スケルトンとして生きるには、少しだけ狂っていなきゃいけない

ピモラス

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力を求めて

渇望

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 俺はルーの元へ来ていた。
 ルーの転移で一緒に来ていたが、ルーは俺を従属化していないようで自由だった。

「お主、力を…そうなのか。それが」
 ルーの話しは、抽象的だったり、何かが抜けているのか、理解が難しい。
 俺の補足を含めた推測だが、俺はカールの力を一部受け取っているようだ。
 その結果として、発声器官がないのに発言できている。
 他にもあるだろうが、ルーにもわからないみたいだ。

 そして

「残ったのは、お主だけじゃな。エッジも吸血鬼たちも消えた」
 やはり…か。
 吸血鬼たちとは、カール、セミョン、ヌイグだろう。ナディアは館なのか?
 やつらはまあ…いいのだが、エッジよ。
 残るのならば、俺よりも戦闘力の高いお前の方がよかったのではないか。
 この世界で、唯一信頼できる「友」と呼んでいい存在だった。

「あれだけの力が生者にはあるのか?」

 俺の問いに、ルーは首を横に振る。
「合理的すぎるな。生者を生贄として浄化を極限まで強化しつつ、威力を高めたものじゃ。不死者を滅ぼし、病魔を断つ」
 故意に殉死させた信者を媒介に、奇跡の力をあげて放つ浄化のようで、ルーでもあやういと言う。

「勇者と聖女を討つのに、力を貸してくれ」
 俺がそう言うと、ルーは黄色い歯を見せて笑いながら、なんども頷いていた。
「かっかっか。そうじゃな。やはり」
 天井を見上げ、地面を見つめてから、何かに納得したようだ。

「お主、力が欲しいか」

 その問いかけに、目の奥が熱く脈打ったような気がした。眼球などないが。
「力…強くなりたい。やつらを討つ力が欲しい」
「マスターに会え。一度。ならば」
 マスターギドか。確かに彼ならば、俺にもっと力をくれるのかもしれない。
「しかし、ギドはどこにいるのだ?」
「研ぎ澄ませ。わかるはずだ。ドロシー」
 後ろに控えていたドロシーは、俺の二の腕、上腕骨に皮の紐を巻き付けた。
「これは?」
「くっくっく。監視だ。では、行け」
 俺の返事を待たずに、俺の周りには幾何学模様が浮かぶ。
 俺はどこかに飛ばされた。




「はっは。あんた、いじわるだな、やっぱり」
 扉の無い部屋に、男は笑いながら入ってきた。
「何故声をあげなかったのだ?そういうお主は」
 ギドとルーはお互いに声をあげて笑う。
 しかし、次の瞬間、二人とも真剣な顔に変わっていた。

「あの聖女。どうじゃ?それにケイ」
 ギドは一度、目を閉じ、浄化の景色を思い出す。目を開けるが、何も見ていない。
「おそらく十人を超える生贄を使用したのだろう。狂っているな。間違いない」
 ルーは顎に手に持つ骨をあてがい、考える。
「その時が来たら、お主だけでなく、ケイも」
「どうであろうな。次の研究素体も作成してはいるが、あれほどの完成度はないな。彼もくるようだ。作戦を練っておこう」
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