おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第五十一話『長期保存食計画と、初めてのベーコン』

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あれから数週間。夏の強烈な日差しが和らぎ、朝晩の空気に、ふと秋の気配が混じり始めた。夜に聞こえる虫の声も、いつの間にか種類が変わっている。
俺は、この季節の移ろいに、来るべき冬への備えを本格化させるべき時だと感じていた。

「今日は、俺たちの冬を乗り越えるための、最高の保存食を作ります」

俺が燻製小屋の前に運び出したのは、キバいのししの巨大なバラ肉の塊。目指すは、長期保存加工肉の王様、『ベーコン』だ。
「本物のベーコン作りは、時間がかかる魔法なんです。まず、この肉を清める液を作りましょう」

俺はリディアに説明しながら、岩塩、森の蜂蜜、そして乾燥ハーブを水に溶かしていく。「ただの塩水じゃないですよ。蜂蜜が肉を柔らかくし、ハーブが風味を加えるんです」と解説しつつ、最後の仕上げに、あるアイテムを召喚した。

ポンッ!
【創造力:150/150 → 145/150】
厚手で巨大な『漬物用ポリ袋』だ。「これを使えば、少ない液で、空気に触れさせずに衛生的に漬け込めるんですよ」
巨大な肉の塊を袋に入れ、ソミュール液を注ぎ、空気を抜いて口を縛る。ここから数日間、塩漬けの工程に入る。

次に、この長い魔法を正しく導くための道具を召喚した。

ポンッ!
【創造力:145/150 → 130/150】
Cランクの『温湿度計』だ。「最高の保存食は、最高の環境管理から生まれるんですよ」
空気の状態を数字で示す魔法の板に、リディアは「なんと…!」と目を見張っている。彼女の真面目さを見込んで、俺はこの管理を任務として与えた。それが『温湿度管理日誌』の作成だ。

塩漬けにすること数日。次に、風通しの良い日陰で乾燥させること数日。そして、いよいよ最後の工程『冷燻』が始まる。

ポンッ!
【創造力:130/150 → 120/150】
「今回はこれを使います」と、俺はDランクの『燻製チップ(リンゴ)』を召喚した。「豚肉と相性が良い、甘い香りをつけてくれるんです」
「ユキ殿! 今日の湿度は、昨日より3高いぞ! 燻煙作業に影響は!?」
少しズレているが、リディアの真剣な報告のおかげで、俺は完璧な環境で、夜間の涼しい時間だけを選んでじっくりと燻すことができた。

一週間以上にも及ぶ「待つ時間」。燻製小屋に吊るされた肉の塊を、リディアとシラタマが毎日そわそわと覗きに行く。
「キュイ…(まだ?)」
「むぅ…日に日に美しい飴色になってきているな…」
その姿は、微笑ましくてたまらなかった。

そして、ついに運命の朝が来た。
完成したベーコンは、美しい飴色に輝き、断面からはキラキラとした脂が滲み出ている。そして何より、その香り。熟成された肉の凝縮された旨味と、ハーブ、リンゴチップの甘い香りが混じり合った、理性を麻痺させるような香りだ。

俺はそのベーコンを厚切りにし、鉄鍋でじっくりと焼いていく。パチパチという音、溢れ出す上質な脂。その脂で焼いた目玉焼きと共に、焼きたてのパンに乗せて、食卓に並べた。
初めて食べるベーコンの、カリカリの食感と、凝縮された塩気と旨味。その衝撃的な美味さに、一同は言葉を失い、夢中で頬張った。

最高の朝食を味わいながら、俺はぽつりと呟く。
「これだけ良いベーコンがあれば、冬にはカルボナーラなんかも作れますね」
「かるぼなーら…?」
未知の響きを、リディアは不思議そうに繰り返した。
その言葉が、どんなご馳走の名前なのか、彼女はまだ知らない。だが、それがとんでもなく美味しいものであることだけは、確信できたのだった。
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