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借家の憑き者
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父の仕事の都合で引っ越しが多く家を買うことができず、私たち一家は借家に住むことになった。
その借家はぼろぼろで、壁は手で触ると土が付くほどに痛んでいた。
隙間風もひどく冬は寒い。この地域は夏はすごく熱いと聞いていた。
いいところがひとつもないと感じた。
正直、もっと良い家に住みたいと思っていた。
しかし、家にお金がないということを子供ながらに感じていたので、そのことを口にすることはできなかった。
ある日の夕方、両親がお通夜に行くというので私は一人で留守番をすることになった。
正直、この家に一人でいたくなかった。
何故なら二階に”いる”からだ。
・・・私は視てしまった。
引っ越してきた日に、今まで感じたことの無い気配がしたのだ。
この借家は二階建てだ。
だが、大家さんからきつく二階に立ち入ることを私たち家族は禁じられていた。
一階でも父、母、私が住むにはある程度の広さはあった。
格安な借家なので父と母は、二階への立ち入り禁止の件は対して気になっていないようだった。
転勤が多いので私たちの家は最低限の荷物しかない。
そのことから、私自身も不便には感じていなかった。
”あれ”と会うまでは。
二階へ続く階段にはロープが張られ、立ち入り禁止と書かれた札が階段の壁に貼ってあった。
好奇心から階段を見上げていると、何かが通り過ぎた気がした。
階段は昼でも暗く、階段の電球も外されており、何も見えない。
そのはずだった。
しかし、はっきりと私には”視えた”。
見知らぬ女性が通り過ぎるのを。
そのことを、両親に話したのだが信じてはくれない。
だから、自分の目でもう一度確かめることにした。
今思うとなぜそんなことをしたのかと後悔することしかできない。
両親に話をした次の日、信じてもらえないことが悔しくて二階に行った。
手すりはなく急な階段は、上りにくそうだった。
勇気を出して縄をくぐり、母に見つからないよう身をかがめ、足音が鳴らないようにゆっくり進んだ。
それでも少し木が軋む音が出る。
二階の部屋は三部屋あった。
木でできた引き戸は、何とも言えない匂いがした。
例えるなら、何かが腐ったような匂いだ。
部屋の扉には鍵などで施錠はされていない。
子供の私でも開けられると思ったのだが、その戸は重くてびくともしない。
諦めてほかの部屋を開けようとしたが、どこの部屋の戸も開かない。
仕方なく一階に戻ろうとした。
階段を降りようと足を一歩踏み出そうとしたときに、冷たいものが首を圧迫した。
全身の血の気が引く感覚に襲われた。
恐怖で顔をゆがめながら振り返ると顔のない女が私の首を絞めていることを知った。
慌てて、全身の力を籠めてその女を押した。
次の瞬間、首を圧迫した女は消えた。
しかし、私の身体は階段から転がり落ちた。
その音を聞いた母は急いで廊下に転がっている私を抱き起こした。
幸いなことに怪我はなかった。
その後、二度と二階に行くことはなかったが、気配を感じることが増えた。
はじめは、階段の一番うえにいた。
けれど、徐々に一階に近づいている。
両親はそのことには気づいていない。
私は、留守番中にあの女が一階に降りてこなければいいと祈るばかりだ。
その借家はぼろぼろで、壁は手で触ると土が付くほどに痛んでいた。
隙間風もひどく冬は寒い。この地域は夏はすごく熱いと聞いていた。
いいところがひとつもないと感じた。
正直、もっと良い家に住みたいと思っていた。
しかし、家にお金がないということを子供ながらに感じていたので、そのことを口にすることはできなかった。
ある日の夕方、両親がお通夜に行くというので私は一人で留守番をすることになった。
正直、この家に一人でいたくなかった。
何故なら二階に”いる”からだ。
・・・私は視てしまった。
引っ越してきた日に、今まで感じたことの無い気配がしたのだ。
この借家は二階建てだ。
だが、大家さんからきつく二階に立ち入ることを私たち家族は禁じられていた。
一階でも父、母、私が住むにはある程度の広さはあった。
格安な借家なので父と母は、二階への立ち入り禁止の件は対して気になっていないようだった。
転勤が多いので私たちの家は最低限の荷物しかない。
そのことから、私自身も不便には感じていなかった。
”あれ”と会うまでは。
二階へ続く階段にはロープが張られ、立ち入り禁止と書かれた札が階段の壁に貼ってあった。
好奇心から階段を見上げていると、何かが通り過ぎた気がした。
階段は昼でも暗く、階段の電球も外されており、何も見えない。
そのはずだった。
しかし、はっきりと私には”視えた”。
見知らぬ女性が通り過ぎるのを。
そのことを、両親に話したのだが信じてはくれない。
だから、自分の目でもう一度確かめることにした。
今思うとなぜそんなことをしたのかと後悔することしかできない。
両親に話をした次の日、信じてもらえないことが悔しくて二階に行った。
手すりはなく急な階段は、上りにくそうだった。
勇気を出して縄をくぐり、母に見つからないよう身をかがめ、足音が鳴らないようにゆっくり進んだ。
それでも少し木が軋む音が出る。
二階の部屋は三部屋あった。
木でできた引き戸は、何とも言えない匂いがした。
例えるなら、何かが腐ったような匂いだ。
部屋の扉には鍵などで施錠はされていない。
子供の私でも開けられると思ったのだが、その戸は重くてびくともしない。
諦めてほかの部屋を開けようとしたが、どこの部屋の戸も開かない。
仕方なく一階に戻ろうとした。
階段を降りようと足を一歩踏み出そうとしたときに、冷たいものが首を圧迫した。
全身の血の気が引く感覚に襲われた。
恐怖で顔をゆがめながら振り返ると顔のない女が私の首を絞めていることを知った。
慌てて、全身の力を籠めてその女を押した。
次の瞬間、首を圧迫した女は消えた。
しかし、私の身体は階段から転がり落ちた。
その音を聞いた母は急いで廊下に転がっている私を抱き起こした。
幸いなことに怪我はなかった。
その後、二度と二階に行くことはなかったが、気配を感じることが増えた。
はじめは、階段の一番うえにいた。
けれど、徐々に一階に近づいている。
両親はそのことには気づいていない。
私は、留守番中にあの女が一階に降りてこなければいいと祈るばかりだ。
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