203 / 209
Nf6
203話
しおりを挟む
強気な姿もやはりいい。今度は満面の笑みでサーシャは直立。
「はいはーい。僕もここでは『替え玉』ではなく、リディア・リュディガーとして楽しませてもらうよ。ま、それ自体替え玉なんだけど。じゃ、また夜に」
そう告げると、どこかに消えていく。煌めく水面と噴水の音だけが残った。
静かな午後。少し肌寒い。無意識にドイツの方角の空をシシーは見つめる。
「……」
ララは大丈夫だろうか。一週間空けると伝えたら、まさかあんなに取り乱すとは。落ち着かせるのに大変だった。考えたいことは他にも。アニエルカさんとユリアーネさんはちゃんとやれているだろうか。お金とか。買いたいものやお土産代なんかも——
「あなたがシシー・リーフェンシュタールさん?」
ふとその背後から凛とした女性の声色。
考え事をしていて対応が遅れたシシー。ゆったりと振り返る。
「そうだけど。どういったご用件で? いや、用件なんてどうでもいい。話そうか」
そのベンチの横をポンポンと叩く。他も空いているが、離れたところを勧めるのも悪いし。
小さく感謝しつつ、その人物は姿勢良く腰掛ける。そして目線が合う。
「話では聞いていたけど。すごい美人だとか。なるほど、たしかに」
足先から頭の先まで、頷きながら視界に収める。なるほど。一分の隙も見当たらない、計算し尽くされた美の彫刻。陰と陽、両方持ち合わせているような形容し難い妖しさ。
だが、その言葉に多少の棘をシシーは感じた。そう褒めてくれた人物の、モンフェルナの制服に包まれた全身をお返しに味わう。
「そういうキミも。まるでモデルのような佇まいだ」
見事なプロポーション。『可愛さ』と『美しさ』を両方兼ね備えた笑みには『小悪魔』的な要素も混じり、より惹きつけられる。
モデル。その言葉に女性はちょっとだけ苦々しく反応。
「一度ストリートスナップで撮られたくらいよ。尾鰭がついて、モデルデビュー、なんて噂がまわってたりするらしいけど。レティシア・キャロル。よろしく」
座るまでのたった数歩の歩き方にも、美しさと気品を纏っているようだ、と感じたシシー。近くに本職もいることで、自然とそういうものには敏感になっていた。
「おやおや。未来の大スターの卵に出会えたわけだ。戻ったら自慢させてもらうよ」
お世辞でもなんでもなく。間違いなく世界へ羽ばたける資質は感じる。ララにでも教えたら、ここまで飛んできそうだ。
驚くほど流暢なフランス語に舌を巻くレティシア。自身も授業でドイツ語は習っているが、ちょっとここまでは到底無理。よかった、そっちで話しかけなくて。
「ま、何十回もすでに聞かれただろうけど。どう? こっちは」
当たり障りのないことから。別に姉妹校から来た人物を探していた、というわけではないため、特に質問は考えていなかった。なので無難に。
「はいはーい。僕もここでは『替え玉』ではなく、リディア・リュディガーとして楽しませてもらうよ。ま、それ自体替え玉なんだけど。じゃ、また夜に」
そう告げると、どこかに消えていく。煌めく水面と噴水の音だけが残った。
静かな午後。少し肌寒い。無意識にドイツの方角の空をシシーは見つめる。
「……」
ララは大丈夫だろうか。一週間空けると伝えたら、まさかあんなに取り乱すとは。落ち着かせるのに大変だった。考えたいことは他にも。アニエルカさんとユリアーネさんはちゃんとやれているだろうか。お金とか。買いたいものやお土産代なんかも——
「あなたがシシー・リーフェンシュタールさん?」
ふとその背後から凛とした女性の声色。
考え事をしていて対応が遅れたシシー。ゆったりと振り返る。
「そうだけど。どういったご用件で? いや、用件なんてどうでもいい。話そうか」
そのベンチの横をポンポンと叩く。他も空いているが、離れたところを勧めるのも悪いし。
小さく感謝しつつ、その人物は姿勢良く腰掛ける。そして目線が合う。
「話では聞いていたけど。すごい美人だとか。なるほど、たしかに」
足先から頭の先まで、頷きながら視界に収める。なるほど。一分の隙も見当たらない、計算し尽くされた美の彫刻。陰と陽、両方持ち合わせているような形容し難い妖しさ。
だが、その言葉に多少の棘をシシーは感じた。そう褒めてくれた人物の、モンフェルナの制服に包まれた全身をお返しに味わう。
「そういうキミも。まるでモデルのような佇まいだ」
見事なプロポーション。『可愛さ』と『美しさ』を両方兼ね備えた笑みには『小悪魔』的な要素も混じり、より惹きつけられる。
モデル。その言葉に女性はちょっとだけ苦々しく反応。
「一度ストリートスナップで撮られたくらいよ。尾鰭がついて、モデルデビュー、なんて噂がまわってたりするらしいけど。レティシア・キャロル。よろしく」
座るまでのたった数歩の歩き方にも、美しさと気品を纏っているようだ、と感じたシシー。近くに本職もいることで、自然とそういうものには敏感になっていた。
「おやおや。未来の大スターの卵に出会えたわけだ。戻ったら自慢させてもらうよ」
お世辞でもなんでもなく。間違いなく世界へ羽ばたける資質は感じる。ララにでも教えたら、ここまで飛んできそうだ。
驚くほど流暢なフランス語に舌を巻くレティシア。自身も授業でドイツ語は習っているが、ちょっとここまでは到底無理。よかった、そっちで話しかけなくて。
「ま、何十回もすでに聞かれただろうけど。どう? こっちは」
当たり障りのないことから。別に姉妹校から来た人物を探していた、というわけではないため、特に質問は考えていなかった。なので無難に。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる