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竹下

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「うぉ! こっからだと、なんか"赤くてデカいの"がよく見えるな!」
「...似てるわね、アキバや渋谷のと」

 この原宿駅竹下口改札からだと、全貌が見える。
 ユキと見てきたあの"赤ビル"、そのまんまだ。

 中には何があるのか。
 とうとう今日、アレに入るわけか...

「アレって、ツイッターとか動画でめちゃくちゃバズってませんでした? "AIだけ"で造られたそうですね」
「らしいよなぁ! 俺らが一番に中を拝んでやろうぜ!」
「それもいいが、まずは"目の前のコレ"が気になるな」

 竹下通りにも連なる多くの人。
 今までの日本だったら、観光客や旅行客などでいっぱいになるのは分かる。
 でも、今こうなるのはさすがにおかしい。

 それだったら、渋谷に全く人がいないっていう、説明がつかない。
 ここがこんなにいるんだったら、あっちにも多くいるはずだ。
 東京駅周辺だってそう。

「ルイ、一人で突っ走っちゃダメだからね?」
「わかってるって」

 俺とシンヤが先を行き、ユキとヒナが後ろから続く。
 適当に今竹下通りを歩いてみてはいるが、周りの人たちは普通に観光を楽しんでいるように見える。

 当たり前の光景だったはずなのに、違和感しかない。
 まさか、ここにいる人だけ"影響を受けない"ようになってるとか?
 そんなことあるのか?

 【タイムリミットまで後20分】

「シンヤ、誰でもいいから話しかけてみてくれよ、本当に人なのか確かめてくれ」
「え、俺が!?」
「お前得意だろ、こういうの」
「え~、別に得意でもねぇぜ?」

 と言いながらも、シンヤはポニーテールの女性に話しかけに行った。
 この違和感を拭うには、シンヤくらいコミュ力あるヤツがやった方が分かりやすい。

「シンヤ君、似合うわね」
「ほんとはあーやって裏で毎日ナンパしてたんじゃね?」
「ぷっ、はは」

 ユキに笑われるシンヤ。
 あれだけ一緒に遊んできたのに、実は裏でやってたら最高すぎる。

 【タイムリミットまで後16分】

 数分後、シンヤが戻って来た。

「なぁ、俺は"普通の人"にしか感じなかったぜ?」
「...」
「おい、ルイ?」

 普通の人。
 なら、なんであの人は"アイツら"に襲われてないんだ?
 俺は"この方向を見ろ"と、顔でグイっとジェスチャーした。

「ん? ...違った、のかよ」

 シンヤは赤く細長い銃を出す。
 それに伴い、俺、ユキ、ヒナもそれぞれの武器を出した。

「ねぇ、あっちにもいる!」

 ユキの指さす方に視線を向けると、同様に10体ほどのネルト集団がいた。
 マズいな、ここに時間を割くわけにはいかない。
 ...ここは

「俺とヒナで左を、シンヤとユキで右だ!」
「おう!」
「わかったわ!」
「よし、やるぞ!」
「はい!」

 【タイムリミットまで後12分】

「ルイさん! ここは私がやってもいいですか!? いけそうなんです、コレなら!」

 ヒナは天使の槍を掲げ、光らせた。
 赤と青と黄の三翼が広がり、半透明のウェディングベールが展開されていく。

「そんじゃ、その新しい槍をぶっ放してやれ!」
「はい!」

 結論から言うと、3分かからないほどでヒナは倒してしまった。
 白い雨を降らせたり、先端から巨大剣を出して振り回したり、槍を伸縮させて突撃したり、終始ヤバかった。
 ここに来るまでに教えた"ズノウの使い方"も、ちゃんと分かってる。

「やっぱりELマークの武器って、強いです...!」
「それもあるけど、ヒナの戦い方が上手いよ」
「いえいえ、それもルイさんが"コレ"をくれたおかげです! ありがとうございます!」
「これからもよろしくな。ちょうどあっちも終わったみたいだし、"赤ビル"の方に行こう!」
「あ、ルイさん、ちょっと待ってください!」
「どうした?」
「これ見てください!」

 ん?
 おい、これって...
 そこには"さっきからの違和感の正体"があった。

「急に入ってきたから攻撃当たっちゃって、そしたらこれが...」
「...ってことは、ここにいるヤツら全部...! "ネルト"か!?」

 避けた腹部から、大量の精密機器やICチップに見えていた。
 やっぱ、人じゃなかったんだ。

 だけどコイツら、"俺らを襲う"気配が全くない。
 だって今、俺たちの横だって、何事も無かったように普通に素通りして行ったぞ?

 意味が分からなかった。
 これじゃまるで、"新経済対策が始動する直前までの光景"のような...

 くそッ!
 もう考えてる時間は無い!

 着く頃には、【タイムリミットまで後3分】の状況だった。
 なんとか間に合った、が、予想外の人物がそこにいた。

「へぇ、君たちは"ここ"に用が?」
「あなたは...!! 紀野大臣!? なんでこんなところに!?」
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