14 Glück【フィアツェーン グリュック】

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花と衣装。

110話

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 とはいえ、ここはテオがいるからこそ成り立っている店。

「そしたら、こっちの店が休みになっちゃうでしょ」

 ダーシャが鋭くツッコむと、

「そりゃそーか」

 と、テオも苦笑する。新しい責任者を雇えれば、色々余裕もできるかもしれない。

「テオ」

 ヴァルトから持ってきた服などをカバンから出しながら、目線を合わせずにダーシャは声をかける。

 咄嗟に「ん?」と、テオは反応した。

「おめでと」

 ダーシャはそれだけ伝え、ドアを開けて通路からバックヤードへ。急いで着替えて入らなくては。

 とりあえず、肉を焼いて盛り付けをしよう。そしたら交代だ。テオは最後の仕事をこなしつつ、

「……ありがとう」

 と、小さく呟いた。

 †

 時刻は一五時。アニーとユリアーネは残り一時間ほど。テオは常連客達に囲まれ、どんちゃん騒ぎをしている。ダーシャもある程度店のことはわかるため、料理や酒の提供も滞りなく営業している。

 少し落ち着いてきたこともあり、ユリアーネは二階の清掃や本の整理など、食事以外のことも進めることにした。そして外に一度出ると、店の前で立ち止まり、引き返して行く女性を見かけた。背後から声をかける。

「……パウラさん、ですね。どうぞ」

 ユリアーネが想定していた通りの、少しふくよかになりつつある風采。低い踵の靴。迷いながらも、店を覗いていたこと。それらが全てカチリとハマる。

 少し驚きながら、パウラと呼ばれた女性は振り返る。

「あ、いや、ごめんなさい。よくわかりましたね。昨日今日とごめんなさい。少し体調がよくなったから、来てみたんだけど……なんか入りづらくて」

 その慌てふためく姿を制しつつ、ユリアーネは中へ促す。

「きっと、みなさん待ってますよ。とはいえ、静かな席にご案内します。カウンターで」

 大騒ぎしたいのは国民性だが、そこは控える。ゆったりと大好きな店で過ごす時間。パウラは首を縦に振った。

「……ありがとう、ございます」

 そして足元に気を付けつつ入店すると、それを見つけた常連客の男性達が呼びかける。

「パウラ! 大丈夫か、こっちこっち!」

 しかし、事情がわかっている周りの人間達がそれを制する。

「いやいや、静かな席にしてあげましょうよ。だって、ねぇ?」

 そう言われると、たしかに、と男性達も静かに頷く。無理はさせられない。

「……うん、まぁ、そうか。まぁいい、好きなもの頼みな!」

 と、パウラにご馳走をする。こういう時に使うお金は惜しくない。村全体で娘のようなもの。
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