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覚醒

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「やっと思い出したか」

前世の声が呆れたように言った。

「つまらない男に失恋したからって、絶望するなんて、本当にもったいないんだからね」

「つ、つまらない…⁈」

私にとっては最愛の人ルシオは、やっと自分を一番に愛してくれる人で、さらには世界の全てだとさえも思っていた人なのに、つまらないの一言で片付けられてしまった。

「そうだよ!だっていくら美人だからって、自分の婚約者の姉に告白なんてするー⁈」

「そ、それは…!仕方がないわ。アビシオ姉様は美しくて、私はこの通り地味だもの」

自分で言って悲しくなってくるが、それが現実だ。

「それがそもそもの間違いだって言ってんの‼︎
もっと目を見開いて、愛を持って自分の事をちゃんと見てみなよ!
フォルティだって、美人なんだよ‼︎」

「そうかしら…?」

「そうなの‼︎」

間髪入れずに言われてしまった。

「周りがフォルティを愛していないんじゃないんだよ。
本当は自分が自分の事を愛してないんだよ。」

「………。」

他人にそう言われれば、ただ慰めの言葉だと流せるかもしれない。
しかし、これは前世の言葉なのだ。逃げる事は出来ない。

「大丈夫。これからは私も一緒だから。1人じゃないから。」

何も言えなくなった私に、前世の私が優しく語りかける。

「だから、一緒に生きよう」

その言葉に私は縦に首を振った。
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