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東方を目指して
東の都は遠く
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翌朝も街を出て街道を順調に進んでいた。
草原の中を進んでいたが、丘の上で御者台のゴーは遠くに煙が上がっているのを発見した。
「まだ遠いのですが、煙が上がっています。街道沿いかと」
「豚人の可能性が高い。吾輩が偵察に出るから馬車を止めたまえ」
馬車を停止させたエータは
「エミカは戦えるな?エルは周囲を警戒せよ。ケンの保護を第一優先とせよ」
そう言って走り去った。
エータがかっこいいと思ったんだけど、俺の保護が優先って・・・
他の仲間たちが命をかけて戦ってくれている証拠だ。だけど、やっぱり情けない。俺も何かできることがあれば、と思うけど、自分の身を守るって言っても戦えないしな・・・
そして
「命にかえても!」
みたいなのがゴーとエミカの二人に増えていた。
軽快に馬車の天井に登ったエルはぐるっと見まわして
「まあしばらくは誰も来ないみたい」
そう言った後に街道とは全然違う方向を指さして
「向こうにいるのはなんだ?」
俺はビビって思わず体が固まった。前回の遺跡の蜘蛛の記憶が頭をよぎって、自然と手が震えた。
不意に手を握られて俺は「ひっ」と言ってしまった。エミカだった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。手を握っていると安心するだろう?」
真っ黒な瞳でそう言われたら不思議と安心した。
「で、でも・・・女の子の手を握って・・・」
俺は女の子と自分で言って恥ずかしくなり、ジンナを思い出して放そうとしたが
「があああおおうう」
と言う咆哮にエミカの手を強く握ってしまっていた。
「ああ、でかいネコっすね。ヒョウかな?毛皮を剝いだら高く売れるっすよ」
まったく動揺していないエルの声が上から聞こえてきた。
アレックスは目を閉じて座ったままだった。
ゴーは「ちょっと脅せば逃げるだろう」と言いヒョウの前で変な踊りを踊っている。
エミカは握っている俺の手の甲を撫でて「大丈夫」と言った。
俺だけがビビっている状況が情けなくて悲しくなったけど、怖くてエミカのひんやりした手を離せなかった。
ヒョウは不思議な踊りをするゴーが近付くと逃げていった。
俺はそっとエミカの手を放した。
「私の手でよいならいつでも握ってくれ」
そう言われて自分でもわかる熱い赤い顔をじっと見つめるエミカから逸らした。
そこへエータが戻ってきた。
「悪い報告だ。この先で兵士が陣を敷いている。衝突はまだだが、かなりの数の豚人が接近しているのを探知した」
俺はドキっとした。何度も見た死体の山を想像した。いつまでたっても慣れる事はない。怖かった。震える手をエミカがまた握っていた。
「街道を抜けるのは不可能だ。迂回路がないことはないが、山間を抜けねばならないから馬車では無理である」
「そ、そんな・・・ジンナ・・・」
俺はジンナが心配になってそうつぶやいた。
「じ、ジンナの村は無事なのか?」
「吾輩もそこまでは探知できないが、おそらく豚人の最終目的は王都の制圧なのだろう」
「じゃ、じゃあジンナは大丈夫かな」
「可能性がない訳ではないが、辺境の方が安全なのは間違いない」
俺はジンナが無事な可能性が高いと聞いて少しだけ安心した。
「で、でもなんで豚人はそんなに戦いたいんだ?」
「以前にも君に言ったであろう?今代の豚人の指導者は『人類からの領地の奪還』を目指している。とにかくここを早く離れたほうがよい。全ての殲滅は可能だが敵が多いと君の安全を保障できん」
俺はエミカの手を握ったままだったのを思い出していたが、不安で離せなかった。
馬車は来た街道を引き返した。
馬車の中では、今後の予定を話し合っていた。
「豚人の動向が不明瞭なので東部は後に回すか。しかし、距離と時間をロストしてしまうのは非効率だな。ケンの身の安全が確保できる街などに置いて吾輩とアレクシウスで兵士もろとも豚人を殲滅してしまったほうが効率的か」
「へ、兵士の殲滅はやめてください!」
俺が止める前に御者台から悲鳴のようにゴーが叫んだ。
「え、エータ。殲滅はやめよう。遠いかもしれないけど、他の目的地は?」
「街道を馬車で進むからこそ機動力が活かせているのだ。それならばいっそ王都中央を経由して北上しローレン領を目指すほうが無駄は少ないがどうかね?」
「・・・王都は警戒が厳しい。エータだけでなくエミカも危険だが?」
アレックスがそう言うくらいだから相当な警備なんだろう。安全にいった方がいいけど・・・
「私は危険など顧みない。ケンの指示に従うまで!」
いや、そこは一族のなんとかかんとかじゃないんですかエミカさん。
「もう一度砂漠の方を回るのはどうかな?ちょっと遠いけど」
「他の手段としては遺跡を巡り戦火が静まるのを待つというのもあるが、いつ始まるか終わるかもわからない戦争に期待するのは現実的ではない。よって目的地はローレン領。中央経由か西経由かであるな。どうするね?」
アレックスとエルとエミカも俺を見る。やっぱり俺が決めるの?いつからこうなったんだ?
「い、一応ゴーの意見も聞こう。ちなみにエータはどっちがいいんだ?」
「吾輩は中央経由であるな。距離と時間を鑑みれば当然であろう?」
「そ、そうですよね。ゴー!王都と西経由だったらどっちがいいかな?」
俺は御者台に向かって声をかけるとゴーの返事は「ケンの指示に従います」だった。なんだよ・・・
「ち、ちなみにアレックスとエルはどっちがいい?」
「・・・お前に任せる」
「あ、王都は見てみたいっす。砂漠はもうイヤ」
ああ、王都二票のお任せ三票・・・どうしよう。ちょっと王都は俺も気にはなるんだけど・・・
「よし!王都経由で行こう!危険そうなら西に逃げよう!」
「決まったな。王都方面に向かったほうが補給も計画的に行えるので馬車の荷物も相対的に減らせ速度も上がる。危険の排除など吾輩とアレクシウスに任せておけばよい」
「い、いやだからそう言うのを避けるための話し合いじゃなかったのか!」
そうして俺たち一向は王都を目指すことになった。
草原の中を進んでいたが、丘の上で御者台のゴーは遠くに煙が上がっているのを発見した。
「まだ遠いのですが、煙が上がっています。街道沿いかと」
「豚人の可能性が高い。吾輩が偵察に出るから馬車を止めたまえ」
馬車を停止させたエータは
「エミカは戦えるな?エルは周囲を警戒せよ。ケンの保護を第一優先とせよ」
そう言って走り去った。
エータがかっこいいと思ったんだけど、俺の保護が優先って・・・
他の仲間たちが命をかけて戦ってくれている証拠だ。だけど、やっぱり情けない。俺も何かできることがあれば、と思うけど、自分の身を守るって言っても戦えないしな・・・
そして
「命にかえても!」
みたいなのがゴーとエミカの二人に増えていた。
軽快に馬車の天井に登ったエルはぐるっと見まわして
「まあしばらくは誰も来ないみたい」
そう言った後に街道とは全然違う方向を指さして
「向こうにいるのはなんだ?」
俺はビビって思わず体が固まった。前回の遺跡の蜘蛛の記憶が頭をよぎって、自然と手が震えた。
不意に手を握られて俺は「ひっ」と言ってしまった。エミカだった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。手を握っていると安心するだろう?」
真っ黒な瞳でそう言われたら不思議と安心した。
「で、でも・・・女の子の手を握って・・・」
俺は女の子と自分で言って恥ずかしくなり、ジンナを思い出して放そうとしたが
「があああおおうう」
と言う咆哮にエミカの手を強く握ってしまっていた。
「ああ、でかいネコっすね。ヒョウかな?毛皮を剝いだら高く売れるっすよ」
まったく動揺していないエルの声が上から聞こえてきた。
アレックスは目を閉じて座ったままだった。
ゴーは「ちょっと脅せば逃げるだろう」と言いヒョウの前で変な踊りを踊っている。
エミカは握っている俺の手の甲を撫でて「大丈夫」と言った。
俺だけがビビっている状況が情けなくて悲しくなったけど、怖くてエミカのひんやりした手を離せなかった。
ヒョウは不思議な踊りをするゴーが近付くと逃げていった。
俺はそっとエミカの手を放した。
「私の手でよいならいつでも握ってくれ」
そう言われて自分でもわかる熱い赤い顔をじっと見つめるエミカから逸らした。
そこへエータが戻ってきた。
「悪い報告だ。この先で兵士が陣を敷いている。衝突はまだだが、かなりの数の豚人が接近しているのを探知した」
俺はドキっとした。何度も見た死体の山を想像した。いつまでたっても慣れる事はない。怖かった。震える手をエミカがまた握っていた。
「街道を抜けるのは不可能だ。迂回路がないことはないが、山間を抜けねばならないから馬車では無理である」
「そ、そんな・・・ジンナ・・・」
俺はジンナが心配になってそうつぶやいた。
「じ、ジンナの村は無事なのか?」
「吾輩もそこまでは探知できないが、おそらく豚人の最終目的は王都の制圧なのだろう」
「じゃ、じゃあジンナは大丈夫かな」
「可能性がない訳ではないが、辺境の方が安全なのは間違いない」
俺はジンナが無事な可能性が高いと聞いて少しだけ安心した。
「で、でもなんで豚人はそんなに戦いたいんだ?」
「以前にも君に言ったであろう?今代の豚人の指導者は『人類からの領地の奪還』を目指している。とにかくここを早く離れたほうがよい。全ての殲滅は可能だが敵が多いと君の安全を保障できん」
俺はエミカの手を握ったままだったのを思い出していたが、不安で離せなかった。
馬車は来た街道を引き返した。
馬車の中では、今後の予定を話し合っていた。
「豚人の動向が不明瞭なので東部は後に回すか。しかし、距離と時間をロストしてしまうのは非効率だな。ケンの身の安全が確保できる街などに置いて吾輩とアレクシウスで兵士もろとも豚人を殲滅してしまったほうが効率的か」
「へ、兵士の殲滅はやめてください!」
俺が止める前に御者台から悲鳴のようにゴーが叫んだ。
「え、エータ。殲滅はやめよう。遠いかもしれないけど、他の目的地は?」
「街道を馬車で進むからこそ機動力が活かせているのだ。それならばいっそ王都中央を経由して北上しローレン領を目指すほうが無駄は少ないがどうかね?」
「・・・王都は警戒が厳しい。エータだけでなくエミカも危険だが?」
アレックスがそう言うくらいだから相当な警備なんだろう。安全にいった方がいいけど・・・
「私は危険など顧みない。ケンの指示に従うまで!」
いや、そこは一族のなんとかかんとかじゃないんですかエミカさん。
「もう一度砂漠の方を回るのはどうかな?ちょっと遠いけど」
「他の手段としては遺跡を巡り戦火が静まるのを待つというのもあるが、いつ始まるか終わるかもわからない戦争に期待するのは現実的ではない。よって目的地はローレン領。中央経由か西経由かであるな。どうするね?」
アレックスとエルとエミカも俺を見る。やっぱり俺が決めるの?いつからこうなったんだ?
「い、一応ゴーの意見も聞こう。ちなみにエータはどっちがいいんだ?」
「吾輩は中央経由であるな。距離と時間を鑑みれば当然であろう?」
「そ、そうですよね。ゴー!王都と西経由だったらどっちがいいかな?」
俺は御者台に向かって声をかけるとゴーの返事は「ケンの指示に従います」だった。なんだよ・・・
「ち、ちなみにアレックスとエルはどっちがいい?」
「・・・お前に任せる」
「あ、王都は見てみたいっす。砂漠はもうイヤ」
ああ、王都二票のお任せ三票・・・どうしよう。ちょっと王都は俺も気にはなるんだけど・・・
「よし!王都経由で行こう!危険そうなら西に逃げよう!」
「決まったな。王都方面に向かったほうが補給も計画的に行えるので馬車の荷物も相対的に減らせ速度も上がる。危険の排除など吾輩とアレクシウスに任せておけばよい」
「い、いやだからそう言うのを避けるための話し合いじゃなかったのか!」
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