スケルトンとして生きるには、少しだけ狂っていなきゃいけない

ピモラス

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輪の中にある

狩り

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 …
 二人の男たちが目の前にいる。 
 おそらく二人。景色はぼやけていてピントが合わない。 
「うわ、すごいな。生前の記憶があるのか」
「しかし、生贄の記憶も混同しているように見えるな」
「生贄って言っても、かなりの数だけど、そんなものが混ざってしまっては自我が崩壊してしまわないかな」
「いや、君が持ってきてくれた魂は強い。あれは一体?」
「ああ、あれ?あれはね…」 
 …






 …
 視界の奥に、またあの記憶が滲む。
 たまに浮かぶ謎の記憶。
 軽く頭を振り走る。
 走って追う。
 その小さな緑の背中を。
 追い、その肩に骨の指先を食い込ませ、背中をひっかき、突く。
 倒れたそいつの角の掴み、地面に叩きつける。
 何度も、何度も。

 こいつらは弱い。
 赤い影に誘われるように、森に入るとこいつらはいた。
 矮小な体躯に、緑の肌。吊り上がる目ととがった耳。
 緑のきたない肌に、大きなよごれた口。
 ゴブリンだ。
 何かを食っていたのか?
 赤黒い肉片を食い散らかしていた。だが、それが人間のものか動物のものかはわからない。
 しかし、俺に気付くと、「ギャーギャー」と騒ぎ、襲い掛かってきた。

 粗雑なこん棒をただただ振り回す。
 力も弱く、速度もないそんな攻撃など当たる間抜けがいるのか。
 俺は地底から湧き上がるような怒りを押さえ、殺した。
 腹を蹴り上げ、目を付き、躱し、殴る。
 緑の皮膚を付着させた肉片と血が周囲に散らばる。

 足を掛け、転ばせたやつの頭を踏み砕く。
 頭蓋が砕け、脳漿が飛び散る。
 やつ、やつに砕かれた事を思い出し、怒りに震え拳を固めた所で、やつらは逃げ出した。

 はじめは二十程いたはずだが、俺が六人目を赤じゃない色にした所で、散り散りに逃げ始めた。
 武器を捨て、森をかき分けて逃げるその姿を、俺はすぐに追う。
 赤く見えるお前たちが逃げられるのか。逃がすものか。

 走り背中を追い、掴み、突き、殴る。
 四本足で地を這うように走り、足首を掴み、そのまま地面に叩きつける。
 顔を殴り、皮膚を引き裂き、腹を破裂させ、殺した。

 木の上に逃げたやつらの下で、俺は佇む。
 頭上に見える二つの赤い影に苛立ちながらも、俺はどうやって殺してやろうかと考え、気分を落ち着かせる。
 木の上で「ぎゃぎゃ」っと会話をしているようだ。
 くっくっく
 その話している口を引き裂こうか。
 それとも…

 やつらは別々の方向に飛び降りた。
 そして、そのまま振り返らずに別の方角を目指して走る。

 ばかめ
 俺から逃げれられると思っているのか、生者め

 赤い色が俺を導く。
 俺は近い方をまずは追う。
 走るスピードは俺の方が早い。
 茂る草も茨も俺には関係ない。
 つま先だけで走る俺。逃げるゴブリン。
 なんだ?前方に大きな赤い影。
 ゴブリンはそこに向かっているのか?


 木々の間を抜け、草原を駆ける。
 視界が開ける。
 小さな赤い影は、大きな赤い影の後ろに隠れる。
 こいつはオーガか?

 でかい
 俺の倍はあるのか
 怒りに駆られ、脚が音もなく地を蹴る。俺の視界には赤い影しか映らない 
 顔の高さに見える股間を打つべく緩く拳を握る。
 掴みかかろうとする鈍重なオーガの足元で、俺はオーガの股間を殴る。

「グオオオオ」と吠えたオーガの動きは早かった。
 殴った手ごたえはあった。
 しかし、暴れるオーガに蹴られ、踏まれ、片足を失った。
 だから、なんだ
 俺は地面に指を食い込ませ、オーガに向かう。
 オーガを殺そうと地を這う俺を、オーガは何度も踏みつぶした。
 そして、何度も大きな拳を俺に打ち落とす。
 何度も、何度も。
 俺の体は砕けていく。
 俺の体が砕けるたびに、俺の中でわき上がる怒りはさらに深くなる。だが同時に、不思議と満たされていく自分がいる。

 薄れる意識すらも砕かれる
 静寂に包まれ、沈み消えゆく意識
 しかし、俺は確かに聞いた

「やれやれ…お前は何をしているんだ?遊んでいないで起きろ…」

 朽ちた木々の隙間から、月の光がわずかに差し込む。
 黒い風が、記憶を撫でながら木々を揺らす。
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