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(ΦωΦ)かねやん

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タニマキ、アイドルになる2

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「さっき事務所に来たばかりのタニマキがセンター……?」

そう言っていぶかしがるまゆたん。

「なんか怪しさ満載だね」

デビルも、あまりにもうますぎる展開に、手放しで喜ぶ気にはなれない。

「それでは皆さん、次のライブに向けて頑張ってください」

ニャ木元康はにっこりと笑みを浮かべると、そのまま静かにレッスン場を後にした。

「そういうことなので、君たちには次のライブに向けて合宿に入ってもらいます」

講師が唐突にそう告げると、猫たちは一瞬きょとんとした後、ざわざわと騒ぎ始めた。

「え? まずいんじゃ……? 合宿に入られたら、当分この街に足止めだよ」

デビルはそう言って、不安げにまゆたんを見つめる。

「よし、僕に任せて!」

まゆたんはそう言うと、迷いなく講師のもとへ向かった。

「講師、すみませんが、タニマキは合宿に参加できません。僕たちは、旅の途中なんです」

まゆたんは一歩も引かず、まっすぐに講師を見つめて言った。

「何を言ってるんですか? あなたたちも、当然合宿に参加してもらいますよ?」

講師の言葉に、まゆたんとデビルは耳を疑った。

「なんで僕たちが? スカウトされたのは、タニマキだけですよ?」

まゆたんは、講師の予想外の言葉に戸惑いを隠せなかった。

「そうは言っても……あなた方は、きっと合宿に参加したくなりますよ」

講師が微笑んだ次の瞬間、まゆたんとデビルの視界がぐにゃりとゆがんだ。

「こ、これは……一体……?」

まゆたんは意識が遠のく中で、何とか抗おうとしたが――そのまま崩れるように倒れた。

二人が目を覚ますと、そこは見知らぬ建物の中だった。

大きな鏡と床一面に敷かれたダンスマット。

周囲では、ニャ木坂46の6期生に合格した猫たちが、必死にダンスのレッスンに励んでいる。

まゆたんとデビルは顔を見合わせた。どうやら――知らないうちに合宿所へと運ばれてしまったらしい。

タニマキが歌のレッスンを受けているのが見えた。

「ワテの小さな肉球~♪ ニャにもできニャいけど~♪ それでもみんなと力を合わせればニャ~♪ 何かできるニャ~♪ 何かできるニャ~♪」

「いいよ、いいよ~、タニマキくん!」

講師に褒められて、タニマキは実に生き生きとしていた。

「何やってるんだ、君たち! ライブまで、もう時間がないんだぞ!」

別の講師が、まゆたんとデビルに向かって、レッスンに参加するよう叱責した。

「むちゃくちゃだ! 僕たちはタニマキの付き添いで来ただけです! アイドルになりたいわけじゃありません!」

まゆたんはそう言ってレッスン場を出ようとした。

だが、黒い服を着た、体の大きないかつい三匹の猫たちが行く手をふさいだ。

「どこへ行くつもりですか? 合宿中は、この建物から出ることは許されていません。レッスンに集中してください」

まゆたんよりもはるかに体の大きなメインクーンが、低い声で威圧するように言った。

「こ、こんなこと許されると思ってるのか!」

思わずデビルが叫ぶ。

「落ち着け、デビル。今は引き下がるんだ」

まゆたんはデビルを制した。彼には、何か深い考えがあるようだった。

厳しいレッスンが終わり、ようやく夕食の時間になった。

腹ペコの猫たちが食堂に集まる中、まゆたんとデビルは早めに食事を切り上げ、ニャ木元康のいる部屋を探し始めた。

「あっ! あった! ここだ!」

まゆたんが、ドアに貼られた「ニャ木元康」のネームプレートを見て声を上げた。

すぐさま辺りを見回し、誰もいないことを確認する。

「よし。このドアに盗聴器を仕掛けよう。ちゃんと部屋の中の音も拾えるから」

まゆたんはそう言って、三次元ポケットから小さな金属板のような装置を取り出すと、ドアノブの下にそっと貼り付けた。

二人は寝室に戻り、盗聴器から送られてくる音声にそっと耳を澄ませた。

静かな部屋に、小さなノイズ混じりの声が微かに響く。

「……あいつらが……アンドゥ様を倒そうとしている……連中で……間違いないのか……」

「……はい……間違いありません……」

ニャ木元康と、タニマキにダンスを教えている講師の会話が聞こえてきた。

まゆたんとデビルは、緊張で思わずごくりと唾を飲み込んだ。

「よし、このまま計画通り、やつらを奴隷として教育し、アンドゥ様に捧げるのだ」

ニャ木元康の口から、信じがたい言葉が漏れた。

「了解しました」と講師。

まゆたんとデビルは、驚きのあまり言葉を失った。ニャ木元康が、まさかアンドゥの手下だったとは──

二人は急いで、疲れ果てて寝ているタニマキをたたき起こした。

「ニャ? なんニャ……? 明日も朝早くからレッスンがあるんやど……寝かせろニャ……ムニャムニャ」

「大変なんだ、タニマキ! ニャ木元康はアンドゥの手下だったんだ!」

寝ぼけるタニマキに対し、必死に現状を訴えるデビル。

「何言ってるニャ……そんなわけないニャ……」

タニマキは、大きなあくびをしたかと思うと、丸くなってまたスヤスヤと寝息を立てはじめた。

「もういい、強硬手段だ!」

まゆたんはタニマキをひょいとおんぶし、足早に寝室を出ていく。

デビルも慌ててその後を追った。
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