異世界に転生したのにスキルも貰えずに吸血鬼に拉致されてロボットを修理しろってどういうことなのか

ピモラス

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エータの修復

世界の主

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 俺たちはローレン邸へ戻った。
 エータがプラズマ砲を打つ瞬間を誰かに見られたかもしれない。
 しかし、人間がエータをどうこうできるとは思えない。
 そう考え、堂々とローレン邸に戻ってきた。

 嘘つきました。
 朝日に照らされたアレックスとエータは、本当に威風堂々と王都の道の真ん中を悠々と歩いていましたが、俺はその二人の後を、何か悪い事をした気がして、誰かに咎められるのではないか?
 そう思ってビビりながらついていっただけです・・・

 エータが朝食を作ってくれて、俺とアレックスはそれを食べていた。
「食事が済んだら、今後の計画について話し合おう」
 エータがそう言っていた。
 俺はエータに「思いやり」のようなものを感じた。以前のエータなら
「食事しながら聞きたまえ、その方が効率的であろう」
 みたいなセリフを言ったはずだ。

 食事が済むと、エータは片付けをして紅茶をいれてくれた。
 そして、俺とアレックスが向かい合わせで座るテーブルの側面に立った。
「当初の予定通り、今日準備が出来次第、ローレン領を目指す。そこまではいいな?」
 エータは俺とアレックスを見る。俺たちは無言で頷く。
「では、その後の計画だ。その前にケン。君に吾輩の内部構成の現状を開示しておこう」
 俺の頭の中で「?」が浮かぶ。俺に理解できる話しならいいけど。

 エータは反乱AIに浸食された。
 体の制御を奪われ、内部的にも重要な回路など、いくつか書き換えられてしまった。
 しかし、エータの根幹部分にあった「この世界を見守れ」と言った主目的部分は、反乱AIでも書き換えることも、上書きすることも、排除する事もできなかった。

 そこでエータは
「ケンを主とした世界の構築」
 という自身の行動理論を作成し、根底にある主目的プログラムを
「『この者と』この世界を見守れ」
 そう書き換えたと言う。
 浸食された部分も、徐々に書き換えに成功。
 ジワジワと体内の回路に広げていった。
 大きなエネルギーを外部より供給された事によって、全ての体内機構主幹部を書き換え、奪還に成功した。

 俺が理解できた範囲だと、このような話しだったけど、よくわからない内容もあったから違うかもしれない・・・
「吾輩はケン。君の意志を尊重し、君の希望を最優先に行動する」
 俺は開いた口が塞がらなかった。
 エータの言う事は、何か間違っている気がした。
 ・・・
 しばしの沈黙。
 屋敷の中は静寂に包まれていた。
 かすかに小鳥のさえずりが聞こえる・・・
「え、エータ?お、俺が世界のあ、主ってなんだ?」
 紅茶を一口飲んでから、やっと言葉を出せた。
「君が理解力に乏しいのは理解しているが、その程度すら理解できないのかね?君が理解できるように言い換えると、『吾輩は君を全面的に支援し補佐する』」
 俺はずっと口を半開きできいていた。
 視線をエータからアレックスに移すと、何故か微笑みながら俺たちのやり取りを見守っていた。

「・・・で、あるから君がそう希望するのなら、吾輩が単独で行動し・・・ケン、君は聞いているのかね?」
 その後のエータの話しは、ほとんど頭に入らなかった。
 光の中に消えていったグリフィン、そして今のエータの発言・・・俺の頭の中は理解が追いつかず真っ白になっていた。

 エルの墓前に別れを告げた。
「エル・・・ごめんな。また・・・来るからな。ありがとう」
 俺は涙を拭い、王都を出発した。
 馬車で北門を通過したのだが、まばらにいる兵士たちは俺たちに声をかけることはなかった。
 俺たちだけではなく、数人出入りしている人を見かけたが、その人たちにも兵士が何かすることはなかった。
 避難する人にはいいのかもしれないけど、反乱分子も簡単に進入できてしまうのではないか?
 俺は御者台のアレックスの隣で、ぼんやりとその光景を眺めていた。

 門の通行税や、対応に備えていたが、不要だった。
 俺は御者をアレックスにまかせて馬車の後部に移った。
 エータと対面で座る。
「え、エータさん?ローレン領にいった後はどうするって言ってましたっけ?」
 俺は話しを全然聞いていなかったので、落ち着いてきた今、確認することにした。
「やはり君は聞いていなかったのだな。君の希望があれば、豚人やキメラの生産拠点を停止させる。完全体となった吾輩なら、単独でも可能だ。どうかね?」
 ・・・なにが「どうかね」なのかわからない。
 確かに生産拠点を止めれば豚人やキメラは二度と発生しなくなる。
 今のエータなら、拠点を守っている豚人がいくらいても全滅するのが想像できた。
 その方が俺や、仲間たちも安全になる。
 だけど、彼らも生きている・・・
「す、少し考えさせてくれ」
「吾輩は君の指示に従う。しかし、もう少し思考を加速させて、理解力が上昇してくれると効率的なのだが」
「・・・あ!エータは俺の指示に従うのか?では、その態度を改めなさい!」
「吾輩の態度が気に入らないのかね?吾輩は真実を的確に伝えるのが使命だ」
「・・・」
 俺は少し呆然としていたが、御者台のほうから「・・・ふっ」と僅かな笑い声が聞こえたような気がした。
「なんだよエータ!じゃあ、もう少し優しい言い方してくれよ!」
「それは不可能だ」
 なんだか、前のエータが帰ってきてくれたような気がして、俺も嬉しくて笑ってしまった。
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