服の上からいろんな場所を触られていた。
 明らかに慣れてない、新参そのものといった風情で身を竦めつつ両脇から肩を抱かれて、それでいて逃げる様子もなく。
 たぶん突然のこの闖入者に全然気が付いていないくらいに自分自身の状況に夢中になってたみたいだった。

 明確に受け入れたわけではない、だけど拒絶しきれないって感じで。

 実際彼女が本当に嫌がっていたのかどうかはわからない。
 だけどどちらにしろ自分にはその時助けようとか、やめさせようとか全く思わなかったことは事実である。
 仮にそう思ったとしてもどうしようもなかっただろうけど。
 でも肝心なのは「そう思ってできなかった」のか、「最初からそのつもりにならなかった」のかどちらかだろうとも思う。

 もしかしたら本気で嫌がっていたかもしれないのを無理矢理受け入れさせられようとしていた、犯罪めいた現場に立ち会ってしまっていたのかもしれない。
 でもその特別見た目が整っていたわけでもなさそうな、純朴そうな女の子がそれからその場の一人になろうと別にどうでもよかったのは確かだった。
 合意だろうと不合意だろうとどっちでもいいと。
 そういう風にあの仲間の一人に取り込まれる女子もいるだろうなと。

 そんな他人事としか言いようがない感想しか持ちえなかっただけ。

 その後彼女がどうなったのか知らない。
 仮に大学の構内で視界に入ったとしても、たぶん、気が付かなかっただろう。

 ただ、それくらいそういうのが当時は当たりまえで普通に存在していたってことだろうと思う。
 自分の間違っていたかもしれない態度も対応も、言い訳も贖罪もする気にならないくらい、ありふれて身近なものだった。

 それでも自己保身的にできることがあるとしたら。

 これはフィクションである。
 まったくもってただの虚構、一片の現実性もないおとぎ話なのである。




 了
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