Giftbiene【ギフトビーネ】

文字の大きさ
58 / 209
exd5

58話

しおりを挟む
 なんで元々の目的から外れてしまったんだろう。ショックだったとはいえ、身体を売るんなんてありえないのに。なんで『よかった』なんて思ったんだろう。私、どうしちゃったの……?

 自宅に帰ってからも、布団にくるまり、ただ時間が過ぎるのを待つ。電気は点けない。このまま一日じゃなくて、一年、一〇年過ぎてくれればいいのに。一五〇〇ユーロ以上のものを失った気がする。

「うっ……うっ……!」

 悪いのは自分。なにもかも自分。全て自分。全て失った。誰にも話せない。誰も助けてくれない。

「……」

 誰か……助けて……タスケテ……!

「なんで……どうして……!」

 握った拳。爪が掌に食い込む。でも、だからなんだろう。お金も、時間もなにも返ってこない。誰に言えばいい。誰が助けてくれる? 誰でもいい、誰でもいい……!

 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて——

「ウルスラ、起きてる?」

 母が部屋に入ってきた。電気はそのまま。

 ……なんだろう。いっそ、母には話したほうがいいのだろうか。このままだと、家のお金にまで手をつけてしまうかもしれない。なにか手立てがあるのかもしれない。

「……なに……?」

 答えが出ず、とりあえずは、まるで今起きたかのように返事をする。布団にくるまったまま。自分の顔を見せることができない。心配をかけたくない。お願い、話を聞いて。お願い、なにも聞かないで。
 
「あんた、今日誕生日でしょ。なにも言ってこないけど、忘れてない?」

 ……そうだ。今日は私の誕生日。一六歳になる。まさかこんな気分で迎えることになるなんて。ごめんなさい……ごめん、なさい……!

「ほら、これ」

 そう言った母が、ベッドになにか置いた。なんだろう、誕生日プレゼント? 私の趣味とか、なにか知ってたっけ……? なんだろう……受け取り、たくない。受け取れない。と、心で思っても、受け取る。本当の私のことを知らない母には、今まで通りでいたい。

「……ありがと」

 精一杯に元気を出したつもりだったが、大丈夫だろうか。バレてない? もぞもぞと布団から手だけ出し、さっと布団の中へ。ラッピングされている。それもそうか。暗くて見えないが、リボンをほどき、中のものを取り出す。柔らかく、温かい。肌触りもいい。

「……これ」

「なんか最近、ファッションとか凝りだしたみたいだから。お母さん、よくわからないけど、人気のモデルさんが愛用してるやつらしいから。だったら間違いないでしょ?」

 マフラーだ。見えないが、たぶんどこかのブランドものか。ファッションとか全然興味のない母が、調べて買ってきてくれた、ということ。え、ホントに? 呆然としながら、無意識に首元に巻いてみる。布団を被りながらだと、少し暑い。

「あんたが使ってたやつ、どっかやっちゃったみたいだし。ちょうどよかった、のかねぇ?」

 母が、おそらく首を傾げながら言う。気づいていたんだ。結局、今まで使っていたマフラーは見つからなかった。どこにいったんだろう。どこかに置いてきてしまった、ということはないだろうけど。母は、私のことを見ていてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...