98 / 99
復讐
黒
しおりを挟む
真っ黒な空間だった
そこに俺はいる。
近くには、金色に輝くギド、そして、赤い影に黒い輪郭のアル。
それと、もう一人、白骨のスケルトン。
あの骨格はドロシーか?
しかし、その骨から、緑色の光がにじみ出ている。
ドロシーの骨の手が、前方を指を差す。
「来たか、世界の支配をたくらむ者よ」
その声は、ルーだ。
ドロシーかルーか、わからない存在の指差す先。
そこに、青い人影が浮かび上がる。
ぼんやりとしていたが、だんだんとはっきりと見える。
聖女だろう。肉体はないのか、俺の視界は赤くならない。
「アル、頼む」
「後少しだ。いける、いいぞ、ギド」
ギドとアルは何かの魔法を使ったようだ。
四体のスケルトンが新たに漆黒の場に加わる。
「やるぞ、ギド、アル。そして、ケイ。お前はどっちだ?」
「ケイスケ。自らの手で安息を掴むのです」
ルーと聖女が俺に話しているらしい。
終わらせる
俺の思考は、その言葉だけだった。
しかし、突如全てが止まった。
ギドとアルを守るような姿勢の、盾を構えた四体のスケルトンの横顔。
そして、俺を見つめるドロシーの姿をしたルー。
「止まっている」と言った感覚だけがある。
ルーの声は俺に、俺だけに囁いているようだ。
「神に怒りを感じるのだろう。生者に恨みを募らせているのだろう。そうだろう」
コマ送りのように、わずかに時間が動いたような気がした。
「時間は無い。奴が、神が生者に奇跡の力を割けば、その代償、反対の力はどこへ行く。わかるな、正があれば負がある。お前は奴らのせいで、不要物、怒りとして生まれたのだ」
終わらせる
ルーの言葉も、聖女の言葉も、もはや俺には意味はない。
戦闘は、始まっていた。
青い人型から白と青の光がほとばしる。
盾持ちのスケルトンの隙間から、黒い光と矢がほとばしる。
俺も動こうとしたときに、隣には青い人影がいた。
「ケイスケ、力を貸しましょう。彼らを討った後に、わたくしと対峙するのもいいでしょう」
俺の体に、青い光がまとわりつく。
不快感は無かった。
漲る力は、かつてのドライアド・ビュルの枯れ葉を思い出させた。
「ビュル、いるのか」
返事は無い。
だが、感じる。
「武器だ。シミターを二本」
胸の、肋骨の中から黒いモヤが湧き上がり、全身を包む。
俺の全身を覆うモヤはしぼみ、体に張り付いた。
そして、手には木で出来た、二本のシミターが握られている。
「エッジ、力を貸してくれ」
俺は顎をカクカクと鳴らした。
エッジがいる。
今
俺の中に。
「いや、違うな。俺の体を使え」
俺目掛けて飛来する、黒や黄色の魔法を、木のシミターは切り裂いた。
迫る二体の盾持ちスケルトン。
遅い。
なんて緩慢な動きだ。
俺は脱力する。
剣先は二刀ともつま先に触れている。
左側から迫るスケルトンが先か。
一歩で、間合いを一気に距離を詰めると同時に、二本のシミターをクロスして振り上げ、クロスして振り下ろす。
盾は十字に切断され、スケルトンも巻き込んで肋骨も骨盤も砕ける。
弱いな。面白くない。
右から迫るスケルトンに、一歩で近付く。
その左手に持つ盾の、下の縁を目掛け、右手のシミターを下から振りあげる。
力なんて込めていない。
迫っていたスケルトンは、簡単に盾をめくり上げ、のけぞった。
隙だらけの胴に左手のシミターを水平に振る。
上半身と下半身に別れたスケルトンの頭蓋骨を素早く踏み砕く。
「はは、エッジの見る世界。みんな、のろまだな」
俺はギドの方を見る。
残りの二体のスケルトンが、ギドとアルを守るように、前に立っている。
その背後にいるルーが、俺に指を突き出した。
魔法か
遅いな
一直線に伸びる黄色い光を、俺は両手に握る木のシミターで切り裂き霧散させた。
そして、一気に彼我の距離を詰める。
立ちふさがるスケルトンの一体を、頭蓋骨から縦に斬りつけると、背骨まで縦にキレイに割け左右に倒れた。
「今」
ルーの声と共に、両手を突き出した三人。ルーとギドとアルの動きが止まる。
そして、俺の体も動かない。
終わらせる
俺の意志に応えたのか、体にまとわりついていた黒いモヤが、ボワっと膨張した。
「いけません」
聖女の声が、体の内側から響く。
「お前も道連れだ、聖女。終われ」
俺は、声を出さずに、そう思考する。
黒く膨らむモヤを、青い光が包んでいる。
しかし、黒いモヤは、黒く輝きながら膨張を続ける。
「止むを得ん」
ルーの声で、虹色に輝くドロシーの体が、俺に抱きつく。
ドロシーの背後で、ギドとアルは、そのスケルトンを支えている。
「ケイスケ!待て!」
ギドの声が響いた。
終わらせる
世界は黒く染まった。
そこに俺はいる。
近くには、金色に輝くギド、そして、赤い影に黒い輪郭のアル。
それと、もう一人、白骨のスケルトン。
あの骨格はドロシーか?
しかし、その骨から、緑色の光がにじみ出ている。
ドロシーの骨の手が、前方を指を差す。
「来たか、世界の支配をたくらむ者よ」
その声は、ルーだ。
ドロシーかルーか、わからない存在の指差す先。
そこに、青い人影が浮かび上がる。
ぼんやりとしていたが、だんだんとはっきりと見える。
聖女だろう。肉体はないのか、俺の視界は赤くならない。
「アル、頼む」
「後少しだ。いける、いいぞ、ギド」
ギドとアルは何かの魔法を使ったようだ。
四体のスケルトンが新たに漆黒の場に加わる。
「やるぞ、ギド、アル。そして、ケイ。お前はどっちだ?」
「ケイスケ。自らの手で安息を掴むのです」
ルーと聖女が俺に話しているらしい。
終わらせる
俺の思考は、その言葉だけだった。
しかし、突如全てが止まった。
ギドとアルを守るような姿勢の、盾を構えた四体のスケルトンの横顔。
そして、俺を見つめるドロシーの姿をしたルー。
「止まっている」と言った感覚だけがある。
ルーの声は俺に、俺だけに囁いているようだ。
「神に怒りを感じるのだろう。生者に恨みを募らせているのだろう。そうだろう」
コマ送りのように、わずかに時間が動いたような気がした。
「時間は無い。奴が、神が生者に奇跡の力を割けば、その代償、反対の力はどこへ行く。わかるな、正があれば負がある。お前は奴らのせいで、不要物、怒りとして生まれたのだ」
終わらせる
ルーの言葉も、聖女の言葉も、もはや俺には意味はない。
戦闘は、始まっていた。
青い人型から白と青の光がほとばしる。
盾持ちのスケルトンの隙間から、黒い光と矢がほとばしる。
俺も動こうとしたときに、隣には青い人影がいた。
「ケイスケ、力を貸しましょう。彼らを討った後に、わたくしと対峙するのもいいでしょう」
俺の体に、青い光がまとわりつく。
不快感は無かった。
漲る力は、かつてのドライアド・ビュルの枯れ葉を思い出させた。
「ビュル、いるのか」
返事は無い。
だが、感じる。
「武器だ。シミターを二本」
胸の、肋骨の中から黒いモヤが湧き上がり、全身を包む。
俺の全身を覆うモヤはしぼみ、体に張り付いた。
そして、手には木で出来た、二本のシミターが握られている。
「エッジ、力を貸してくれ」
俺は顎をカクカクと鳴らした。
エッジがいる。
今
俺の中に。
「いや、違うな。俺の体を使え」
俺目掛けて飛来する、黒や黄色の魔法を、木のシミターは切り裂いた。
迫る二体の盾持ちスケルトン。
遅い。
なんて緩慢な動きだ。
俺は脱力する。
剣先は二刀ともつま先に触れている。
左側から迫るスケルトンが先か。
一歩で、間合いを一気に距離を詰めると同時に、二本のシミターをクロスして振り上げ、クロスして振り下ろす。
盾は十字に切断され、スケルトンも巻き込んで肋骨も骨盤も砕ける。
弱いな。面白くない。
右から迫るスケルトンに、一歩で近付く。
その左手に持つ盾の、下の縁を目掛け、右手のシミターを下から振りあげる。
力なんて込めていない。
迫っていたスケルトンは、簡単に盾をめくり上げ、のけぞった。
隙だらけの胴に左手のシミターを水平に振る。
上半身と下半身に別れたスケルトンの頭蓋骨を素早く踏み砕く。
「はは、エッジの見る世界。みんな、のろまだな」
俺はギドの方を見る。
残りの二体のスケルトンが、ギドとアルを守るように、前に立っている。
その背後にいるルーが、俺に指を突き出した。
魔法か
遅いな
一直線に伸びる黄色い光を、俺は両手に握る木のシミターで切り裂き霧散させた。
そして、一気に彼我の距離を詰める。
立ちふさがるスケルトンの一体を、頭蓋骨から縦に斬りつけると、背骨まで縦にキレイに割け左右に倒れた。
「今」
ルーの声と共に、両手を突き出した三人。ルーとギドとアルの動きが止まる。
そして、俺の体も動かない。
終わらせる
俺の意志に応えたのか、体にまとわりついていた黒いモヤが、ボワっと膨張した。
「いけません」
聖女の声が、体の内側から響く。
「お前も道連れだ、聖女。終われ」
俺は、声を出さずに、そう思考する。
黒く膨らむモヤを、青い光が包んでいる。
しかし、黒いモヤは、黒く輝きながら膨張を続ける。
「止むを得ん」
ルーの声で、虹色に輝くドロシーの体が、俺に抱きつく。
ドロシーの背後で、ギドとアルは、そのスケルトンを支えている。
「ケイスケ!待て!」
ギドの声が響いた。
終わらせる
世界は黒く染まった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる