144 / 209
Qd8
144話
しおりを挟む
むふ、っと機嫌を良くした老婆は、駒を使い、動かしながら一気に捲し立てる。
「◆ルークc8、◇ポーンd5、◆ポーンd5、◇ナイトa4、◆ナイトd4、◇ナイトc3、◆クイーンe7、◇ルークe1、◆ナイトc2、◇ルークf1、◆ナイトa1、◇クイーンa1、◆ルークd8、◇ビショップf3、◆ビショップa3……ってところかね。ここで白のリザイン。お嬢ちゃんの勝ち。大したもんだよ」
と、肩を叩いてシシーの勝利を讃える。
「どうも。だそうだ。俺の勝ち」
涼しい顔でそれを受け入れるシシー。終わった。これで静かに過ごせる。
だが、当然受け入れられない側の人間もいるわけで。憤慨するのはサーシャ。
「ちょっとちょっと! そんなのわかんないじゃん! そりゃまぁ……そうなる可能性もあるけど……」
わかっている。◆ナイトc2。あれが痛かった。あそこを突かれると、先を見渡せば、ディスカバードアタックやらスマザートメイトやらで、一気に評価値が分かれたはず。もちろんシシーは見逃さないだろう。だが、それでも実際にやったわけではないので、納得はいかない。
だが、腑に落ちないのはシシーも一緒。
「素晴らしい読みだ。おそらくそうなっていたであろうし、俺の読みと寸分違わない。リザインまでな。何者? 大会の参加者?」
手触りだけで駒を判別し、なおかつ流れも読み切る力。どう考えても並の指し手ではない。警戒レベルを上げる。
だが、老婆は立ち上がると、再度シシーの肩に手を置いた。
「あんたの師匠に聞いてみな。あたしはよくここいらにいるからね、それと——」
「……ん? なに?」
そして、不機嫌そうにテーブルに突っ伏すサーシャを覗き込むと、当の本人もそれに反応する。いや、見えていないから、覗き込むという表現もおかしいが。
「いいや、なんでも?」
それだけ言って、老婆は街中に静かに去っていく。かなり遠くなっても、うっすらと色だけで判別できるくらいには、衝撃と印象を残していった。
その背中を見送りつつも、シシーは勝利ということで満足。
「そういうわけだ。俺の勝ち。自分で言ったことだ、守れ」
と、帰宅を促す。そして今後、会うことがありませんように。
だが、老婆がいなくなったことで、唖然としていたサーシャも息を吹き返す。
「……いや、納得いくわけないよね。シシーも読み間違えたかもしれないのに。そしたら僕の勝ちだ」
九割はその通りに進んだだろう。だが、勝負は二人だけのもの。なにが起きたかわからない。せっかく乗り気じゃない相手を誘えたのに。
「◆ルークc8、◇ポーンd5、◆ポーンd5、◇ナイトa4、◆ナイトd4、◇ナイトc3、◆クイーンe7、◇ルークe1、◆ナイトc2、◇ルークf1、◆ナイトa1、◇クイーンa1、◆ルークd8、◇ビショップf3、◆ビショップa3……ってところかね。ここで白のリザイン。お嬢ちゃんの勝ち。大したもんだよ」
と、肩を叩いてシシーの勝利を讃える。
「どうも。だそうだ。俺の勝ち」
涼しい顔でそれを受け入れるシシー。終わった。これで静かに過ごせる。
だが、当然受け入れられない側の人間もいるわけで。憤慨するのはサーシャ。
「ちょっとちょっと! そんなのわかんないじゃん! そりゃまぁ……そうなる可能性もあるけど……」
わかっている。◆ナイトc2。あれが痛かった。あそこを突かれると、先を見渡せば、ディスカバードアタックやらスマザートメイトやらで、一気に評価値が分かれたはず。もちろんシシーは見逃さないだろう。だが、それでも実際にやったわけではないので、納得はいかない。
だが、腑に落ちないのはシシーも一緒。
「素晴らしい読みだ。おそらくそうなっていたであろうし、俺の読みと寸分違わない。リザインまでな。何者? 大会の参加者?」
手触りだけで駒を判別し、なおかつ流れも読み切る力。どう考えても並の指し手ではない。警戒レベルを上げる。
だが、老婆は立ち上がると、再度シシーの肩に手を置いた。
「あんたの師匠に聞いてみな。あたしはよくここいらにいるからね、それと——」
「……ん? なに?」
そして、不機嫌そうにテーブルに突っ伏すサーシャを覗き込むと、当の本人もそれに反応する。いや、見えていないから、覗き込むという表現もおかしいが。
「いいや、なんでも?」
それだけ言って、老婆は街中に静かに去っていく。かなり遠くなっても、うっすらと色だけで判別できるくらいには、衝撃と印象を残していった。
その背中を見送りつつも、シシーは勝利ということで満足。
「そういうわけだ。俺の勝ち。自分で言ったことだ、守れ」
と、帰宅を促す。そして今後、会うことがありませんように。
だが、老婆がいなくなったことで、唖然としていたサーシャも息を吹き返す。
「……いや、納得いくわけないよね。シシーも読み間違えたかもしれないのに。そしたら僕の勝ちだ」
九割はその通りに進んだだろう。だが、勝負は二人だけのもの。なにが起きたかわからない。せっかく乗り気じゃない相手を誘えたのに。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる