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2023年5月9日
しおりを挟む村上春樹センセイの新作を読んだり読まなかったり、ゴロゴロ過ごす今日この頃。
特にハルキストのつもりもないんですけど、出てるのに気が付くと思わず手に取っちゃう何かがこのひとにはあるみたいです。
そして実際読み始めると相変わらずの内容で懐かしいやら安心するやら。
一昔前のメリケンアッパークラス風インテリオサレな生き方とか趣味とかが至高っていう、最初期からほとんど変わらないこの雰囲気。
どれだけ登場人物の年齢やら状況やら物語の本筋やらがバリエーションに富んでいても、最下層、基底を流れる作者の信条自体には全くゆるぎがないのがびんびんゆんゆん伝わってきたり。
良くも悪くも提示される視点、こういうのが善い、こういったことに価値があるのだという価値観は常に一緒でわかりやすいのがいいです。
読み始めてすぐに自分を包む、「ああ、村上春樹を読んでるんだ」ってエモい実感。
そしてなによりシンプルでわかりやすい文章で紡がれる「わけのわからない」物語。
これほど文章自体の敷居の低さに対して反比例するような話の意味不明さ、投げっぱなしで読み手にゆだねすぎとしか思えないような内容はまさしくオンリーワン。
多くの人間に「考えさせる」「何か高尚なものを読んだ気にさせる」という意味では他に類を見ない作家なのは間違いないんじゃないでしょうか。
本邦においては唯一無二でいいと思います。
(もちろん海外文学なんて全然知らないから、そちらに同等同質の作家がいらっしゃるのかなんて知りませんけど。)
そんな「インテリオサレな雰囲気で紡がれるわかったようでわからない意味深な物語」こそが村上作品のドグマ。
どれだけ一部で「近作になるほど似たり寄ったりで同じような印象」だとか批判されてても、この既視感こそが村上春樹センセイの醍醐味。
むしろ変わらない雰囲気をこそ楽しむものなんだもの。
新作が出るたびに、「そういやあの人ってどんなやつだったっけ?」って作者自身の人品人柄を再確認するために読んでると言っても過言ではない……と思います。
ただ、昔と比べて明らかに性描写の量が少なくなってるところだけはちょっと気になってたり。
村上作品といえばお馴染みだったはずの、「延々と続く実用性皆無の抜けない性描写」。
近作になればなるほど少なくなっていってるのは明らかだったんですが、最新作ではとうとうほぼゼロといった状態に。
センセイのお年を考えると当然といえば当然なんでしょうけど、いろんな意味であの最高峰の筆力で表現される無為としか思えないエロ描写のいちファンとしては残念で仕方がありません。
何故これほどの描写筆力でエロく感じないのか、果たして官能性とは一体何か。
エロスというものを逆説的に捉える恰好の題材だったので、是非とも次回作には期待したいものです。
そんなノーベル賞をとっても取らなくても変わらない、村上春樹センセイの偉大さと作品群の価値。
くだんの性描写以上に無為な日々を送りつつ、久々の新作で再確認いたしましたとさ。
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