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私の前世

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「死にたいなんて、なにもったいない事言ってんのよ‼︎」

夢の中で、女性の大きな声が聞こえた。

(誰…?)

聞き覚えのない声だったが、不思議と懐かしい気持ちにさせられる声だった。

「せっかくこんなに面白い世界に生まれ変わったんだから、楽しまなくてどうすんの⁈」

「お、面白い…?」

その声は姫であるフォルティにも礼儀も遠慮なく話しかけてくる。
もしもユークがここにいたら、声の主に対して剣を抜いていたかもしれない。

「そう!死ぬ間際に思ったじゃない、生まれ変わったら、おとぎ話この世界のような世界で好きに生きてやるって!」

「………!」

その言葉をきっかけに夢の世界が、さまざまな映像を映し出した。

前世の私は日本と呼ばれる国の女性だった。
子供の時から魔法やおとぎ話が大好きだった。
大人になってからは漫画やゲームが大好きで、恋人は画面の向こうの人。
でもそれでも幸せで。

「たとえ死ぬまで独身でも推しの〇〇がいれば、幸せじゃー!」
…とか言ってたなぁ。

でも人生、なかなか上手くいかないもので。
成人するまで風邪一つひいた事がなかったのに、少し体調が悪いなと思って病院に行ったら、もう手遅れで。

それでも辛い入院生活の中でも支えてくれたのは、家族はもちろんの事。長年のオタク生活で仲良くなった友人や、ネット小説、漫画、ゲーム、そして最愛の推し〇〇…。

でも最期には手さえも上手く動かせずにいた。
そんな時は窓の外を見て、生まれ変わった時になにをするかを考えた。

次は子供の頃に夢見た世界に行こう…!
そして、人生いつ終わるかなんて分からないんだから、もっと好きに生きよう!

そうだ…!そうだった…!
私はそのために生まれ変わってきたんだった!

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