上 下
15 / 67

始動

しおりを挟む
 テレビで見た限りでは、ネルトと呼ばれる"人型機械"はまだいる様子は無い。
 けど、それは"本当"か?
 誰もが疑ってるはずだ。

 ヤツらの特徴として、"頭を食べてからその人物へと変貌"する。
 "赤いヤツ"はそれだけじゃなく、特殊能力も持ってる。

 もう誰かが襲われていて、"人間の姿"で紛れているかもしれない。
 ...常に近くにいるかもしれないって事だ。

 動画で見ただけの人は詳しく知らない分、俺たちは少し対応しやすいと思う...たぶん。
 問題は"どこまでやれるか"ってところだ。
 特に"赤いヤツ"。

 昨日たまたま発見した"あれ"が上手くいけばいいんだが...
 また一発勝負になる。
 最近、一か八かが多すぎて心臓に悪すぎる。

 その後、シンヤが起きてきたのは5時間ほど経過後。
 準備を済ませ、俺たちは今家を出ようとしている。
 時刻はAM10時を回ろうとしていた。

「それじゃ、準備はいいな?」
「おう!」
「うん」

 予約しておいたタクシーは国会議事堂へと進み始めた。
 宮下公園、渋谷ストリーム、スクランブルスクエア、スクランブル交差点、渋谷駅。
 そして、あの謎の"赤ビル"。
 過ぎ去る光景を見ていた俺は、一つ気になった。

「人、少ないな」

 人が昨日より明らかに減っていた。
 いつもの10分の1か?

 いや、それよりも少ないか?
 原因はもちろんここにいる全員が分かっている。

「危険だから、外に出ないって選択をしてる人が多いみたいね」
「まぁそうなっちまうよなぁ。アイツらに"いつどこで遭遇するか"、今じゃ分かんねえんだしよ」
「だけど...家も"完全に安全"ってわけじゃないのよね」
「そうなんだよなぁ。今はまだ安全っぽいけどいつ来るか分かんねぇ。昨日100万貰って、みんな喜んではずなのになぁ」

 楽しそうだった。
 嬉しそうだった。
 ...昨日までは

「ねぇ、一つ気になってる事があるの」

 ユキは隣に座る俺に顔を近づけて言ってきた。
 ちなみに、前の席にはシンヤが座っている。

「ん?」
「総理はなんで"2回"会見したのかな? 2回目はせずに1回だけして、隠して人間をやればいいのに」
「今時そんな事やってもすぐバレるだろうな。カメラやドローンも多いし、ネットだって早い。それだったら、先に言って"現状の状態"にしようとしたんだろう」
「確かにそうね...つまりは、"あえて多くの人が家から出ないようにした"ってこと?」
「だろうな。総理はこうなる事を予測してたはずだ」
「後、これは俺の考えだけどよぉ。大勢いる場所あんじゃん? 駅とか空港とか色々。そこだと余計にすぐバレちまうだろうし、そこらの人を"家に置ける"ってデカいんじゃね?」
「シンヤ君にしては珍しく良い発言ね」
「珍しくってなんだぁ!? 俺は常に良い事言ってんだろ!?」
「そう?」
「俺の時だけひどすぎんだろ!! なぁルイ!?」
「...」
「なんか言えよ!? 無視!?」

 そうこうしているうちに、タクシーは国会議事堂近辺へと来ていた。
 ここで予想と"一つ違っている部分"があった。

 もっと"車とか人とか多い"ものだと思ったんだ。
 リーク情報は広まってるし、総理に訴えかけたり何かしらしようとする人で溢れると予想していた。
 その状態の中、どさくさに紛れて奥に入ってやろうという考えが一つあった。

 が...
 これはなんだ?

 全くと言っていいほど周りにはいない。
 明らかに不自然だった。

「意外とガラガラね。この信号を行けばスッと行けちゃいそうだけど...」
「どうするよ、ルイ? このまま一気に前まで行っちまうか?」
「いや、ここで止まろう」

 嫌な予感がした俺は、一旦タクシーを止めて外に出た。
 そして、国会議事堂が見える場所まで歩いた。
 すると...

「どうしたの、ルイ?」
「なんかあったか!?」

 目の前に見えるモノ。

「なに...あれ...」

 知っている"それ"では無かった。
 "真紅に染まった国会議事堂"。

 それだけじゃない。
 "もっとヤバいの"が国会議事堂前にいる。

 ..."竜?"
 その"竜?"はこっちを向き、背中に付いている2つの大砲から謎の大きな物体を発射した。

 その物体は大きな放物線を描きながら、ゆっくりとこっちへ飛んできているように見える。
 いや、飛んできている。

「おい!!! 全員早くタクシーに乗れッ!!!」

 危険を感じ、すぐに乗った俺たち3人は一旦バックし、引き返した。
 突如、手前で巨大なメテオが2つ落下し、溶けるようにして消えていった。
 地面に跡は一つも残っていない。

「危なかったなぁ! なんだありゃぁ!?」
「ドラゴンだったわよね? なんであんなのがいるの?」
「...わからない」

 誰もいなかった原因。
 ...アイツのせいだったのか

 近付こうとすると、アイツが迎撃してくるってことかよ。
 終わってんな、マジで...

 それじゃどうやって行く?
 もう一回挑戦してみるか?

 次は俺がタクシーを操作して、飛ばして進めば...
 考えていると、タクシーの窓をコンコンと叩く音がした。

「君たち! もう"あの場所"に行くのはやめなさい!!」
しおりを挟む

処理中です...