14 Glück【フィアツェーン グリュック】

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花と衣装。

103話

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「てことは、ユリアーネさんのディアンドルが見れるってことっスか!?」

 アニーの気づいてしまった事実に、「しまった」とユリアーネは冷や汗を流す。

「……場合によっては」

 混まなければ着なくていい。祈るのもおかしい話だが、できれば着たくない。

 しかし、アニーはもうその気になって、ひとりで盛り上がっている。明日も頑張れそうな気がする。

「行きましょう! 明日は休みっスよね!? 店長とテオさんにはボクから言っておくっス!」

 ユリアーネには休んでもらう、とダーシャに提案していたはずだが、事情が変わった。疲れ? それは働いて吹き飛ばせばいい。

 言ってしまった手前、とりあえず行くことは確定してしまった。ユリアーネは少し覚悟をする。

「……早く寝ましょう。明日は七時には出ますよ」

「はいっス! いやー、楽しみですねぇ」

 何色かなー? と、すでに着ることになっているアニーの脳内。今日の疲れはもうない。早く明日になれ。ポジティブなことしか考えられない。

 ふぅ、と息を吐き、焦りを見せるユリアーネだが、楽しみもある。

「……私も、アニーさんのディアンドル、楽しみです」

 聞こえないようにそっと呟く。心に留めておく。

「ふふふ」

 もうすでに想像する世界に飛び込んだアニーは、緩みきった顔の筋肉が戻らず、そのまま眠りにつく。

 †

 日曜日はドイツでは基本的に休日で、サービス業であってもそれは変わらない。しかし、カフェやレストランは開いているところも多々ある。観光客が多いこともあり、そういったところはうまく調整してあるのだ。
 
 都心部ではないが、食に関することはなんでも請け負うブッフは、日曜日も開いている。カフェでは、モーニングセットを用意しているところは多いが、そこも完備。朝は九時からやっている。
 
「いいところですね。とても落ち着きます。風が爽やかです」

 昨夜、アニーから聞いていた風車。そしてそこからの眺め。朝早く、吐く息も白い。少し肌寒いが、空気が澄んでいて気持ちいい。自分のアパートはどっちだろう、とユリアーネは遠くまで見渡す。

「ですよね。小旅行って感じがします。初めての旅行っス」

 ユリアーネと二人きりの、という修飾語はつけないでおくが、この場所が二回目のアニーも、昨日と違う朝の時間の眺めを楽しむ。

 しかしそこはユリアーネがしっかりと釘を刺す。

「旅行ではないですよ。アニーさんは仕事、私は必要があればお手伝い、というだけですから。気を抜かないでください」

 あくまで仕事、ということを強調する。そして、自分はディアンドルは着ない、と念じる。
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