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第四十三話:星喰み(ステラ・ファング)と、職人の夜明け
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ごう、と。
ゴードンの工房の炉が、まるで飢えた獣の咆哮のような音を立てて燃え盛った。
伝説の鉱石、『星屑の黒鉄(スターダスト・アイアン)』が投じられた炎は、もはやただの赤色ではなかった。鉱石が宿す未知の魔力に呼応するかのように、その中心部は青白く、そして外縁は虹色の光を帯びて、工房の壁に揺らめく影を幻のように踊らせている。
「小僧、下がってな!」
ゴードンの、地鳴りのような怒声が飛ぶ。だが、その声には俺を遠ざけようとする拒絶ではなく、これから始まる神聖な儀式に、余人を近づけさせないという、職人としての気迫がこもっていた。
俺は、工房の入り口近くまで下がり、壁に背を預ける。傍らには、寡黙な騎士ギデオンが、微動だにせずその光景を見守っていた。腕の中のフェンは、尋常ではない熱気と音に少し怯えているのか、俺の外套の中にぐりぐりと頭を押し付けてくる。
工房の中央で、炉の炎を一身に浴びるゴードンの背中は、もはやただの大柄な男のものではなかった。それは、これから神の領域に挑まんとする、孤高の挑戦者の背中だった。
彼は、槌を握らなかった。ただ、燃え盛る炎の色を、そこから立ち上る火の粉の舞い方を、そして、鋼が発する、常人には聞こえないはずの「声」を、全身全霊で感じ取っているようだった。
「……まだだ。まだ、目覚めねえか」
独り言のように呟き、彼はふいごをさらに強く踏み込んだ。炉の温度が、極限まで引き上げられる。工房の中の空気そのものが歪み、呼吸をするだけで喉が焼けつくようだ。
俺は、その光景から目を逸らすことができなかった。そして、無意識のうちに、スキルを発動させていた。
(『識別』!)
その瞬間、俺の目にだけ、世界の理(ことわり)が可視化される。燃え盛る炎の向こう側、赤熱する鉱石の内部構造が、まるで透かし見るかのように、脳内に流れ込んできた。
(すごい……!)
鉄の分子構造が、熱によって激しく振動し、再結合を繰り返している。そして、その隙間を縫うように、あの未知の魔力伝導金属が、まるで血液のように脈動しながら、鉱石全体へと均一に広がっていく。ゴードンは、この目に見えない内部の変化を、長年の経験と勘だけで、完璧に読み取っているのだ。
「……今だ!」
ゴードンの咆哮が、工房を震わせた。彼は、巨大な火箸で、太陽のように輝く鋼の塊を炉から引きずり出すと、それを金床の上に叩きつけた。
そして、ついに、あのドワーワーフ製の大槌が振り上げられる。
**キィィィン!**
これまで聞いたことのない、甲高く、そしてどこまでも澄んだ音が、工房に響き渡った。それは、ただの打撃音ではなかった。伝説の鉱石が、伝説の職人の手によって、初めてその産声を上げた瞬間だった。
ゴードンの鍛冶は、もはや労働ではなかった。それは、炎と鋼と人間が一体となる、荒々しくも美しい、一つの舞踊だった。
槌が振り下ろされるたびに、鋼は形を変え、火花は星屑のように飛び散る。汗が、湯気となって彼の肉体から立ち上り、その全てが、まるで一つの生命体のように、熱く、激しく脈動していた。
俺は、その光景に、完全に心を奪われていた。前世で、俺は何を「創り出した」だろうか。ディスプレイに並ぶ無機質な数字を追いかけ、後輩の命の代わりだと信じ込んだ虚しいポイントを積み上げる。あの乾いた執着の果てに、俺は何かを生み出せただろうか。何も、生み出せはしなかった。
だが、目の前の男は違う。彼は、一つのモノを創り出すことへ、その魂の全てを燃やしている。なんと情熱的で、人間的な執着だろうか。俺は、ゴードンという男に、自分と同じ種類の、しかし全く質の違う「極めた者」の魂を見ていた。
どれくらいの時間が、経っただろうか。
昼の光が色を失い、工房の外が深い藍色に染まっても、ゴードンの槌音は止まらなかった。日が完全に落ち、工房の中を照らすのが炉の炎と飛び散る火花だけになった頃、ギデオンが静かに工房を出ていった。しばらくして戻ってきた彼の手には、まだ温かい硬いパンと、塩気の強い干し肉が握られていた。
彼は、その半分を俺に無言で差し出す。俺は、それを受け取り、無心で口に運びながらも、一度も、ゴードンの舞から目を離さなかった。鋼を打つ甲高い音だけをBGMに、ただ黙々と食事を摂る。奇妙な、しかし不思議な一体感が、俺たちの間に流れていた。真夜中を過ぎ、街が深い沈黙に包まれても、工房の槌音だけは、まるで止まることのない心臓の鼓動のように、闇夜に響き続けていた。鋼を打つ甲高い音だけをBGMに、ただ黙々と食事を摂る。奇妙な、しかし不思議な一体感が、俺たちの間に流れていた。
夜が更け、街が完全に寝静まっても、槌音は止まない。やがて、鋼は、俺が設計図に描いた通りの、流麗な曲線を持つ刃の形へと姿を変えていた。だが、ゴードンはまだ槌を置かない。彼は、刃の表面を、まるで赤子をあやすかのように、小さな槌で、何度も、何度も、優しく叩いていく。焼き入れ前の、最後の魂を込める作業。
俺がその光景に見入っていると、不意に、隣で同じようにパンを齧っていたギデオンが、ごくり、と乾いた喉を鳴らす音が聞こえた。
「……化け物、だな」 ぽつりと呟かれたその言葉は、ゴードンに対してか、あるいは彼が生み出そうとしている道具に対してか。だが、その声には、侮蔑ではなく、同じ「極めた者」に対する純粋な畏敬の念がこもっていた。彼は、自らが振るう剣と、今生まれようとしている農具の間に、もはや何の違いも見出してはいなかった。
そして、ついに、その瞬間は訪れた。
ゴードンは、最後の仕上げを終えた刃を、再び炉で赤熱させると、工房の隅に置かれた巨大な水槽の前に立った。
「……目覚めろ」
静かな、しかし工房全体を支配するような威厳のこもった声と共に、赤熱した刃が、水槽の中へと突き入れられる。
**ジュウウウウウウウッ!**
凄まじい水蒸気が、工房の天井まで立ち上り、視界の全てを白く染め上げた。まるで、一つの星が、その命を終えて爆発したかのようだ。
やがて、白い蒸気が晴れていく。
水の中から引き上げられた刃は、もはやただの鉄ではなかった。
それは、夜空の闇そのものを切り取って、凝縮したかのような、深く、吸い込まれるような黒色をしていた。そして、その表面には、まるで本物の星屑を散りばめたかのように、無数の銀色の粒子が、きらきらと、静かに輝いている。
それは、道具というよりも、もはや一つの芸術品。あるいは、神話の中から抜け出してきた、伝説の武具と呼ぶべきものだった。
ゴードンは、その完成した刃を、まるで生まれたばかりの我が子を見るかのように、愛おしそうな目で見つめていた。そして、あらかじめ用意してあった、頑丈な木の柄を、寸分の狂いもなく、丁寧にはめ込んでいく。
ついに、それは完成した。
俺が夢見た、革命の第一歩。
「……ルークス」
ゴードンが、俺を呼んだ。その声は、汗と疲労でかすれていたが、同時に、これ以上ないほどの達成感と喜びに満ちていた。
「受け取れ。お前が望んだ、革命の刃だ」
俺は、おぼつかない足取りで、彼の前に進み出た。そして、差し出された、まだ微かに熱を帯びた鍬を、両手で、恭しく受け取った。
その瞬間、俺は驚きに目を見開いた。その見た目からは想像もつかないほど、軽い。いや、違う。ただ軽いのではない。まるで、俺の体の一部であるかのように、重心が完璧に計算され、すっと、手のひらに収まるのだ。
「……こいつの名はな」
ゴードンが、満足そうに言った。
「『星屑の黒鉄』から生まれ、そして、これから大地の恵みという名の星々を喰らって、この辺境の未来を創っていく。……こいつの名は、『星喰み(ステラ・ファング)』だ」
星喰み(ステラ・ファング)。
その、あまりにも壮大で、そして美しい名。
俺は、その黒く輝く刃を、静かに見つめた。これは、もはやただの農具ではない。俺と、ゴードンの魂が宿った、俺たちの戦いのための、最初の相棒だった。
「……ありがとうございます、ゴードンさん」
俺が、心の底からの感謝を告げると、彼は「ふん」と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
「礼を言うのは、こいつで、この辺境の畑を、黄金の海に変えてからにしな」
その、ぶっきらぼうな横顔は、俺が今まで見た、どんな人間の顔よりも、誇りに満ちて、輝いて見えた。
俺は、手にした『星喰み』を、強く、強く握りしめた。
俺は、固唾を飲んで見守っていた。炉の中で赤熱する伝説の鉱石が、まるでゴードンの魂そのもののように、激しく脈動している。今、振り下ろされる槌の一振りは、ただの鋼を打つ音ではない。辺境伯領の、いや、この世界の農業の歴史が、新たな音を立てて産声を上げる、その瞬間だった。
***
【読者へのメッセージ】
第四十三話、お読みいただきありがとうございました!
ついに完成した、伝説の農具『星喰み(ステラ・ファング)』。職人の魂が燃え上がる、熱い鍛冶のシーン、そして、道具に込められた想い。皆さんの心にも、その熱気が届いていれば幸いです。
「ゴードン、かっこよすぎる!」「星喰み、名前も見た目も最高!」「早く使ってるところが見たい!」など、皆さんの感想や応援が、この新たな相棒に、最初の土を入れる力となります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに最強の武器(農具)を手に入れたルークス。彼が、この『星喰み』で最初に耕す大地とは?そして、その切れ味は、一体…!?物語は、再び『実験農場』へと戻ります。次回、どうぞお見逃しなく!
ゴードンの工房の炉が、まるで飢えた獣の咆哮のような音を立てて燃え盛った。
伝説の鉱石、『星屑の黒鉄(スターダスト・アイアン)』が投じられた炎は、もはやただの赤色ではなかった。鉱石が宿す未知の魔力に呼応するかのように、その中心部は青白く、そして外縁は虹色の光を帯びて、工房の壁に揺らめく影を幻のように踊らせている。
「小僧、下がってな!」
ゴードンの、地鳴りのような怒声が飛ぶ。だが、その声には俺を遠ざけようとする拒絶ではなく、これから始まる神聖な儀式に、余人を近づけさせないという、職人としての気迫がこもっていた。
俺は、工房の入り口近くまで下がり、壁に背を預ける。傍らには、寡黙な騎士ギデオンが、微動だにせずその光景を見守っていた。腕の中のフェンは、尋常ではない熱気と音に少し怯えているのか、俺の外套の中にぐりぐりと頭を押し付けてくる。
工房の中央で、炉の炎を一身に浴びるゴードンの背中は、もはやただの大柄な男のものではなかった。それは、これから神の領域に挑まんとする、孤高の挑戦者の背中だった。
彼は、槌を握らなかった。ただ、燃え盛る炎の色を、そこから立ち上る火の粉の舞い方を、そして、鋼が発する、常人には聞こえないはずの「声」を、全身全霊で感じ取っているようだった。
「……まだだ。まだ、目覚めねえか」
独り言のように呟き、彼はふいごをさらに強く踏み込んだ。炉の温度が、極限まで引き上げられる。工房の中の空気そのものが歪み、呼吸をするだけで喉が焼けつくようだ。
俺は、その光景から目を逸らすことができなかった。そして、無意識のうちに、スキルを発動させていた。
(『識別』!)
その瞬間、俺の目にだけ、世界の理(ことわり)が可視化される。燃え盛る炎の向こう側、赤熱する鉱石の内部構造が、まるで透かし見るかのように、脳内に流れ込んできた。
(すごい……!)
鉄の分子構造が、熱によって激しく振動し、再結合を繰り返している。そして、その隙間を縫うように、あの未知の魔力伝導金属が、まるで血液のように脈動しながら、鉱石全体へと均一に広がっていく。ゴードンは、この目に見えない内部の変化を、長年の経験と勘だけで、完璧に読み取っているのだ。
「……今だ!」
ゴードンの咆哮が、工房を震わせた。彼は、巨大な火箸で、太陽のように輝く鋼の塊を炉から引きずり出すと、それを金床の上に叩きつけた。
そして、ついに、あのドワーワーフ製の大槌が振り上げられる。
**キィィィン!**
これまで聞いたことのない、甲高く、そしてどこまでも澄んだ音が、工房に響き渡った。それは、ただの打撃音ではなかった。伝説の鉱石が、伝説の職人の手によって、初めてその産声を上げた瞬間だった。
ゴードンの鍛冶は、もはや労働ではなかった。それは、炎と鋼と人間が一体となる、荒々しくも美しい、一つの舞踊だった。
槌が振り下ろされるたびに、鋼は形を変え、火花は星屑のように飛び散る。汗が、湯気となって彼の肉体から立ち上り、その全てが、まるで一つの生命体のように、熱く、激しく脈動していた。
俺は、その光景に、完全に心を奪われていた。前世で、俺は何を「創り出した」だろうか。ディスプレイに並ぶ無機質な数字を追いかけ、後輩の命の代わりだと信じ込んだ虚しいポイントを積み上げる。あの乾いた執着の果てに、俺は何かを生み出せただろうか。何も、生み出せはしなかった。
だが、目の前の男は違う。彼は、一つのモノを創り出すことへ、その魂の全てを燃やしている。なんと情熱的で、人間的な執着だろうか。俺は、ゴードンという男に、自分と同じ種類の、しかし全く質の違う「極めた者」の魂を見ていた。
どれくらいの時間が、経っただろうか。
昼の光が色を失い、工房の外が深い藍色に染まっても、ゴードンの槌音は止まらなかった。日が完全に落ち、工房の中を照らすのが炉の炎と飛び散る火花だけになった頃、ギデオンが静かに工房を出ていった。しばらくして戻ってきた彼の手には、まだ温かい硬いパンと、塩気の強い干し肉が握られていた。
彼は、その半分を俺に無言で差し出す。俺は、それを受け取り、無心で口に運びながらも、一度も、ゴードンの舞から目を離さなかった。鋼を打つ甲高い音だけをBGMに、ただ黙々と食事を摂る。奇妙な、しかし不思議な一体感が、俺たちの間に流れていた。真夜中を過ぎ、街が深い沈黙に包まれても、工房の槌音だけは、まるで止まることのない心臓の鼓動のように、闇夜に響き続けていた。鋼を打つ甲高い音だけをBGMに、ただ黙々と食事を摂る。奇妙な、しかし不思議な一体感が、俺たちの間に流れていた。
夜が更け、街が完全に寝静まっても、槌音は止まない。やがて、鋼は、俺が設計図に描いた通りの、流麗な曲線を持つ刃の形へと姿を変えていた。だが、ゴードンはまだ槌を置かない。彼は、刃の表面を、まるで赤子をあやすかのように、小さな槌で、何度も、何度も、優しく叩いていく。焼き入れ前の、最後の魂を込める作業。
俺がその光景に見入っていると、不意に、隣で同じようにパンを齧っていたギデオンが、ごくり、と乾いた喉を鳴らす音が聞こえた。
「……化け物、だな」 ぽつりと呟かれたその言葉は、ゴードンに対してか、あるいは彼が生み出そうとしている道具に対してか。だが、その声には、侮蔑ではなく、同じ「極めた者」に対する純粋な畏敬の念がこもっていた。彼は、自らが振るう剣と、今生まれようとしている農具の間に、もはや何の違いも見出してはいなかった。
そして、ついに、その瞬間は訪れた。
ゴードンは、最後の仕上げを終えた刃を、再び炉で赤熱させると、工房の隅に置かれた巨大な水槽の前に立った。
「……目覚めろ」
静かな、しかし工房全体を支配するような威厳のこもった声と共に、赤熱した刃が、水槽の中へと突き入れられる。
**ジュウウウウウウウッ!**
凄まじい水蒸気が、工房の天井まで立ち上り、視界の全てを白く染め上げた。まるで、一つの星が、その命を終えて爆発したかのようだ。
やがて、白い蒸気が晴れていく。
水の中から引き上げられた刃は、もはやただの鉄ではなかった。
それは、夜空の闇そのものを切り取って、凝縮したかのような、深く、吸い込まれるような黒色をしていた。そして、その表面には、まるで本物の星屑を散りばめたかのように、無数の銀色の粒子が、きらきらと、静かに輝いている。
それは、道具というよりも、もはや一つの芸術品。あるいは、神話の中から抜け出してきた、伝説の武具と呼ぶべきものだった。
ゴードンは、その完成した刃を、まるで生まれたばかりの我が子を見るかのように、愛おしそうな目で見つめていた。そして、あらかじめ用意してあった、頑丈な木の柄を、寸分の狂いもなく、丁寧にはめ込んでいく。
ついに、それは完成した。
俺が夢見た、革命の第一歩。
「……ルークス」
ゴードンが、俺を呼んだ。その声は、汗と疲労でかすれていたが、同時に、これ以上ないほどの達成感と喜びに満ちていた。
「受け取れ。お前が望んだ、革命の刃だ」
俺は、おぼつかない足取りで、彼の前に進み出た。そして、差し出された、まだ微かに熱を帯びた鍬を、両手で、恭しく受け取った。
その瞬間、俺は驚きに目を見開いた。その見た目からは想像もつかないほど、軽い。いや、違う。ただ軽いのではない。まるで、俺の体の一部であるかのように、重心が完璧に計算され、すっと、手のひらに収まるのだ。
「……こいつの名はな」
ゴードンが、満足そうに言った。
「『星屑の黒鉄』から生まれ、そして、これから大地の恵みという名の星々を喰らって、この辺境の未来を創っていく。……こいつの名は、『星喰み(ステラ・ファング)』だ」
星喰み(ステラ・ファング)。
その、あまりにも壮大で、そして美しい名。
俺は、その黒く輝く刃を、静かに見つめた。これは、もはやただの農具ではない。俺と、ゴードンの魂が宿った、俺たちの戦いのための、最初の相棒だった。
「……ありがとうございます、ゴードンさん」
俺が、心の底からの感謝を告げると、彼は「ふん」と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
「礼を言うのは、こいつで、この辺境の畑を、黄金の海に変えてからにしな」
その、ぶっきらぼうな横顔は、俺が今まで見た、どんな人間の顔よりも、誇りに満ちて、輝いて見えた。
俺は、手にした『星喰み』を、強く、強く握りしめた。
俺は、固唾を飲んで見守っていた。炉の中で赤熱する伝説の鉱石が、まるでゴードンの魂そのもののように、激しく脈動している。今、振り下ろされる槌の一振りは、ただの鋼を打つ音ではない。辺境伯領の、いや、この世界の農業の歴史が、新たな音を立てて産声を上げる、その瞬間だった。
***
【読者へのメッセージ】
第四十三話、お読みいただきありがとうございました!
ついに完成した、伝説の農具『星喰み(ステラ・ファング)』。職人の魂が燃え上がる、熱い鍛冶のシーン、そして、道具に込められた想い。皆さんの心にも、その熱気が届いていれば幸いです。
「ゴードン、かっこよすぎる!」「星喰み、名前も見た目も最高!」「早く使ってるところが見たい!」など、皆さんの感想や応援が、この新たな相棒に、最初の土を入れる力となります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに最強の武器(農具)を手に入れたルークス。彼が、この『星喰み』で最初に耕す大地とは?そして、その切れ味は、一体…!?物語は、再び『実験農場』へと戻ります。次回、どうぞお見逃しなく!
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